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【イタ☆恋!】新・江の島縁起〜なぜかイタリア出身の怪人として戦うことになった僕は、魔法少女に恋をした〜☆現代ラブコメ・ファンタジー☆  作者: 綿野草空希
28 リア充ノリが分かんない僕

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28.7 メリージェーンと琢マッシーーン7


 「――へえぇぇ~、[踵(かかと)落としのレッド]ですかぁ。僕がアルバイト戦闘員になった時には、もういませんでしたねぇ。ちょっと、見てみたかったなぁ……」

 話に何度も出てくる[踵(かかと)落としのレッド]が特に気になって、そんな感想を漏らしてしまう。


 「あれは正直、自分が魔法少女と戦っていることを忘れるぞ。[踵(かかと)落としのレッド]ことシャイニング・レッドは、デビューから引退までの数年間の戦闘で、魔法は一度たりとも使ったことが、無かったからな」

 イソガニンさんは蟹スーツの中に、タオルを持った手を入れて、何かゴソゴソとやっている。


 おそらく、中で汗でも拭いているのだろう。


 ……気ぐるみの仕事って、大変だなぁ……


 「ブルーのような簡易的な魔法攻撃すらなしの、完全な打撃系の戦闘スタイルでな、それも基本、パンチもなしのキックオンリーときたもんだ」

ゴソゴソ ふきふき


 「物凄いバネでなぁ、伸び上がるハイキックからそのまま神速の踵落とし。軌道が変幻自在に変化する、高速乱舞の首刈りキック。意表を突いた美しいフォームのローリングソバット……そのどれもが、強烈だったよ」

 なおも中の人は、ゴソゴソとやっている。


 「特に、踵(かかと)落としの破壊力は凄まじくてな、超科学で作られたこの蟹スーツも直撃して、大破したことがあるんだよ」

ぽんぽん

 人間の手が蟹スーツを叩く。


 「やっぱりソレは、スーツなんですか?」

 当たり前のことを、聞いてしまう。


 「ああ、俺の改造手術は、この頭から生えた蟹目と、エラの移植だけだからな。基本的に、中身は普通の人間の姿と大差ない」


 「普段は蟹スーツを脱いで、怪人化前と変わらない日常生活を送っているよ。もちろん、総統閣下の血で怪人化したので、姿は変わらなくても、基本的な身体能力や治癒力も上がっているけどな」


 「えっ!? その目、普段目立って、困りませんか?」

 目、だけに目立つ。


 なーんてオヤジギャグは言わないよ? 


 「ああ、大丈夫なんだよ。この目は収納可能だからな」

パカッ

 そう言うと、蟹スーツの上部が開いた。


 すると、顔は見えないが中からチラリと、成人男性の頭頂部が見えた。


シュルル

 そして、飛び出ててた蟹目を引っ込める――


すぽっ

 と、髪の毛の中に埋まって、見えなくなった。


 「なっ? 目を立てなきゃ、目立たない、だろ? はっはっはっ」

 得意そうにオヤジギャグを言い放って、笑う。


すちゃ

 蟹スーツの中から[藤沢健康センター]と、書かれた団扇《うちわ》を取り出して、自身の頭頂部を扇ぎ始めた。


パタパタパタパタパタパタ……

 「おぅー涼しいぃ……。脇腹のエラも、閉じると見た目では分からなくなるしな、生活には全く困らないぞ。逆に、泳ぐ時は便利だしな」

にゅるるんっ

 再び、髪の毛の中から飛び出した蟹の目が、気持ち良さそうに団扇《うちわ》の風を浴びる。


パタパタパタパタパタ……

 「……さてと、話を戻すか」

カチリ

 蟹スーツの上部を閉じる。


パタパタパタパタパタ……

 「レッドは一年ちょっと前、突然、戦闘に出てこなくなり、それ以来、一度として姿を現していない」

 今度は、腕の隙間に、風を送り始めた。

 

パタパタパタパタパタ……

 「確か三月の戦闘が最後だったので、大方、学校を卒業したとか、生活環境の変化で引退したのだと推定されている。魔法少女は学生が多いと、考えられるしな。実際、三月引退は、非常に多いそうだ」


 「何とゆーか、生活感がありますねぇ……」

 ちょっと、しみじみとしてしまう。


 「でもまあ、僕としては、今はレッドがいなくて良かったと思ってます。ブルーとピンクの二人でも骨が折れたのに、そこに踵落としのレッドが加わると考えたら、ゾッとします」


パタパタパタパタパタ……

 「はっはっはっ、違いない。俺もあの、赤い髪を振り回してキックを乱舞させる姿には、本当に恐怖を覚えたからなっ。今はいなくて、ホッとしているよ」


 「ですよねぇ~」


パタパタ……パタ……パタ

 「ふふふっ。だがなぁ、恐ろしい敵ではあったが、レッドは淡白というか、実にサッパリした性格をしていてな」


パタ……

 「戦う時は真正面から、堂々と踵落としをするし、こちらが降参だと言うと[もうしないよーに]と気さくに注意して、サッサと帰っちゃうんだよ」


パタ

 「……だからこっちも、酷くやられても、レッドを憎む気には、なれなかったなぁ……」

 顔は見えないが、イソガニンさんは何か思い出話でもするかのように、少し懐かしそうに、楽しそうに話した。


 (レッドの性格って、ちょっとブルーに似ているのかなぁ?)

 そういうのは、嫌いじゃない。


 「さて。次は何を、話そうかなぁ……」

チラリ

 イソガニンさんの蟹目が、壁の時計を確認する。


 時間は、まだ少しあった。


 「むっ! まずいなっ。絶対に伝えないといけない話が、まだ残っていたなっ。他の話はなしにしようっ。ええと、渡した資料の、最後を見てくれ」

ペラリ

 イソガニンさんが慌てて、手持ちの資料をめくる。


 「はい」

 僕も資料をめくって、気持ち、姿勢を正す。


 目に入った資料には、アースジャスティスと思われる、五人戦隊の写真などが掲載されていた。


 「壊滅したKMR47……旧鎌倉夜叉狐の現当主、三代目紅夜叉がB.I.P.に保護を求めたのは、Dr.から聞いているな?」


 「はい。でも利用価値は低いから、結局、湘南から離れた場所に匿《かくま》って飼い殺しにする、とDr.は言ってました」


 「ああ、上はそういう方針で動いているそうだ。ただ、紅夜叉の持ってるアースジャスティスの情報には、価値がある」


 「なんせ、アースジャスティスとの交戦は想定してなかったので、ウチの諜報部は近年、アースジャスティスと鎌倉夜叉狐の戦闘に、諜報員を派遣してなかったらしい」


 「なので、B.I.P.はアースジャスティスの情報不足なのだ。故に紅夜叉の情報は、口伝《くでん》でも価値がある。……ま、最重要機密の人物なので、俺自身は紅夜叉に面会してないがな」


 「はあ」


 「前置きが長くなったが、鎌倉夜叉狐が壊滅した時の詳細な状況が、紅夜叉本人から収集されたので、その話をこれからする」


 「今後、アースジャスティスと戦う可能性もあるので、心して聞いて欲しい」


 「分かりました」

 しっかりと返事をする。


 「よし。では壊滅時の説明の前に、まずは話のキーパーソンとなる[狂気のイエロー]について、説明しよう」


 「こいつは、鎌倉夜叉狐内でも、最・要注意人物とされたヤツだ」

 イソガニンさんが説明を始めた――

第28章「リア充ノリが分からない僕」

終了まで、あと2話



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スピンオフ作品なので、読むとより、本編が楽しめますっ!

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