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【イタ☆恋!】新・江の島縁起〜なぜかイタリア出身の怪人として戦うことになった僕は、魔法少女に恋をした〜☆現代ラブコメ・ファンタジー☆  作者: 綿野草空希
31 総統とイタリア怪人が愛した杜若

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149/163

31.7 Moon Light Lover7


 二人で、二枚目を食べ始める。


 僕の豚玉は、ツナと青海苔が強制トッピングされた、変わり種だけど……


 (あ……でも、無駄にシーフード感の強い豚玉だけど、これはこれで美味いぞ……)

 まぁ、豚玉感はとても薄いけどね。


 もう、次が焼けるのを気にしなくても良い。


 なので、ここからはのんびりと話しながら、食べることにした。


ハフハフ はふはふ

 「……そう言えば[青ズゴック浜]ってよく聞くけど、青浜さん自身は[ズゴック]って知ってるの? アレって確か、凄く古いアニメの兵器(ロボット)だよね?」

 ふと思いついたことを、咀嚼《そしゃく》の合間に聞いてみる。


 僕自身は、近年放送されたこのシリーズの[最新モノ]しか見たことがない。


 なので所謂《いわゆる》[ファースト]と呼ばれる最初期のアニメは、主な登場人物と有名な兵器(モビルスーツ)が分かる程度で、どんな内容なのかは知らないのだ。


 だから[ズゴック]も、名前と形がなんとなく分かる程度の知識しか、持ち合わせていない。


はふはふ ハフハフ

 「……ああ。中学の時、クラスの男子にこのあだ名を付けられて、軽く広まったからさ、その時気になって、すぐにネットで調べたから知ってるよ」

 青浜さんは、お好み焼きを飲み込んでから、答えた。


 「何(あん)か微妙な見た目だったけど[ちょっと美味しそうだから、良いかっ]って思い直してさ、今では割りと、気に入ってる」


 「えっ? ズゴックって美味しそう?」

 姿かたちを思い出して、首を捻《ひね》る。


 「うん。アレって茹でたら、爪の辺りが美味しそうじゃん? [釜揚(かまあ)げズゴック]とか」

 青浜さんは、イチゴ牛乳をチューと吸って、いいねっ! と親指を立てた。


 「いやぁ~、確かに見た目が甲殻類ぽいけど、その発想は無かったなぁ。その感想は、青浜さんならでは、だよ」


 「そんなこと無いだろ? だってその時、ネットに[茹でたズゴック]も一緒に載ってたぞ。釜揚げ後の[赤いズゴック]」


 「えっ!? あのアニメに出てくる[赤い機体]って、茹でた後ってことなのっ!?」

 衝撃の発言に、慄《おのの》く。


 「うん。多分そう」

こくり

 青浜さんは、自信あり気《げ》に肯いた。


 「[兵器を茹でる]って、凄いアニメだなぁ……。昭和、おっかない……」

 もう世代の違いというより、それこそ、思想や哲学の違いを感じる。


 とても興味が湧いた。


 是非、今度見てみようと、心に誓う。


挿絵(By みてみん)

