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【イタ☆恋!】新・江の島縁起〜なぜかイタリア出身の怪人として戦うことになった僕は、魔法少女に恋をした〜☆現代ラブコメ・ファンタジー☆  作者: 綿野草空希
30 袖振り合うも多生の江ノ電

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137/163

30.3 いなせなロコモティブ3


タッ タッ タッ タッ タッ タッ タッ♪

 いつの間にか二人の足音が、綺麗なリズムを奏でていた。


 「……桃って、季節的にはもう少し後だよな?」

 青浜さんが、なに気に聞いてくる。


 「うん。でもハウス栽培は、ちょうど今の時期だよ」

 青浜さんの手にある、桃のビニール袋に目を落としながら答える。


タッ タッ タッ♪

 「あ、でも輸入モノの可能性もあるのかな? 輸入だと、季節はまったく関係無くなるからね」


 「そっか。……でもさ、ハウス栽培や輸入で時期をずらすのって、ちょっとつまんないよな。いつでも食べられるのが、嬉しい反面さ」

チラリ

 青浜さんも、自身の手にあるビニール袋に、軽く目を落とす。


 「季節外れの果物ってさ、何(あん)だか寂しそうに見えるんだよなぁ。[僕だけ季節から爪弾《つまはじ》きにされた]って、言ってるように思えてさ」

 青浜さんが、視線をビニール袋から僕に移した。


ドキッ

 大きめな瞳に見つめられて、僕の鼓動が高まる。


 「なっ、なるほどっ! その気持ちっ、分かるかもしれないっ」

コクコク

 ドキドキしながらも、共感出来たので大きく頷く。


 「それに表現が、なかなか詩的で良いねっ。僕、そういう考え好きだよ」

にこっ


 「はうぅ!? ……おっ、おうっ。それはどうも」

ぷいっ

 青浜さんは素っ気無く答えると、またまたそっぽを向いた。


タッ タッ タッ タッ タッ タッ タッ♪

 爪弾《つまはじ》きの桃たちの表情は分からないが、ビニール袋それ自体は、何だか楽しげに揺られていた……


―――――――

―――

―


 二人の合わさった足音は、乱れることなく、江ノ電の藤沢駅に着いた。


 二人で改札を通る。


 (嬉しくて舞い上がっていたけど、やっと得た機会なんだから、大事な話をしておかなきゃね)

 話せる時に、誤解を解いておきたい。


 学校で避けられてると感じたのは、気のせいかもしれないが、青浜さんに悪い印象を与えた可能性は、大いにある。


 (でも、予期しないエンカウントだったから、まだ上手い説明(言い訳)が纏《まと》まらないんだよなぁ)

 悩みながら、江ノ電のホームに入る――


挿絵(By みてみん)

【挿絵 江ノ電藤沢駅】


 ――と、丁度、藤沢行きの電車が入って来た。


 江ノ電は停止すると、まず僕らがいるホームとは反対側のドアが開き、乗客を降ろす。


プシュー

 そして粗方《あらかた》乗客が降りると、こちら側のドアが開き、藤沢行きの電車だったものが、鎌倉行きに早替わりした。


 荷物を抱え、乗り込む。


 出発駅で、まだ乗客が疎《まば》らなので、二人並んでシートに座る。


どささっ

 が、青浜さんは一人分、間を空けて座り、そこに荷物を置いてしまった。


 ちょっと残念。


 「………………」

 「………………」

 発車を待つ間、会話が途切れる。


そわそわ

 微妙に落ち着かない青浜さんが、子供のように、足をプラプラとさせている。


 なに気に可愛い。


じーーっ

 思わず、制服のスカートから伸びた日焼けした足の、綺麗な形の膝小僧を眺めてしまう。


ピタ。

 ジッと見てると、ふいに足のプラプラが止まった。


 「人の足ばっか見るなっ。スケベ」


 声がしたので顔を上げると、青浜さんが頬を赤く染めて、ジト目で睨んでいた。


 「あっ、ごめんっ!」

 慌ててそっぽを向く。


プシュー バダムッ

 発車のベルが鳴り、ドアが閉まる。


オオンンンンンン……

 独特のモーター音を響かせて、光の箱のような江ノ電が、夜の鎌倉に向かって走り出した。


 (ええと、まず今日のお弁当のことを説明……いやいや、渡り廊下での一件を説明する方が先か)

