28.9 メリージェーンと琢マッシーーン9
「はああぁぁぁあぁぁ!?!? 何ですかっ、ソレっ!? アースジャスティスって正義の組織ですよねっ!?」
怒りが湧いてくる。
「それじゃあ、どっちが悪の組織だか分りませんよっ! あべこべですっ!」
「ああ、全くだな。この情報を得たB.I.P.上層部は、すでにアースジャスティスそのものを[まとも]な組織とは見なしていない」
…………パタパタ……
「我々はつい[狂気のイエロー]一人の異常さに目がいって、非道な行いの原因をヤツ個人に求めてしまう」
イソガニンさんが、頭頂部を扇ぐのを、再開する。
パタパタ……パタ……
「が、本当はアースジャスティスという組織自体が狂っているので、[狂気のイエロー]のようなメンバーが現れたと考える方が、本質を突いているかもな」
パタ
「さて、戦力についてなのだが、写真を見て分かる通り、アースジャスティスのバトルスーツは外部装甲タイプなので、かなりの重量があると考えられる」
イソガニンさんが、いったん扇ぐのを止めて、資料を指差す。
「はい」
「これも紅夜叉からの伝聞だが、重量がある分、どうも稼働時間に制限があると、鎌倉夜叉狐内では推測していたそうだ」
パタパタ……パタ……
「具体的には[現在まで一時間半以上、継続的に戦闘を行った例がない]とのこと。つまり、時間稼ぎが有効な手立てだということだ――」
――バトルスーツは当然、重くなるほどエネルギーを使う。
例えば、バトルスーツに電力を使う場合、バッテリーを携帯する必要があるが、バトルスーツが重ければ、その分、バッテリーを増やさなくてはならない。
が、バッテリーを増やせば、さらに自重が増してしまうという、悪循環に陥るのだ。
一方、B.I.P.の戦闘服は、衝撃を受けると高質化する超科学繊維を使っているので、とても軽量だ。
そのため、重量1.5Kg程度のバッテリーで約一日連続稼働出来る、優れものなのだ。
しかもバッテリーをオフにしても、戦闘服自体が軽いために、通常行動に支障が出ない。
なので、充電やバッテリー交換をしなくても、上手くやりくりすれば、数日間、作戦行動をし続けられるのだ――
「――う~ん、一時間半かぁ……戦闘自体は、それ程時間はかからないけど……。結構、微妙な稼働時間ですね」
ソレでは、常に時間を気にしながら、戦うことになりそうだ。
パタパタパタパタパタパタパタ……
「だな。それから、性能についてだが、紅夜叉の所感だと、機動力はB.I.P.の一般戦闘員と同程度だろう、ということだ」
「へえ、ずいぶんと低いですね……。あっ、いやいや、重装甲なら大したものかも?」
パタパタパタ……
「ああ、何せウチの戦闘員服とアースジャスティスのバトルスーツでは、重量がまるで違うだろうからな」
「ですね。B.I.P.の戦闘員服は、防御力より機動性重視ですからね」
相手がスピードのあるピュア・シャイニングである以上、どれだけ装甲が厚くしても、遅くては意味をなさない。
パタパタ……
「アースジャスティスのバトルスーツは、機動力は低いが、防御力は比較にならないほど高いそうだ。おそらく、ナポリタンの触手で打撃をしても、ダメージを与えられないだろう。それと、パワーもかなりのモノらしい」
「うーん。対ピュア・シャイニング戦とは、ずいぶん勝手が違ってきますね」
まあ、戦闘なんてパワー勝負じゃないので、いくらでも戦いようはあるけどね。
無限触手だって、打撃だけが使い方じゃないし。
パタ
「ああ、それから、アースジャスティスの強みとしては[転送]が有名だが……知ってるか?」
「すみません、知りません。……[転送]って何ですか?」
「ふむ。一言で言えば[ワープ]だな。推測では、一度訪れた場所になら、その座標に、瞬時に移動出来るらしい」
……パタパタ……
「鎌倉夜叉狐が壊滅した際も、数日前、アジトに不手際で[Wave Five]の一人に侵入されたそうだ」
パタパタパタ……
「当然、その時は追い返し、すぐにその侵入された入口を物理的に閉鎖したそうだが、[後日突然、閉鎖した入口の内側に、狂気のイエローが現れた]とのことだ」
「うわぁ~、一度、アジトに侵入を許したら、アウトですね」
「バトルスーツは基地で着て、[転送]で出撃するんですか?」
僕みたいに、四畳半の控室で、着替えていたりして。
パタ
「ああ、それも出来るだろう。が、どうも外でも一瞬で[変身]が出来るらしい。簡単に言えば、バトルスーツのみが基地から[転送]されて、体表面上にダイレクトに装着されるようだ」
「まぁ、これも、あくまでも推測の話だ。あと、アースジャスティスの連中は、その変身方法を[蒸着]と呼ぶらしいぞ」
「へえぇ、戦い方は正義らしからぬのに、そんな所は凄く、ヒーローらしい方式なんですね」
ちょっと生意気だ。
――通常[蒸着]とは、金属を気化させて、他の物質に付着させることを指す。
が、アースジャスティスの場合は、実際にバトルスーツを気化させて[蒸着]している訳ではないだろう。
おそらく、何もない状態から一瞬で転送される様子を、比喩として[蒸着]と表現していると思われる。
「――神出鬼没なのは、ちょっとイヤですね。……あ、バッテリーのみ転送して、稼働時間が増えたりはしないんですか?」
「いや、それは今まで、ないそうだぞ」
パタ……
「もしかしたら技術的に、バッテリー交換のような微細な転送は不可能なのかもしれんな。もしくは[転送は連続で行えない]とかな」
「あー、何かしらの制限はあるでしょうね。なければそれこそ、無敵になっちゃう」
だからこそ、長年に渡って、勢力が均衡していたのだろう。
「さて、こんなもんかな?」
チラリ
イソガニンさんが、時計を見る。
「よしっ。以上、アースジャスティスと遭遇した際は、これらのことを充分に留意して対応するようにとの、上層部からのお達しだ。よっこいしょ」
イソガニンさんが、立ち上がる。
「はい」
バササ……
僕も、手元の資料を片付ける。
「ま、実際は、アースジャスティスと遭遇戦になる可能性は、かなり低いと、上は考えているみたいだがな……」
「おっと。[コレはナポリタンには伝えるな]と、言われていたな。今のは聞かなかったことにしてくれ」
パチンッ
イソガニンさんはそう言うと、蟹の目でウインクした。
「ははっ、分かりました。僕は何も、聞いてません」
笑って、立ち上がる。
どうやら今のは、イソガニンさんの腹芸だったようだ。
これにて、座学は終了となった。
――――――
―――
―
その後、僕は訓練準備室を退出し、友人二人との合流に向かう。
が、椎名君が居残りトレーニングを志願し、一宮君もそれ付き合うことになったので、メンドイと思った僕は、一人で帰宅の途についた……
第28章「リア充ノリが分からない僕」終了
【予告】
第29章は、学園でのラブコメパート(6話予定)
第30章は、夏音と是陽の急接近デート!?
に、なる予定ですっ。
乞うご期待!




