28.8 メリージェーンと琢マッシーーン8
月、火、木、金、土の週5日、最新話を更新しますっ!
☆本作品は2026年7月29日にランクインしましたっ!☆
第4 位 [日間]コメディー〔文芸〕 - 連載中
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「こいつは、鎌倉夜叉狐内でも、最・要注意人物とされたヤツだ」
イソガニンさんが説明を始めた――
――[狂気のイエロー]とは、わずか数ヶ月前にアースジャスティスの五人戦隊[Wave Five]に加わった新人戦隊員[Wave イエロー]に対して、鎌倉夜叉狐がつけた、二つ名なのだそうだ。
初めは、目についた物――例えば店先なら椅子、テーブル、看板、パラソルなど――を、手当たり次第に掴んでは振り回す戦い方から、すぐに[凶器のイエロー]と、あだ名されるようになったそうだ。
が、次第に、あまりに器物損壊が酷く、一切の情け容赦のない、箍の外れた戦い方が目につくようになる。
戦闘では鎌倉夜叉狐の主力、五人組女怪人[五夜女狐]の一人に背後から忍び寄り、拾った鉄パイプで後頭部をフルスイング。
――幸いこれは、[五夜女狐]の装備する、特別製の[浮世傘]で防いで、事無きを得たそうだ――
器物破損については、一般人への人的被害さえ出す始末の狂乱ぶり。
そんな滅茶苦茶なやり口から、次第に[凶器]から[狂気]のイエローへと、呼び名に変わっていったそうだ……。
「――とんだイカレ野郎ですね。よくそんな男が、正義の味方なんて名乗れるもんですねぇ」
あまりに呆れてしまい、自分が悪の怪人であることを忘れて、つい正論を言ってしまう。
パタパタパタパタパタパタパタ……
「ああ、本当にイカレてるな」
説明の途中から再度、蟹スーツの上部を開いて、頭を扇いでるイソガニンさんが同意した。
パタパタパタ……
「だが、一つ勘違いしているぞ? 資料の写真では分からないが、紅夜叉の所感では、[Wave イエロー]は男ではなく、小柄な女なのだそうだ。しかも声の感じから、相当、若い女性だと推測しているそうだ」
「えええっ!? 女なんですかっ!?」
驚き、思わず大声を出して、資料の写真をマジマジと見る。
資料の写真は、まるでTVの特撮ヒーローのような、色とりどりの甲冑風のバトルスーツを着た五人だ。
それが、採石場跡地らしき辺鄙な場所で、背後に爆発を背負いながら、格好よくポーズを決めているモノだった。
パタパタ……
「ああ、フルフェイスのヘルメットを被っているから、あくまでも推測になるそうだが、おそらくは女らしい」
パタ
「だが、その資料写真のイエローは、件の[狂気のイエロー]ではないぞ。ちょっと古いんだよ、それ」
団扇で資料を指す。
「へ?」
資料から顔を上げる。
パタパタパタパタパタ……
「アースジャスティス公式ファンクラブのホームページに、新長官に代替わりした際に撮られた写真が掲載されていたのを、ウチが勝手に、資料に借用したモノなんだ」
「ああ、そうなんですか……あのぅ、最近の写真とか、それこそ動画とかは、ないんですか?」
パタパタパタ……
「うん、それがないんだよ。ウチの諜報部の状況は、さっき説明しただろ?」
「はい」
パタ……パタ……パタ……
「でな、アースジャスティスが所属している正義側の協会は、ヒーローの商業化を嫌っていてな、協会が運営する公式ファンクラブの内容も、お世辞にも充実しているとは言えんのだよ」
パタパタ……
「だから、公式ファンクラブを覗いても、ろくな情報は取れなかったそうだ」
「なるほど、そういう事情なんですね。しかし、正義側の協会も色々ですねぇ……あ、そー言えば、ピュア・シャイニングの協会公式ファンクラブも、充実していないって、聞いたことがあります」