【挿絵 爪が美味な釜揚げズ◯ック(夏音談)】


パタパタパタ……

 「――杜若(もりなお)さ~ん、高次さ~ん、そろそろタクシーが来ますよぉ~?」

 ほのかさんが、奥の二人に声をかけた。


 「――分かり、ました。お会計を、お願い、します。ほら、杜若(もりなお)、帰る、ぞ」


 「――い~や~だ~ぁぁ~、乗らないぞぅ~」


 「――なら、タクシーの、代わりに、葉山さんを、呼ぼうか?」


 「――うっ……」


 「――それで、葉山さん、から、菖蒲《しょうぶ》院様に、連絡が……」


 「――わっ、わーーったよっ!!! シータクで帰るよっ! 帰りますよっ!!」

 抵抗していた[へなちょこおにーさん]が、急に帰り仕度を始めた。


 ……が、酔っ払っているのか、イマイチ要領を得ない様子だ。


 龍巳さんのお父さんはさっさと仕度をすませて、雪駄《せった》を突っかけ、一人こちらに歩み寄って来た。


ペタペタ ペタペタ

 近くで見ると、相変わらずおっかない。


 「夏坊、良ければ、明日、夕飯に、来ない、か?」


 龍巳さんの角刈りお父さんは、朴訥《ぼくとつ》だが、親しみのこもった声で、青浜さんに話しかけた。


 「んー? 明日は遠征して試合だから、夕飯は部活の連中と食べるかも?」

 青浜さんが、小首を傾げた。


 「ま、どうなるか分かんないから、とりあえず明日はパス。明後日なら行くよ」


 「分かった、明後日、な」


 「あっ! ちょっと前から、鎌倉ハムが無傷でウチの冷蔵庫内に放置されてるから、ソレを持って行くって、桜花に伝えといて。超デカいヤツ」


 「いいのか?」


 「うん、ウチの親がお取り寄せして放置するのは、いつものことだからさ、問題なし。みんなで美味しく食べちゃおうよ」


 「分かった。じゃあ、試合、頑張れ、よ」

シュタッ

 龍巳さんのお父さんは軽く手を振って、レジに向かった。


 「あーい」

シュタッ

 青浜さんも振り返す。


ぽて ぽて ぽて ぽて

 「イア~イア~フングルイ~ムグルウ~ナフ~クトゥルフ~……」

 そこに[へなちょこおにーさん]が、不吉な呪文を陽気《ようき》に唱えながら、フラフラとやって来た。


にへら~ ぽて ぽて

 僕らに笑いかけて、通り過ぎる。


 この人、普通にしていれば、カッコいいだろうに……


ぽて ぽて ぽて ぽて

 「……ル~リエ~ウガ~ナグル~フタグン~。母なる~紫鬼ぃぃ~、父なる~植物学者ぁぁ~。てかぁ~?」

 訳の分からないことを口走りながら、ふらふらと、胡乱《うろん》な足取りでレジに向かった。


 「――おーーい、高次ぃぃぃーー。お前もシータクに乗るかぁーー」


 「――俺の、家は、隣だ。阿呆」


 「――何だよ~、シータクで江の島観光でもしようぜぇ~……」

 へなちょこおにーさんは、いつまでも騒々しい。


 ほのかさんが、レジで二人の会計をする。


 「……よく龍巳さんの家に、食べに行くの?」

 それを横目で見つつ、青浜さんに聞く。


 「まあな。子供の頃から、ちょくちょく通ってるんだ」

 青浜さんは、最後に残った一切れをお皿に移しながら、話す。


 「最早《もはや》あたしは、龍巳さん家(チ)の子だっ」


 「ふふふっ……。確かに青浜さんと龍巳さんって、姉妹っぽいよね。ほら、姉妹って、対照的な性格になることが多いから」


 「あんだとぉ~? それはどう言う意味だぁ~?」

 お好み焼きを箸で千切りながら、僕を軽くジト目で睨んできた。が、


 「ま、兄妹って言わなかっただけ、良しとしてやる」

 肩を竦《すく》め、素っ気なくそう言って、パクンとお好み焼きを口に放り込んだ。


カラカラカラカラ

 レジでお会計を済ませた二人は、すでに暖簾《のれん》を内側に仕舞った引き戸を開けて、出ていった。


 「――うわぁあんっ、カオリちゃ――」

 「――外で、騒ぐな。近所、迷惑――」

 外から、へなちょこお兄さんの騒がしい声が、しばらくの間、聞こえてきた。


バタムッ ……ぶおおぉぉぉんーー……

 が、すぐにタクシーが走り去る音が聞こえて、店内は静かになった。


 「ふう。ご馳走ーー様でしたっ!」

パチンッ

 青浜さんが箸を置くと、手を合わせた。


 「ご馳走様でしたっ」

 ほぼ同タイミングで食べ終わった僕も、箸を置いて、頭を下げる。


 「由比里も食べ終わったか? なら、長居したら悪いから、飲み物飲んで少し休んだら、あたしらも出ようぜ」


 「うん」

 青浜さんの提案に、素直に頷く。


 もうお開きにするのは、僕的にはとても残念だけど、いつまでも閉店出来ないのは、ほのかさんにとっては迷惑だろう。


ちゅるるるぅぅ~~

チュルルルゥゥ~~

 飲み物の残りを、ストローで飲み干す……



第31章「総統とイタリア怪人が愛した杜若《かきつばた》」

終了まで、あと1話



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