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【イタ☆恋!】新・江の島縁起〜なぜかイタリア出身の怪人として戦うことになった僕は、魔法少女に恋をした〜☆現代ラブコメ・ファンタジー☆  作者: 綿野草空希
29 ジョブチェンジ・ランチ

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129/163

29.1 女呼んでブギウギ1


――木曜日……


――金曜日、昼。


 昨日も結局、青浜さんとは話せなかった。


 話したのは、火曜日夕方の、あの雨の渡り廊下での出来事が最後だ。


 そして今朝の登校時も、青浜さんに会わなかった。


 それに加えて今朝は、友人二人のマンマークもなかった。


 一人登校して、昇降口から教室までは芹園さんと二人きり。


 教室で友人二人に、今朝、マンマークしなかった理由を聞くと――


 「踏切側でエロナイト由比里を待ち構えていたら、青浜嬢と龍巳嬢が、いつもより早めに来たので、そのまま四人で登校したのだっ。ふふふっ、マッチョ神のご利益だなっ! フロント・ダブル・バイセップス!!」


 ――と、ポージング&ドヤ顔つきで説明してくれた。


 ……これはやっぱり、青浜さんに、意図的に避けられているのではないか?


 疑念《ぎねん》と不安ばかりが、膨らんでいく。


 あと、マッチョ神ってなんだよ? 


 [おっかなさ]ばかりが、膨らんでいく。


 それと余談だが、磐田君(お漏らし君)は、昨日も今日も休みだった。


 さすがに喧嘩に負けた上、お漏らししたのでは、合わせる顔がないのかな?


 まぁ、こっちはどうでも良いので、なにも膨らまない。


 ――その後、休憩時間の度にチャンスを伺うのだが、やはりどうにも、青浜さんとは話せない。


 依然《いぜん》、渡り廊下から走り去った謎が解決しないまま、ズルズルと昼休みを迎えてしまった……


 「今日、僕はパンにするから購買に行くね」

 四限目終了と同時によってきた友人二人に、そう宣言する。


 なぜなら、これ以上、芹園さんと一緒に昼食を摂るのは、得策ではないと思ったからだ。


 昨日は失念して、結局、学食で芹園さんと一緒になってしまったが、もう誤解を招く行動は止めだ。


 「「は?」」

カポン

 僕の言葉に、二人が間抜け顔で口を開ける。


 「だから学食には、二人で行ってね。Ciao(チャオ)!」

シュタッ

 かまわず僕は、百万ドルの笑顔で手を振って、教室の後ろのドアに向かって歩き出す。


 「………………ななななななっ、何を言っているっ、同志由比里よっ! それは駄目だっ! 学食を共にするのは、入学以来の我等の約束だろっ!」


 「そうですぞっ! 由比里殿っ! [我等三人、生まれた時は違えど、学食は同じに死せんとする]と、桃源で誓った仲では御座らぬかっ!」


ドダタタタタタタッ!!

 二人が訳の分からないことを口走り、ダッシュで後ろのドアへと走り込み、僕の前に立ち塞がった。


 「いや、そんなおっかない誓い、立ててないから。僕らは特に決めた訳ではなく、流れで、三人で食べるようになっただけだよね?」

 笑顔を崩さずに、いいねっ! と親指を立てる。


 てか、学食で死んでどうする?


 「僕は今日、購買のパンにするってもう決めたから。学食には二人でどうぞ。Arrivederci《アリッデベルチ》!(さようなら)」


 ちなみに、学食は本校舎一階で、購買は第二校舎一階にあるので、方向が少し違う。


 「ええぃ! 御託《ごたく》はいいっ! つべこべ言わずにさっさと学食へ参ろうぞっ!」

ガシッ

 一宮君が、僕の腕を抱える。


 「さあっ、学食には愛しの芹園嬢が待っているぞっ。あまり、最愛の彼女を待たせるなよっ」

ガシッ

 椎名君も、反対側から僕の腕を抱える。


 まるで僕は、警官に連行される犯人のようだ。


 二人はそのままドアを出て、学食方向へ僕を連れて行こうとする。


 「行かないしっ。てか、芹園さんは彼女なんかじゃないしっ」

ジタバタッ

 その場で抵抗し、二人の腕を振り払う。


ガガシッ!

 「交際まで、後ちょっとだろっ? なっ? 祝福してやるから、大人しく芹園嬢エンドを受け入れろっ!」


ガガシッ!

