32.1 神様からの贈り物1
じりりりりりんっ!
しばらくすると電話が鳴る。
相手はDr.ヘッドランドで、三人で個人研究室へ来るよう、命令された。
僕は[恩師へのお土産]を、中身が見えない黒いビニール袋に丁寧に包んで、それを手に個人研究室へ向かう。
僕の企みを知っている友人二人は、クスクスと忍び笑いを洩らしながら、ついて来た……
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Dr.ヘッドランド個人研究室
「Dr.お土産です。水曜日、イソガニン准将にちょん切られた[僕のアレ]を持って来ました。どうぞ、研究に使って下さい」
Dr.ヘッドランドに対面した僕は、早速、太くて長いアレが入った[黒いビニール袋]を、恭しく差し出した。
「何っ!? そんな報告は、ヤツから受けてないぞっ!? 昨日、一昨日の昼、お前もそんな話は、してなかったじゃないかっ!?」
Dr.ヘッドランドは驚きながら、恐る恐るといった様子で、受け取るために手を出す。
「いやぁ~僕、アレを切られたなんて、恥ずかしくて報告出来なくて……。でも結局、コレの処分に困って、思い切って今日、持って来ました」
「ふうん。イソガニンも本気でちょん切るとはなぁ……存外、冗談の通じない男だったな……。で、アレはすぐに生えてきたのか?」
「ええ、まあ」
ドサッ
照れ笑いを浮かべつつ、Dr.ヘッドランドの手の上に、ビニール袋を落とした。
黒いビニール袋は、ずっしりとした重みがあった。
「うっ!? でかっ!! ……お前って、巨根だったんだなぁ。このサイズは、ちょっと引くぞ?」
にぎにぎ にぎにぎ
Dr.ヘッドランドは、しかめっ面で、ビニール袋の上から感触を確かめる。
「ええ、まあ」
僕はさらに、照れ笑いを浮かべる。
「お前は元々、股間に触手をぶら下げていたんだなぁ……。しかしコレは、勃起時に切られたのか? イソガニンと二人で、どんな状況になったんだよ? お前らは、そっちの趣味だったのか?」
「ええ、まあ」
僕はますます、照れ笑いを浮かべる。
「いや、そこは否定しろよっ。頼むからっ」
ガサササッ
そう突っ込みを入れつつ、Dr.ヘッドランドは恐々《こわごわ》と、袋を開く。
「うわぁ~、あいつ以外の膨張したモノ、初めて見るな――」
Dr.は躊躇いつつ中を、覗き込む――
「――って、何だよっ! コレっ、ハムじゃないかよっ!」
ガサゴソソッ
驚きの声を上げた後、袋の口を大きく広げて、手を突っ込んだ。
「いえ、イタリアンサラミです」
笑顔で訂正する。
「名前なんて、どっちでもいいっ!」
ガサッ!!
Dr.ヘッドランドは、とても立派なサラミを取り出した。
「くそっ! 地味に手の込んだ悪戯しやがってっ。こっちは相当に[グロいモノ]を見る覚悟をしていたんだぞっ」
その吐き捨てた声音には、かなり安堵の音が含まれていた。
「「……くくくくくっ……」」
なりゆきを黙って見ている友人たちが、微かな忍び笑いを漏らした。
それでも一切、尻馬に乗って口を挟まないのは、彼らの処世術なのだろう。
「イソガニンさんに変なことを吹き込んだ、仕返しです。お金のかかった悪戯ですが、後悔はしてません」
僕は笑顔で、いいねっ! と親指を立てる。
「昨日、藤沢の高座ハム販売店でこのお土産を買いました。いらないのなら、引き取りますよ?」
「ふんっ! いるよっ! もらってやるっ! 高座ハムは鎌倉ハムに並んで美味いからなっ。最高の酒のつまみだっ」
にぎにぎ にぎにぎ
太くて長いサラミを触りながら言った。
「でもソレで呑むと、巨根を酒の肴にしてる気分になりませんか?」
「ゆーなっ」
にぎにぎ にぎにぎ
「僕はソレに、元Claudio "Claude" Mazziniって名前を付けてみました。モロッコで手術した、イタリア系アメリカ人男性です」
「やめろっ、サラミやソーセージに男の名前を付けるなっ。てか、Claudioって誰だよっ? 実在するのかっ、そんなヤツ?」
「いや、なんか今、急に頭に思い浮かんだ名前に、プロフィールを付けてみました。怪人の本能が知ってた……、みたいな?」
「ド阿呆」
ビシリッ
Dr.ヘッドランドは、勢いよく、僕に中指を立てた。
【挿絵 命名 Claudio "Claude" Mazzini】
バカリッ
そして、机の隣にある小さな冷蔵庫を開くと、大事そうにサラミを仕舞った。
僕は、やっとDr.ヘッドランドに悪戯出来て、気分がスッキリした。
「くくくっ。しかしモロッコで手術とは、何とも古う御座るなぁ」
「はははっ。だなっ。同志由比里は平成の香りどころか、時々、昭和の香りをさせるからな」
一宮君と椎名君がDr.ではなく、僕の方を笑う。
「全くだな。怪人名を[昭和レトロ怪人喫茶店のナポリタン]にすれば良かったんだよ」
二人の話を聞いていたDr.ヘッドランドが、こちらに戻りながら言う。
「さすが、小生意気な由比里と違って、椎名と一宮は良いことを言うな」
ビシリッ
Dr.ヘッドランドが、再度、僕に中指を立てつつ、友人二人を褒めた。
「でへへっ。そうで御座いましょうっ。そうで御座いましょうっ。お奉行様」
「そうでげしょ。この似非イケメンは最近、調子に乗って困るでごぜーますなっ」
素早く二人がジョブチェンジして、Dr.ヘッドランドに媚を売る。
「ちっ」
僕は軽く舌打ちして、友人たちを睨む。
にやにや
ニヤニヤ
だが二人は、どこ吹く風でニヤつくだけだった。
「ふふんっ。……さて、由比里の下らないお遊びに付き合うのはここまでだ。そろそろ、仕事の話をしようか」
Dr.ヘッドランドはヨレた白衣を直し、珍しく姿勢を整えて、話し出した。
すっ……
その雰囲気の変化に、僕らも自然と、姿勢を正す。
「通達する。昨晩、総統閣下よりピュア・シャイニング殲滅作戦が発令され、貴様らの本作戦への参加が決定された」
「「「シッ、シマァーーー!!」」」
数日前から[作戦準備]が進行していることを、Dr.から聞かされていたので、驚きはしなかったが、それでも緊張で声が上擦った。
「作戦開始は明日の18:00。接敵は18:40頃と想定されている」
「シマァーーー!!」
「作戦の詳細は、午後のブリーフィングで説明される。私とナポリタンは怪人以上のみが参加する幹部ブリーフィングに出るぞっ」
第32章「新装備慣熟と新能力」
終了まで、あと5話




