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【イタ☆恋!】新・江の島縁起〜なぜかイタリア出身の怪人として戦うことになった僕は、魔法少女に恋をした〜☆現代ラブコメ・ファンタジー☆  作者: 綿野草空希
28 リア充ノリが分かんない僕

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28.3 メリージェーンと琢マッシーーン3


 放課後、坂道を下りる。


 雨はだいぶ前に上がったので、路面は乾いてきている。


 結局、青浜さんは帰りのホームルームが終了すると同時に、ずどんっと教室を飛び出して、部活に行ってしまった。


 今日は一度も、会話しなかったな……


 ――これから、このまま江の島方面に向かうので、自転車の回収は、また後日にすると決めた。


 ……何か、このままズルズルと、駐輪場に置きっ放しにしてしまいそうだ……


 坂の下まで来ると、まだ所々に、水溜りが残っていた。


 水溜りを見ると、磐田(お漏らし)君を思い出す。


 明日は、学校に来るのだろうか?


 まぁ、どーでも良いが。


 「エロナイト由比里よ。まだ戦闘訓練には時間が早いが、もう江ノ電に乗るのか?」 いつも二人と別れる踏切の前で、聞かれる。


 「うん。これからちょっと、寄る所があるからね」


 「信用出来ぬで御座るな。また、とんぼ返りをする腹づもりで御座ろう?」


 「そんな気はないよ。ただまあ、気になるなら、一度自宅に帰らずに、ついて来てもいいよ?」

 平然と提案する。


 「………………」

 「………………」

 二人は軽く顔を見合わせて、このままついて来ることに決めた。


 ……本当に信用無いなぁ。


 三人で小動高校前駅に向かい、藤沢行きの電車に乗る。


 数分、電車に揺られて、江ノ島駅で下車。


 改札を抜けて、すばな通りを少し歩く……


 「――じゃあ僕、ちょっと髪を切ってくるね」

 すばな通りにある、シャレ乙なメンズヘアサロンの前で、二人にそう宣言する。


 ここには昨日、電話で予約を入れておいたのだ。


 「はああぁぁぁああぁ!? こんなオタクにとってのアウェーの地で、髪を切るだとぉおぉ!?!?」


 「由比里殿っ、乱心めされるなっ! ここは禁足地で御座るぞっ!!」

 オタクな友人二人が、一気にパニックを起こした。


 「いや、ここはちょっとお洒落なだけの、ただの床屋さんだよ。もう予約したしね。止める訳には、いかないよ」

ニッコリ

 笑顔で、親指を立てる。


 今日はこのために、雨で髪がモッサリするのに、整髪料をつけなかったのだ。


 「ああ、そうだっ。良かった二人も、一緒に髪切ればぁ?」

 いいねっ! と、親指を立てたまま、聞く。


 「ふっ、ふざけるなっ! こんな大アウェーに入れるわけないだろっ!」

 「ちょっとイケメンになったからと、もうリアル勝ち組気取りで御座るかっ!」

 「本当は、紛い物の似非《えせ》イケメンのくせにっ!!」

 「いやっ、もう似非《えせ》イケメンですら御座らぬっ! 似非《えせ》メンで御座るっ!」

 「友を裏切った貴様はっ、もう男でもないわっ! この似非《えせ》メンめっ!!」

 すばな通りに、混乱した二人の怒声が響く。


 「あらそう? 残念ね。じゃ、僕は行ってきま~す」

ヒラヒラ~~

 僕は罵詈雑言《ばりぞうごん》を浴びても気にせず、手を振って入店する。


 当然、二人はついて来ない。


 店内から外を覗くと、パニック状態の二人が、すばな通りを右往左往しているのが、確認出来た。


 (ふぅ~~……ドキドキする……)

 生まれて初めての、男性用美容院だ。


 正直、緊張している。


 が、友人二人が見ている手前、意地になって、平然と振舞ってみせたのだ。


 着席して、理容師さんに[どんな髪型が良いか]と聞いてみる。


 すると、[君なら何でも似合うよっ]と、やたらと突飛な髪型を提案されて、難儀《なんぎ》した。


 [あまり奇抜なのは困る]と話すと、結局、モッサリ感を抑えるために、髪全体を梳《す》いて、毛先に軽くシャギーを入れることに決まった。


 カットをして、この後バイトなので、シャンプーとブローもしてもらう。


 ――数十分後、見事にモッサリ感が消え、自然で清潔感がありながらも、リア充風のお洒落なイケメンが出来上がった――


 (……チッ。何か、現在の自分の姿なのに、妙にイラっとくるのは、なぜだろう?)