 「性格はアレで御座るが、間違いなく美人で御座ろう? オタには過ぎたエンディングで御座るよっ。もう芹園殿を受け入れなされっ!」


 二人が再度、僕の腕に絡みつく。


 「嫌だっ、イヤだっ、いーやーだぁーっ! 僕はTrue Endを手に入れるっ!」


 「うるさいっ! 猥褻男にTrue Endなどないっ! あるのは芹園嬢ジェラートEndのみだっ!」


「きっと[ナイト殿がナイトに、アレを警棒のように硬くして閨房《けいぼう》を訪れる]のを、心待ちにしてるで御座るよっ!」

 (注 閨房《けいぼう》は、女性の寝室のこと)


 「一宮君っ、今の上手くないし、すっごく分かりづらい下ネタだよっ! 後、ジェラートEndって何だよっ、おっかないっ!」


 ドアから一歩出た廊下で、三人でしばらく揉み合い、問答する――


 「――あっ、あのっ!」

 と、その時、教室内から声をかけられた。


ピタリ

 僕らはその一声で、動きを止める。


 見るとクラスの女子、帚木《ははきぎ》里奈《りな》さんと、牧《まき》和泉子《いずみこ》さんが、ドアの近くに立っていた。


 ウチのクラス内では、青浜さん龍巳さんに続く、美人の二人だ。


サササッ……

 「あっ、ごめんね。邪魔だよね」

 「ああ、すまんな、お嬢さん方」

 「ささ、どうぞお通りを」


 通行の邪魔なのに気がつき、素に戻って、その場をどいて道を譲った。


 オタクは周りから誤解されやすいので、普段からトラブルにならないように、ジェントルマンであることを、心がけているのだ。


 ……しかし、道を譲られた女子二人は、その場から動かない。


 「……あのぅ……あの、由比里君」

 帚木《ははきぎ》さんは動かないどころか、話しかけてきた。


 「……わ、私今日、お弁当ぅ……作り過ぎちゃってね。……そのぅ……良かったらコレ……」

 そう言って、可愛い柄の巾着型のランチバックを、僕に差し出してきた。


 「はい?」

 僕は訳も分からずに、反射的にソレを受け取ってしまう。


 「良かったら食べてねっ。それじゃあっ」

パタパタ……

 頬を赤らめた帚木《ははきぎ》さんはそう言い残すと、踵《きびす》を返して、自分の席へと戻って行った。


 「里奈のお弁当、食べてあげてねっ。お願いねっ」

シュタッ!

 牧《まき》和泉子《いずみこ》さんは、僕に軽く片手で[お願い]とポーズを取ると、帚木《ははきぎ》さんの後を追った。


カポン

 「「「……………………」」」

 三人並んで、間抜け顔で見送る。


 「………………え? これ、お弁当なの?」

 恐る恐る巾着を開く……


 と、中にはこれまた可愛いデザインの、プラスチック製の弁当箱が入っていた……


 教室に戻った女子二人を、廊下から覗き見る――


 と、牧《まき》和泉子《いずみこ》さんが、帚木《ははきぎ》さんの肩を叩いて[やったねっ!]と喜び、そのまま二人は机を向かい合わせにした。


 机の上には、それぞれのお弁当が並んでいた――


 「……弁当箱は、一つで御座るなぁ……」

 一宮君が巾着を覗き込んで、ポツリと呟く。


 「……俺は今、光学迷彩スーツを着ていたっけか?」

 椎名君が、自身の体を不思議そうに見回す。


 もちろん、そこには制服を着た中肉中背と、20キロの重り以外は、見当たらない。


 「月よっ、どうかこの似非《えせ》イケメンに、七難《しちなん》八苦《はっく》を与えたまえ……」

 一宮君は窓から見える、どんよりとした曇り空に向かって手を合わせ、真摯《しんし》に祈った。


 「中身がコンビニ弁当という、無駄に手の込んだドッキリでありますように……」

 椎名君もお弁当に向かって手を合わせ、真摯《しんし》に祈った。


 二人が何を言いたいのかは分かるが、僕は突然舞い込んだお弁当にとても戸惑っていて、ツッコミどころではない。


 さすがにオタで、リアルの恋愛経験が乏しい僕でも、作りすぎた云々(うんぬん)との話は、ただ言い訳だと分かる。


 コレは、僕に渡すために作られたお弁当なのだろう。


 「……ねえ? コレどうすれば良いの?」

 つい、頼りない友人二人を、縋《すが》るような目で見てしまう。


 なぜなら、クラスの女子からお弁当をもらうなんて、人生初の経験だ。


 まるで対応が、思いつかないのだ。


 ――[知り合いから受け取った善意のお弁当を食べない]――


 という選択肢は、僕の中にはない。


 てか、ソレを平気で選ぶ人間には、なりたくない。


 だが、どこで、どんな様子で、もらったお弁当を食べるのがリア充男子の作法なのかが、サッパリ分からないのだ。


 「どうすればって、聞かれても……なぁぁ……」

 「で、御座るよ……」

 聞かれた、こちらも男子力低めの友人二人が、顔を見合わせる。


 「「「………………………………………………」」」

 しばらく、お互いの顔を見たり、廊下の果てを眺めたり、天井の染みを数えたりして、逡巡する……


 再度、三人で教室を覗き込む――


 と、帚木さん、牧さんの向こう側に、龍巳さんと数人の女子が、一緒に机を並べているのが、目に止まった。


ジッ

 友人二人も、そこを見つめる。


 龍巳さんグループの並べた机には、椅子の数が一つ多かった……


 もしかしてアレは、チャイムと同時に、弾丸のように教室を飛び出した、青浜さんの席なのだろうか……


にや……

ニヤ……

 瞬間、友人二人の口元が、嫌らしく吊り上ったっ!

第29章「ジョブチェンジ・ランチ」

終了まで、あと5話



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