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【イタ☆恋!】新・江の島縁起〜なぜかイタリア出身の怪人として戦うことになった僕は、魔法少女に恋をした〜☆現代ラブコメ・ファンタジー☆  作者: 綿野草空希
29 ジョブチェンジ・ランチ

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132/163

29.4 女呼んでブギウギ4


ドドドドドドドドドドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 「ひぃぃっ!?」

 帚木《ははきぎ》さんも、廊下のホラーに気がつき、声を上げて顔を引きつらせた。


 「ぐへへへっ、お奉行様っ。髪型を変えたんでごぜぇますねぇ~~」

 一方、牧さんはチラリと廊下を見たにもかかわらず、まるで教室内に渦巻く強烈なプレッシャーなど存在しないかのように、越後屋を続ける。


 この人は、かなりの強心臓の持ち主だ。


にへら~~

 「その髪型、凄くお似合いでげすよぉ~。益々、格好良くなりましたなぁ。ねぇ? 里奈ぁ~」

 越後屋牧さんは、揉み手で話を振る。


ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 「えっ!? ……う……うん……そう……だね……」

 しかし帚木《ははきぎ》さんの方は、完全に芹園さんのプレッシャーに怯えきっているので、返事も漫《そぞ》ろだ。


 (しかし……コレ、まずいな)

 あらためて教室内に注意が向いた僕は、別の視線にも気がつき、焦りを感じた。


 それは、磐田君ほどではないが、[敵意ある視線を、僕に向けてるクラスメイト男子が複数人いる]、ということだ。


 今、食事を共にしている女子二人は、割とクラスの中で人気がある子たちだ。


 彼女たちに気がある男子だって、何人かいても、おかしくはない。


 (友人のせいで、無意味に敵が増えてしまった……)

 ずぶずぶと泥沼に嵌っていく気分だ。


 青浜さんの誤解が増え、芹園さんの怒りを買い、クラスの男子を敵に回す……


 もう、どうやって状況を打開すれば良いのか、分からない。


 (………………保健室に逃げちゃお)

 打開案は、某ジョセフ・ジョースターが得意とした[逃走]くらいしか、思いつかなかった。


 根本的な解決にはならないが、少なくとも今の針の筵《むしろ》からは、脱出出来る。


 お弁当は、まだ半分くらいしか食べてない。


 残したら、帚木《ははきぎ》さんに悪い。


 (残りは保健室での検査を終えたら、ダッシュで戻って食べよう)


 その頃にはきっと、クラスのほとぼり(熱)も冷めているだろう。


 「……あぁっ、飲み物がないやあ~。こまったなぁ~。僕、ちょっと買って来るねぇ~……」

 棒読みでそう呟いて、腰を浮かせ逃走を図る。


ポン!

 その時、中腰状態の僕の肩を、誰かが叩いた。


くるり

 振り向くと、そこには笑顔の中肉中背と一宮君が立っていた。


ニッコリ

 「同志よ、その心配には及ばんぞっ」

 「で、御座る。これは拙者共の、奢《おご》りで候ふ」

コトン

 いつの間にか戻った友人二人が、机に小さいペットボトルのお茶と、紙コップに入った牛乳らしき飲み物を置いて、いいねっ! と親指を立てた。


 「では、ごゆるりと。Ciao(チャオ)!」

 「Addio(アッディーオ)!(あばよっ!)」

くるりっ

 そしてイタリア風捨て台詞を残して、笑顔で踵を返した。


 「Adieu(アデュー)!(おさらばっ!)」

 なぜか牧さんが、フランス風捨て台詞を二人に返す。


シュタッ!

 友人二人はそれを背中で聞き流し、軽く手を振り返した。


 そのまま教室の後ろのドアへ移動すると、廊下からこちらを覗くように立った。


 そして、なぜか一宮君は手にアンパンと牛乳を持って、こちら見張るように、鋭い目を向けている。


 まるで、古いTVドラマの刑事みたいだ。


 「いちっ! にっ! さんっ! しっ! ――」

 一方、椎名君は手に大豆ビスケットと、プロテインシェイクのボトルを持って、スクワットをしながら、こちら見張るように、鋭い目を向けている。


 こっちはある意味、奇抜で斬新な刑事像だと思う。


 が、もしもこんな刑事がいたら、ただの怪しい中肉中背として、市民に通報されること請け合いだろう。


 「飲み物、買いに行かなくて良かったねぇ~? 由比里君~」

ぐいいっ

 やっとジョブが女子高生に戻った牧さんが、笑顔で僕の腕を引っ張る。


ぐぐっ

 「ささ、座って座って~」


 「……う……ん」

 逃げることさえ叶わない僕は、不承不承で座り、食事を再開した。


 (くそうぅ、椎名君と一宮君は、学食に行くんじゃなかったのかよぅ……)


 これでは前門の虎(ホラー芹園)、後門の狼(友人? 二人)で、逃げ道がない。


ドドドドドドドドドドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 ホラー芹園は、相変わらず呪われた仮面顔のまま、微動だにしない。


 帚木さんは、それに怯えて縮こまる。


にへら~~

 が、強心臓の牧さんは、平然と食事イベントを完遂《かんすい》させようとする。


 「にじゅうにっ! にじゅうさんっ! にじゅう――」

 友人二人は、廊下から僕が逃げないように監視。


ざわ……ざわざわざわ……

 クラスメイトたちは、好奇と敵意の視線を投げかけてくる。


しん……

 青浜さんは、もう食べ終わっているのに(あれ? 結構な量があったよね?)、なぜか背中を向けたまま、静かに座り続けている。


 (うぅ、こんなはずではなかったのに……)

 もう、味も会話も、頭に残らない。


 僕は針の筵《むしろ》の中、食事を続けるしかなかった……



 ちなみに、紙コップに入った飲み物は、[牛乳]ではなく、[プロテイン入りの豆乳]だったことは、覚えている……


――――――――

―――

―


 その後、何とかお弁当を完食すると、帚木さんに丁寧にお礼を述《の》べた。


 そして、恐る恐る廊下に目をやると、いつの間にか、芹園さんの姿は廊下から消えていた。


 ようやく胸を撫で下ろして、プロテイン入り豆乳を一気飲みし、一息ついた。


 それを見届けた友人二人が、傍にやって来て[時間だから保健室に行こう]と誘ってきた。


 僕は、すかさずソレに乗って、クラスメイトの好奇と敵意が飛び交う教室から、逃げるように退出した。


 ――結局、青浜さんは、最後までこちらを振り向かなかった――


 保健室へ向かう道すがら、後ろをついて来る友人二人は、とても満足げだった。


 彼らは僕が[芹園Endを迎えるか? はたまた、幻の帚木Endを迎えるか?]で、討論の花を咲かせていた。


 盛り上がる友人たちを背に、僕は歯噛みしながら、黙々と保健室に向かった。


 結局、保健室前に到着する頃には、友人二人は、僕が[触手暴走Bad End]を迎えることで、意見が纏まった……


 いや、[触手暴走Bad End]ってどこから出たよ? おっかないなぁ。


 ちなみに、学食前で[僕がいない理由]を、椎名君たちから聞いた時の芹園さんは、[恋愛怪人セリゾノン]と名付けたくなるほど、恐ろしい様子だったそうだ。


 こっちは冗談抜きで、おっかないなぁ……


第29章「ジョブチェンジ・ランチ」

終了まで、あと2話



☆[ブクマのみ]でも大歓迎っ!

つけると[何かが良い感じに]アレになりますっ。

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