 鏡を見て、ついムカついてしまう。


 やはり僕は、根っからの二次元オタなんだろう。


 本当は、友人二人の気持ちが、痛いほどよく分かるのだ。


 ちなみにカットの途中、開き直った中肉中背が、お店の前で奇行(筋トレ)を始めて、理容師さんに怒られていた。


 (でも、青浜さんとのリア充を目指しているんだから、コレで良かったんだよね?)

 根っからの二次元オタでも、好きな人は二次元の中ではなく、現実世界(リアル)にいる。


 だから、現実世界(リアル)で頑張るしかない。


チーン

 カット、シャンプー、ブローで5400円なり。


 (くっ! やっぱり高い)

 勝利ボーナスで懐は温かいけど、いつもの1000円カットの五倍の料金に、軽く引く。


 「ありがとうございましたー」

 理容師さんに見送られて外へ……


シュタタタタタッ

 店員さんに、店から遠ざけられてた友人二人も、戻ってきた。


 「どう?」

 軽くポーズを取って聞く。


 「チッ。死ね」

 「ハッ。いつか後悔するで御座る」

 

 「それ、髪型の感想じゃないよね?」


 「ああ、罵倒だ。それがどうかしたか?」


 以上が、友人との会話です。


 彼らは、悔しそうに歯噛みしながらも、マークを止めなかった。


 そのままアジトへ向かうために、すばな通りを黙々と、三人で歩く。


 「あのぅ、シーキャンドルは、どこですか?」

 シーキャンドルがバッチリと見える、江ノ島弁天橋の上で、知らない女の子二人組みに聞かれる。


 僕だけ。


 「あれです」

 「……い、行き方分からないかもぉ。途中まで、一緒に行きません?」

 「すみません。この後、バイト――」 

 「ちいぃぃ! いっち! にっ! さんっ! しっ! ごっ!」

 友人の、怒りの[路上腕立て伏せ]が炸裂して、会話終了。


 中肉中背をなだめ、また三人で歩き出す。


 「奢ってあげるから、一緒にアイスを食べようよ」

 江ノ島弁天橋を渡り切ると、知らないお姉様三人組みに、誘われる。


 僕だけ。


 「すみません。この後、バイト――」 

 「くそがぁあぁっ! いっち! にっ! さんっ! しっ! ごっ!」

 友人の、怒りの[路上スクワット]が炸裂して、会話終了。


 ありがたいのか、はた迷惑なのか、微妙です。


 今度はなだめても、中々、[路上スクワット]を止めなかった中肉中背は、結局、20キロの重りのせいで、また倒れた。


 「守秘義務で、怪人用の入り口を見せられないから、先に行くね」

シュタッ

 自爆した椎名君を、一宮君に丸投げにして、手を振り立ち去る。


 一人、青銅の鳥居をくぐり、弁財天仲見世通りを上る。


 岩本楼の前まで行く――


ガシッ

 「よしイケメン。一緒に岩本楼に泊まろう。なーに、天井のシミを数えていたら、すぐに済む」

ぐいいいいいっ

 突然、知らない中肉中背のお姉さんに、岩本楼に引っ張り込まれそうになる。


 「こここここここっ、これからバイトなんでっ、けっこうですっ!!」

 「おお、けっこうなっ! それは[合点承知の助平しようっ]って意味だなっ!」

ぐいいいいいっ

 「違いますっ! はっ、離して下さいっ!」

 「大丈夫っ! すぐに済むからっ! 痛くないからっ!」

ぐいっぐいっぐいっ

 「ほっ、本当にっ、止めて下さいっ!」

 「じゃあ、先っちょだけ! 先っちょだけでいいからっ! なっ? なっ――」

バババッ

 中肉中背のお姉さんを、必死で振り切る。


 「――あああっ、イケメンっ、待てっ――」

ダダダダダダッ

 お姉さんの叫び声を背に、逃げるように岩本楼の裏の道へ。


 急いで用具置き場に入って、地下アジトに下りた……


 うわぁぁ~~、最後の変態お姉さん、見た目は普通なのに、超おっかなかったなぁ……

第28章「リア充ノリが分からない僕」

終了まで、あと6話



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