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【イタ☆恋!】新・江の島縁起〜なぜかイタリア出身の怪人として戦うことになった僕は、魔法少女に恋をした〜☆現代ラブコメ・ファンタジー☆  作者: 綿野草空希
29 ジョブチェンジ・ランチ

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133/163

29.5 女呼んでブギウギ5


 放課後になる。


 結局、午後も青浜さんとは、話が出来なかった。


 青浜さんは、五限目あとの休憩時間は、すぐに教室を出て行ってしまったし、放課後も弾丸のように、部活に行ってしまった。


 (やっぱり、故意に避けられているのかな?)


 渡り廊下の一件以来、まだ一言も話せていない。


 お昼のお弁当事件も、明らかにマイナスに作用している感じだ。


 ちょっと、挫《くじ》けそうになる……。


 が、友人二人がいやらしい笑顔で[一緒に帰ろう]と誘ってきたのを見て、怒りと共に、気持ちが再び奮い立った。


 (くそう、このまま諦めて堪《たま》るかっ。週明けに、強引にでも機会を作ってやるっ)

 まだ人の多い教室で、密かに決意を固めた。


―――――――

―――

―


 椎名君、一宮君と一緒に、昇降口から外へと出る。


 空は鈍色で、暑くもなく寒くもないが、少し湿度が高くて、潮風がベタつく。


 昨日、一昨日は訓練だったが、今日のイタリア怪人稼業(アルバイト)は休みだ。


 なんだか久しぶりに、時間が空いた気がする。


 せっかく時間が空いたので、放課後は、前々から必要だと考えていた[私服の購入]に使うと決めた。


 いきなり痩せたせいで、今ある服は全て、サイズが合わないので着れない。


 なので早急に、サイズの合う服を買いたいのだ。


 下着は、すでにコンビニで買ったから、必要なのは普段着用の私服だけだ。


 (でも、どうせ買うなら、お洒落な服にしたいよね。青浜さんとのデートに着ていけるくらいのさ)

 髪型の次は、服だ。


 青浜さんに振り向いてもらうために、自分磨きをしよう。


 幸い、勝利ボーナスが20万円弱、残っている。


 整形代を貯めないといけないが、私服は必要経費の内だろう。


 歩きながら、B.I.P.から借りたスマホを取り出す。


ポム・ポムッ

 スマホをタップし、お洒落な服を検索しながら、校門をくぐる。


 (あ。そーいえば、スマホも買わないとなぁ。……でも、スマホってバカみたいに高いんだよなぁ。どうしよう?)

 ふと気がつき、悩む。


 (スマホ買うと、20万円の大部分が溶けるよなぁ? う~~ん。……正直、この端末でも不自由はないから、しばらく買わなくて良いか)


 買うのは魔法少女を倒しまくって、お金が貯まってからにしよう。


 (うん、そうしよう)

ポム・ススッ・ポムッ

 僕は一人、脳内解決して、洋服の検索に集中した――


 「――先ほどから無作法な[歩きスマホ]をカマしているが、それは何のつもりだ? リア充な若者気取りか?」

 しばらくして坂道を下り切る頃、椎名君が冷たく声をかけてきた。


 「いや……ちょっとお洒落な服を買いたくて、フッション系のサイトを調べてるんだ。……けど、どれもピンと来なくてさぁ……」

ポム・ススッ・ポムッ

 僕は画面から目を離さずに、歩きながら適当に返事を返す。


 「チッ……それがオタのすることか……」

 「ちっ……そんな銭があるなら、ギャルゲーを買うべきで御座ろうに……」

 二人の腹立たしげな舌打ちと呟きが、耳に入った。


ススッ・ポムッ ススッ・ポムッ

 が、意に返さずに、画面をスクロールさせ続ける……


 (う~~ん。……なんかこういう服装って、違うんだよねぇ……)

 見ていたサイトは、どうもチャラい系の服ばかりで、カッコいいとも、着てみたいとも思えなかった。


 僕はオタだから、今時の若者の服装に、つい反感を持ってしまう。


 どうも、世間で騒がれているチャラい系のタレントやYouTuber、お笑い芸人なんかは、カッコいいとは思えない。


 DQN系のゴテゴテさはドン引きするし、ラッパー系はもう[誰がなにを着てもみんな同じ]で、逆に[没個性]に見えてしまう。


 (それに、こういった服装は、青浜さんも嫌いな気がするよ。性格的に)

ポムッ

 見切りをつけて、サイトを閉じる。


 (……あっ! そういえば前にフィリッポさんが、モテる服装の話をしていたなぁ……)

 何だったっけ?