 頭の中で、説明(言い訳)の言葉を組み立てる。


 藤沢駅から鵠沼《くげぬま》駅までは、たいして時間がかからない。 


 早く、話さねば。


オンンンン……

 などと考えていると、あっと言う間に、次の石上《いしがみ》駅に着いてしまう。


プシュー バダムッ

 小さなホームから、少しの乗客が乗る。


 「あ。荷物をシートに置いてると、迷惑になるかもね?」


 「おう、そだな」

 まだ、そこまで混んではいないが、念のため、二人とも荷物を太ももに載せて、少しつめる。


オオンンンンンン……

 石上《いしがみ》駅は一線式の駅なので、すぐに電車は走り出す。


 この辺りは一直線なので、電車は快調に進む。


ぷいっ

 席がつまってから、なぜか青浜さんはそっぽを向いたまま、一切、こちらに顔を向けなくなった。


 そのまま、微動だにしない。


?

 「あの……、何でそっぽ向くの?」

 [何か怒らせることでも、したのかな?]と、不安になって問いかける。


 「……あたし、昨日と一昨日……ニンニクが沢山入ったペペロンチーノを食べたから……。その……臭うかも……」

ぼそぼそ……ぼそ……

 青浜さんは、らしくない感じでそう言った。


 「へ? いや、全然平気だよ?」

くんくん

 青浜さんに少しだけ顔を近づけて、鼻を鳴らす。


 「うん。むしろ、凄く良い匂いがするよ?」

 シャンプーの匂いなのだろうか?


 不思議なほど、自分や友人たちとは別物の、甘いながらも清涼感のある良い香りがした。


 それとほのかに、太陽の匂いもした。


 「嗅ぐなっ、馬鹿っ!」

さささっ

 青浜さんはボリュームを抑えた怒声でそう言うと、真っ赤になって一人分ほど、離れてしまった。


 「変態エロっ」

ぷいっ

 一瞬、大きめの瞳でキッと睨んだが、すぐにまたそっぽを向いてしまう。


 「あわわっ、ごめんっ!」

 慌てて謝罪する。


 確かに女性の匂いを嗅ぐのは、失礼で品の無い行為だった。


オンンンン……

 江ノ電が速度を落とし、柳小路《やなぎこうじ》駅へと入って行く。


プシュー バダムッ

 柳小路《やなぎこうじ》駅では多少、乗客が乗り込んで来た。


 なので、青浜さんが渋々といった様子で、席をつめた。


オオンンンンンン……

 ここも一線式の駅なので、びっくりするほど、すぐに出発する。


 「……また嗅いだら、殺すからな」

 走り出すと同時に、まだそっぽを向いている青浜さんが、低い声で言った。


 「うんっ。さっきは本当にごめんねっ。もう二度と、デリカシーの無い真似はしないから」

 真面目に謝罪する。


 「許して。ね?」

ぺこっ


 「……ん」

こくり

 青浜さんはしっかりと謝罪に耳を傾けると、静かに頷いて、真っ直ぐ前を向いてくれた。


 ホッとして、僕も前を向く。


 車窓には、いつもの静かな夜を迎えた、鵠沼《くげぬま》の住宅地がゆっくりと流れていた。


 見慣れた夜景を、好きな人と一緒に揺られながら、のんびりと眺める……


オンンンン……

 と、江ノ電が速度を落とし始めた。


 (って、しまったっ! 鵠沼《くげぬま》駅に着いちゃうよっ!)

第30章「袖振り合うも多生の江ノ電」

終了まで、あと5話



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