32.2 神様からの贈り物2
「通達する。昨晩、総統閣下よりピュア・シャイニング殲滅作戦が発令され、貴様らの本作戦への参加が決定された」
「「「シッ、シマァーーー!!」」」
数日前から[作戦準備]が進行していることを、Dr.から聞かされていたので、驚きはしなかったが、それでも緊張で声が上擦った。
「作戦開始は明日の18:00。接敵は18:40頃と想定されている」
「「「シマァーーー!!」」」
「作戦の詳細は、午後のブリーフィングで説明される。私とナポリタンは怪人以上のみが参加する幹部ブリーフィングに出るぞっ」
「将軍連中どころか総統閣下も参加するからな、さっきみたいにふざけて悪戯するんじゃないぞ」
少し柔らかい口調に戻ったDr.ヘッドランドが、僕に水を向けてきた。
「しませんって。そんなおっかないことは……」
むしろ、Dr.の方が、何かやらかしそうで怖い。
「その間、椎名と一宮は戦闘員ブリーフィングには参加せずに、私の部下である研究室の連中と打ち合わせをしろ。例の[光学迷彩スーツ]を使った実証実験を、今回の戦闘で行う許可が下りたからな、二人はそっちに専念しろ」
「シマァーーー!!」
「シマァーーー!!」
椎名君と一宮君は、気合の入った声で返事する。が
「二人はナポリタン付き戦闘員なのに……」
僕は軽く不平を口にした。
「お前とピュア・シャイニングの戦闘スピードに、並みの戦闘員がついていけるはずないだろ?」
「元々、こいつらを怪人付きにしたのは、戦闘のフォロー以外の理由があったからだ。戦闘で邪魔になるなら、別の任務を与えた方が良い」
Dr.ヘッドランドは、落ち着いた声で説明する。
「分かってますよ。ちょっと言ってみただけです」
「じゃあ、いちいち茶々を入れるな。……ほれ、[ポリタン]受け取れ」
ぼむっ
Dr.ヘッドランドは、机の横の床に置かれた段ボール箱を軽く蹴って、僅かに僕に向けて押し出した。
「変な省略は止めて下さいよぅ……。で、なんです? コレ」
しゃがんで、箱を開きつつ聞く。
「さっき、ようやく完成した、お前専用のパワースーツだ。見た目は戦闘員のモノとあまり変わらないが、性能は[身体能力を三倍強にする]特別製だ」
「三倍強ですかっ!? 凄いですねっ!」
思わず、喜色をはらんだ声を上げる。
戦闘員のスーツが[身体能力を約二倍]に上げる性能だから、三倍強はかなりのパワーアップになる。
ばささぁ
箱から、怪人ナポリタン専用のパワースーツを取り出した。
黒いスーツは、全体的には戦闘員のモノと似ているが、胸のデフォルメした亀のマークがなくて、とてもシンプルなものだった。
ばさっ
大きな違いは、脇腹の左右に三つずつ、合わせて計六つの穴が開いている点だ。
位置的にも[ここから触臂を伸ばせ]と、いうことなのだろう。
「高いんだから、すぐに壊すなよ?」
嬉々として出来立てほやほやの新スーツを観察する僕に、Dr.が苦言を呈す。
「それは、ピュア・シャイニングに言って下さいよぅ」
僕だってコレが壊れるような状況は、出来れば勘弁して欲しいのだ。
ちなみに、戦闘員用のパワースーツは一着数十万円もするらしいので、コレはもしかしたら、数百万円はするのかもしれない。
「それから、そっちの床に置いてある段ボール箱は、光学迷彩スーツだ」
Dr.ヘッドランドが、床に置いてある別の段ボール箱を指差した。
「多少、改良が進んでな、重さが35キロになった。椎名、ちょっと着てみろ。それからポリタも、今、新スーツに着替えてしまえよ」
「シマァーーー!!」
椎名君が嬉々として、段ボール箱に飛びつく。
「5キロ減……。まるで、人間のダイエットみたいですね」
マントを脱ぎ、今着ている量産型の戦闘員スーツを外しながら、ツッコミを入れる。
そして、Dr.の名前省略ボケには、もうツッコミは入れない。
どうせこの人は、すぐに飽きるだろう。
「ふんっ。いちいち、うっせえガキだなぁ。……おい一宮、椎名の着替えを手伝ってやれ」
「シマァーー」
返事をした一宮君が、戦闘員スーツの上に光学迷彩スーツを羽織る椎名君を、手伝う。
「明日の作戦では、椎名がそれを着て出撃し、一宮はそのフォロー役として動いてもらう。椎名、お前はソイツを装備しろ」
Dr.は、机の上にある、業務用ぽいカメラを指差した。
「ふぅ……フウ……。ソレは、カメラ型の武器ですか?」
光学迷彩スーツを装着しながら、椎名君が聞く。
「いや、ただのハンディカムだ。今回の実証実験は、敵にバレずに動画撮影をすることなんだ。椎名は、動画の再生回数が増えるように、近くまで接近して、迫力ある映像を撮れ」
Dr.が淡々と命令した。
「えっ!? 撮影で御座るか?」
一宮君が、驚きの声を上げた。
「そうだ。今回の戦闘で撮影をする条件を提示して、ようやくそのスーツに改良の追加予算がついたんだよ。動画は活動資金になるからな、それなら上を説得しやすいんだ」
「はぁ、さいで御座いますか……」
一宮君が、一気に気の抜けたような相槌をうつ。
「カメラには、光学迷彩の専用カバーをかけて隠す。ブーツの迷彩は、残念ながら間に合わなかった」
「それは致命的な欠陥ですねっ」
一人、着替え終わった僕は、笑顔でいいねっ! と親指を立てて指摘する。
「お前の脳もなっ」
Dr.ヘッドランドは、いいねっ! と中指を立てて返事をした。
「着替え終えたら[五次元防壁訓練室]に行って、それぞれの新スーツの性能を試すぞ」
カツカツカツ
そう言い終わらないうちに、Dr.ヘッドランドはドアに向かって歩き出す。
「「シマァーーー!!」」
「シマァ」
椎名君と一宮君がキチンと返事をし、僕が適当に返事をする。
こうして、四人連れ立って訓練スペースへと向かった……
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「…………しかし最近の由比里殿は、神城岬教諭に対して、本当に遠慮なしで御座るなぁ……。正直、拙者は肝を冷やしながら、見ているで御座るよ……」
廊下を移動中に、一宮君が僕に囁いてきた。
確かに、ちょっとやり過ぎかしら?
少し、自重を心がけよう……
いや、Dr.はツッコミ甲斐があり過ぎるから、やっぱり無理かなぁ?
第32章「新装備慣熟と新能力」
終了まで、あと4話