パタ……
「ふむ」
「ただ反面、非公式ファンクラブの熱量は、凄いそうですね。ピュア・シャイニングが個人でやってる非営利の公式ページも、かなり人気があるらしいし」
パタパタパタパタパタパタパタパタパタ
「そうだな。まぁ、商業化にオープンな協会に所属しているヒーローは、バトルスーツに、企業ロゴが書かれていたりするからな」
パタパタパタパタパタパタパタパタパタ
「さすがにアレでは、見る側はもちろん、戦う怪人側も興ざめだよなっ。商業化を嫌がるのも、割と理解は出来るな」
「そうですね。そうそうっ、確か、ヒーローが名乗りの最中に、通販番組のように長々と商品を宣伝して、SNSで炎上した正義の組織がありましたねっ。名古屋かその辺でっ」
パタッパタッパタッパタッパタッパタッ
「はっはっはっはっ、あった、あったっ! それで結局、そのヒーローが謝罪会見を開いていたなっ。アレは前代未聞で笑ったなっ! はっはっはっはっ!」
「ははははっ、ですねっ! ……あっ、そうだっ。鎌倉夜叉狐のホームページや公式ファンクラブに、アースジャスティスの資料はないんですか?」
パタッ
「うん? いや、そっちは現在、閉鎖されていて見れないそうだ」
「あっ、そっか。もう壊滅してますもんね。だから紅夜叉さんの口伝頼りなんでしたっけ……」
しょうもない質問をしてしまった。
パタパタパタ……パ
「そういうことだ。ま、映像はなくても、当主本人の口伝は貴重だ。……おととっ。時間がそれほどないのに、少々、脱線してしまったな。話を戻すぞ」
「はい」
「昔からアースジャスティスの五人戦隊[Wave Five]には、なぜか時々、女のフリをした男が混ざるそうだ。が、件の狂気のイエローは、本物の女だ――」
――五人戦隊の紅一点といえば、やはりピンクだ。
が、なぜか現在の[Wave Five]にはピンクは存在せず、イエローが女なのだそうだ。
前長官時代は、リーダーがレッドで、ブルー、グリーン、イエローと続き、紅一点のピンクが、女性のフリをした男で、全員男性の五人戦隊だったそうだ。
が、数年前に長官が代替わりしてからは、リーダーがホワイトになり、ピンクなしのレッド、ブルー、グリーン、男のイエローの五人戦隊に変更。
そしてさらに数ヶ月前に、ピンクが増えないまま、イエローを男から女に入れ替えるという、不思議なメンバーチェンジが行われ、今日に至るそうだ――
パタパタパタパタパタパタパタ……
「……それでな、ここからが本題の、鎌倉夜叉狐が壊滅した時の話になるのだが……」
サラサラサラ
団扇の風に煽られたイソガニンさんの髪が、揺れる。
「はい」
僕は髪を見て[少し薄めだなぁ]と思った。
パタッ
「紅夜叉の話によると、端的に言えば、鎌倉夜叉狐の本部地下アジトに単独潜入した狂気のイエローが、本部内の事務員たちを襲って人質に取り、鎌倉夜叉狐側を抵抗出来なくしたそうだ」
「…………はい?」
思わず自分の耳を疑って、聞き返す。
だが、イソガニンさんは、僕の反応は織り込み済みだったようで、そのまま話し続ける。
「その後、アジト内に残りの[Wave Five]メンバーが雪崩れ込むと、狂気のイエローは人質を他のメンバーに任せて、アジト内の無抵抗の人も怪人も、そしてアジト建物自体も関係なく、破壊し尽くして回ったそうだ」
「鎌倉夜叉狐は五夜女狐を中心に、甚大な損害を出しながらも、何とか事務員全てを奪還。修復不能のアジトの完全放棄を決断し、自爆装置を作動させて、総員で潰走撤退をした……。これが、壊滅の真相だそうだ」
第28章「リア充ノリが分からない僕」
終了まで、あと1話
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