 スマホから目を離して、踏切の向こう側に広がる海を眺めながら、考える。


 フィリッポさんは[ゴテゴテと着飾った服装は、イケメン度を下げるだけ]と言っていた。


 曰く[男は料理と同じ。素材が良いならシンプルに纏めた方が、その良さが引き立つ]とのこと。


 [カジュアルではなく、明るい色(ただし原色不可)のシンプルなデザインの服が、男は一番セクシーに見える]との、持論を展開していた。


 (確かにフィリッポさんは、男の色気があるよなぁ……)

 僕はいつもナポリタンを食べながら[格好良いなぁ]と、憧れの気持ちを持って見ていたのだ。


 イケメンになった今なら、フィリッポさんを真似ても笑われないだろうし、ああいった服装なら、僕も反感を持たずに、抵抗なく着れる。


 (よしっ。その線で攻めてみよう。僕が目指すのは、イタリアの伊達男だっ)

 これで買う服の方向性は決まった。


 「――さて。僕はこれから、服を買いに藤沢に行くよ。じゃあ、また明日」

シュタッ!

 踏切の横で、二人に告げて軽く手を振る。


 「……拙者共は、由比里殿の言《げん》を信じずに、しばらく学校周辺で張り込むつもりで御座る」

 一宮君が堂々と、僕への不信を告げた。


 「だな。藤沢に着いて行くと、途中で撒《ま》かれるかもしれんしな。この周辺で、部活中の我等の女神をストーキングした方が、無難《ぶなん》だろう」

 椎名君も堂々と、自分が犯罪者であることを告げた。


 「……そうですか」

 (ま、本当に買い物に行くだけだし、信じてもらわなくても構わないさ)


 友人にここまで信じてもらえないのは、少し悲しいが……


 無人駅なので、三人で小動高校前駅の狭いホームに入る。


タタンッ・トトンッ・タタ……ガタンッ

 と、すぐに藤沢行きの電車がやって来た。


 「じゃあね」

プシュー 

 ドアが開き、僕だけが乗り込むために、足を一歩踏み入れる――


 ――と、そこには、目が眩《くら》みそうな光景が広がっていた。


 「うおおぉっ!?」

 思わず声が出てしまう。


 「観音《かんのん》電車だっ!!」


 ――[観音電車]とは、[長谷寺本尊(ほんぞん)造立1300年を記念してラッピングされた江ノ電の特別列車]だ。


 内装は、極楽浄土をイメージし[極彩(ごくさい)色の煌《きら》びやかなラッピング]が施された、信じられないセンスの電車なのだ。

(注 現在は運行していません)


 初お目見えの際は、長谷寺で祈祷《きとう》してもらうほど、無駄に力の入った車両だ。


 この観音電車、観光客にとってはインパクトがあって良いだろう。


 が、毎日通学で使う身としては、コレに当たると、何とも微妙な気分になってしまう。


 「ぷっ! 幸運で御座るなっ!」

 「ぶははっ! お似合いだぞっ! イケメンっ」

 友人二人が、ドアの外から僕をあざ笑う。


 「ぐっ。……ふんっ! よっ、良かったよっ! これで、きっとこの後、ご利益で何か良いことが起きるよっ! ラッキーだねっ!」

すとんっ

 僕はそう強がって、乗り込み座席に座る。


プシュー

 ドアが閉まると、友人二人は半笑い顔で、僕を最後まで注意深く見送る。


ガタンッ

 電車が動き出すと、二人はようやく、学校に向かって歩き出した。


 本当に、青浜さんが部活を終えて下校するまで、ストーキングをするつもりのようだ。


 ホームを離れた藤沢行きの観音電車は、ほどなく海から離れて、民家の軒裏スレスレを走り出す。


 僕は、ハイセンスな内装に茫然自失としながら、電車に揺られる。


 床面の[枯山水(かれさんすい)]模様を眺めていたら、ふと以前に、天紫野会長と江ノ電に乗ったことを思い出した。


 (あ、そうだ。天紫野会長にゲーム貸すの、忘れてたなぁ……)

 約束したのにあれ以来、会ってないし、見かけてもいない。


 忘れずに、月曜日に持ってこよう。


 (でも、隣のクラスに行って女子を呼び出すのは、緊張するよなぁ……どうしよう?)

 それに、そんな場面を青浜さんに見られたら、また誤解されて、酷い墓穴になりそうだ。


 あと、芹園さんに目撃されたら、またホラーになりそうだ。


 ちょっと悩む。


 ――腰越駅を過ぎると、江ノ電は路面電車に変わる。


 悩みながら、車窓を流れる腰越の町並みに目を移す……


 と、自転車に乗った高校生が、江ノ電と並走していた。


 (あっ、自転車の回収も忘れているぞっ)

 もう、何日も置きっぱなしにしている。


 でも、今から戻るのは面倒だ。


 それに、舞い戻った僕を見て、友人二人が激しく誤解しそうだ。


 (回収するのは、月曜日にしよう)

 何だか今日は全部、来週に後回しにしている気がする……


 特に、青浜さんに話しかけられず、結局、来週にしたのが、我ながら頂けない……


 「……逃げてるつもりは、ないんだけどなぁ……」


キキンッ・キシシッ・キキッーー

 僕の呟きは、龍口寺前の急カーブを曲がる車輪の音で、掻き消えた……

第29章「ジョブチェンジ・ランチ」

終了まで、あと1話


第29章の最終話は、夏音Sideになりますっ。

乞うご期待!


次回は金曜日に更新しますっ!

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