29.3 女呼んでブギウギ3
「いただきます」
見た目はかなり美味しそうなので、早速、箸を掴んで、弁当へ向けた。
ぱく……ぱく……
「……あ……美味しい……」
二口、三口食べて、思わず本音の感想が漏れた。
帚木さんのお弁当は、見た目を裏切らない美味しさだった。
パアァァ
帚木さんの顔が輝き、不安げに縮込まっていた背筋がスッと伸びた。
ポアァン
牧さんがドヤ顔を見せて、ボリューミーな胸を張った。
ぱくぱくパクパク
とても、箸が進む。
正直、クラスメイトの[ざわざわ]視線を忘れるほど、どれも美味しい。
付け焼刃ではない、料理に慣れた人のお弁当だ。
(では、ナポリタンも……)
個人的には、大本命のナポリタンに箸を伸ばす――
ちゅるるんっ
(――あぁぁ、いぃ。これは良いナポリタンだぁ……)
もぐもぐもぐ
感涙しながら、咀嚼する。
ナポリタンは非常にオーソドックスなモノで、僕の琴線に触れるものだった。
(コレコレ。ナポリタンはこうじゃなきゃねっ)
フィリッポさんの、トマトピューレを使った魅惑のナポリタンも大好きだ。
が、やはりナポリタンはケチャップ味が効いた[ジャパニーズ・ジャンク・パスタ]が良い。
(あぁ、今、ちょっと幸せかも……)
帚木さんが、急に神々しく輝いて見えた。
(今度は、帚木さんの作ったナポリタンを、お腹一杯、口の周りをケチャップでベタベタにしながら、食べてみたいなぁ)
一口で食べ終わってしまったので、ふと、そんなことを考えてしまった。
どうやら僕は[男は胃袋から掴め]との格言を、身をもって体験したようだ。
「ぐっふっふっふぅ~~~。お奉行様、お味はどうでがしょ?」
牧さんが、女子高生から越後屋にジョブチェンジして、尋ねてきた。
「ウチの里奈は昨日も、なぜかお弁当を作りすぎたのでごぜぇますよぅ? そしてそして、今後も時々、作りすぎるかも? かもかも、でごぜぇますですよ?」
「ちょっとっ、和泉子っ! 余計なこと言わないでっ――」
チラッ
帚木さんが、牧さんを可愛く睨む。
「えっ?」
それはつまり[昨日もお弁当を作って、僕に渡そうとした]ということだろうか?
そして[今後も僕へのお弁当を作る]と、暗に示唆しているのかな?
かぁぁぁ……
ただのクラスメイトだと考えていた帚木さんから、強い好意を向けられていると知り、思わず顔が赤くなった――
――タタタンッ!
その時、ふと軽快な足音が耳に入ったので、何気なく、そちらに目を向ける。
と、足音の主は、何個もパンを抱えた青浜さんで、今、教室に入って来たところだった。
「「あ……」」
ピタリ
僕と青浜さんの目が合い、どちらとも、体が固まる。
ぽかん
青浜さんは立ち止まり、女子二人と食事中の僕を見つめて、口を開けて佇んだ。
すっ――
が、それも寸刻、青浜さんはスッと表情を失くしてしまう。
ツカツカツカツカ
静かに歩いて、龍巳さんグループがいる、並べた机に向かった。
すとんっ
「お待たせ。でも、先に食べていいって、いつも言ってるだろ――」
青浜さんは、龍巳さんたちと会話をしながら、着席した。
ギギィィィーー
そして、まるで僕に背中を向けるように、お尻で椅子の角度をずらした。
青浜さんは背中を向けたまま、こちらに一切の視線を送らずに、机に幾つものパンを並べて、黙々と食べ始める。
(ぁぁぁ……。また僕は、勘違いされる行動を取ってしまったのかぁ。渡り廊下の誤解だって、まだ解決してないのに……)
正確には、友人たちに嵌められて[勘違いされる行動を取らされた]、だが。
(まずいな……。友人の妨害工作で、交際へ進展どころか、どんどんと後退していくぞ)
今回はまんまと、彼らの思惑通りに、事が進んでしまった。
チラチラ
見る度に抱き締めたくなる、青浜さんの背中に目をやりながら、自分の迂闊さを呪う。
(次からは、お昼は無言で、教室を飛び出そう)
僕はまだ、友人たちの悪巧みを、舐めていたのかもしれない。
幸いなのは、まだ友人二人が、僕が青浜さんと龍巳さんのどちらを狙っているのか、判別してないことだ。
それなら、上手に動いて、かわしていけるはずだ。
(とにかく、早いうちに挽回しないと)
嵌められたことを呪っても、もう遅い。
大切なのは、今後、どう動いて挽回するかだ。
(そう、挽回せねば――)
箸を動かしながら、内省していると――
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
(――うっ!? 何だ!? 凄い悪寒がするぞっ!?)
ブルルルッ
ふいに、奇妙で恐ろしい気配を感じ、身震いがした。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
なぜか、某奇妙な冒険風の物凄いプレッシャーが、廊下から感じられた。
チラッ
顔を動かさずに、恐る恐る、目だけでそちらを窺う――
ジッ
――と、前のドアの廊下側から、芹園さんがこちらを見ているのが、視界に入った。
こちらを覗き込む芹園さんの美しい顔は、無機質な仮面のように、冷たく固まっていた。
(うおおおぉぉおおぉぉ!? なにっ、あの顔っ!? なにっ、あの気配っ!? もうっ、ホラー映画並みに、怖いんですけどっ!!!)
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
その姿は、某JoJoに出て来るキャラクターの[某山岸由花子]を彷彿させていた。
「「うっ!?」」
「「ぐおっ!?」」
クラスメイトの何人かも、廊下から覗く恐怖に気がつき、声を上げた。
ドドドドドドドド……
(うぅぅ……怖いよぅ……)
[某岸部露伴]のような、傍若無人の強心臓が欲しくなる。
もう恐怖で、誰かさんのように、失禁してしまいそうだ。
時間的に、芹園さんは学食で食事をしないで、こちらに来たと思われる。
ドドドドドドドドドドドド……
が、芹園さんは、再度、学食に向かうでもなく、微動だにせず、こちらを見つめ続けている。
ドドドドドドドドドドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「ひぃぃっ!?」
帚木さんも、廊下のホラーに気がつき、声を上げて顔を引きつらせた……
第29章「ジョブチェンジ・ランチ」
終了まで、あと3話
―――――――――【祝4ヶ月!】―――――――――
2026年10月5日
人生初の、小説の投稿&本作品の連載開始から、丸4ヶ月が経ちましたっ!
皆さまの☆評価、ブックマーク、そして日々小説のページをめくって下さったことが、連載を続ける原動力となり、ここまでやってこれましたっ。
ありがとうございますっ!
この物語はまだまだ途中、気を抜かずに、精一杯書き続けていきたいと思いますっ。
これからも、よろしくお願いいたしますm(_ _)m
最後に、お祝いで☆を入れてくれたら、嬉しいなぁ…って思ってますっ。
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