28.2 メリージェーンと琢マッシーーン2
冷たい目のまま、椎名君が席取りに行った。
カウンターで、僕と芹園さんは焼きうどん。
一宮君は、カレーを受け取る。
シャカシャカシャカシャカシャカシャカ
もう聞き慣れた、プロテイン・ハードシェイクの音に向かって歩く。
キョロキョロ
僕は学食内を見渡して、青浜さんの姿を探す……
――どこにも、青浜さんの姿はなかった。
今日は、購買部のパンなのだろうか?
芹園さんと一緒のところを見られずに、ホッとする。
――そして思う。
やはり、これ以上、青浜さんに誤解されないためにも、芹園さんとは距離を置かないといけない。
僕に、芹園さんへの気はない。
が、なくても、一緒のところを青浜さんに見られるのは、どう考えてもマイナスでしかない。
話す機会を得て、[昨日の抱擁に、恋愛めいたものはない]と説明しても、芹園さんとベタベタしているところを見られては、説得力がなくなってしまう。
(まずは、明日からは学食は止めて、パンにしよう)
幸い、芹園さんとはクラスが別なので、学食で会わないようにさえすれば、滅多にエンカウントしないだろう。
これだけで、距離が置けるはずだ――
――その後、食事をしながら、友人二人が、昨日の放課後の出来事を、細かく聞いてきた。
すると、芹園さんは頬を染めながら、大げさに僕の活躍を話した。
ただ、芹園さんは意図的なのか? 偶然なのか?
青浜さんが助っ人に入った部分……と、いうか、青浜さんの存在自体を、二人に話さなかったので、そこは救いだった……
―――――
―――
―
食後、保健室へ向かうため、学食を出て廊下を歩く――
ぶいんっ!!
「フロント・ラット・スプレッド・アタック!!」
唐突に、中肉中背が奇声を上げて、ポージングのまま襲いかかってきた。
ヒョイ ピシッ
「ていっ」
とりあえず避けて、反撃のチョップを入れておく。
ぶしんっ!!
「ご参照あれっ!!」
間髪入れずに、低身長が手刀で襲いかかってきた。
ヒョイ ピシッ
「ほいっ」
とりあえず避けて、反撃のキックを入れておく。
「がはっ!?」
「ぐふっ!?」
友人二人が、蹈鞴を踏んで、悶絶した。
「はははっ、やだなぁ、二人とも。廊下でふざけちゃダメだよ?」
だいたい、そんな痛がるほどには、強く反撃していない……たぶん。
「チッ……そーいえば怪人化して、能力が上がってたんだな……」
「くっ、こんな痴れ者に……不覚……」
二人が歯噛みした。
「おい同志……。いや、エロナイト由比里よ。昨日はどっちを狙ったのだ?」
中肉中背が、苦々しげな声で聞いてくる。
「助平ナイト殿を一時でも信用するとは、拙者共は、何とも甘かったで御座るっ」
低身長も、腹の底から悔しげな声を発した。
「あはは……は……。ジェラートの次はナイトですか……」
[ナポリタン]に[ジェラート]に[ナイト]……次から次へと、変な呼ばれ方をするなぁ。
「芹園嬢の言から推測するに、どうも性犯罪の企みは、贅肉に終わったようだが……」
「もしも、拙者共の女神に手をつけていたら、死罪は免れぬところで御座ったな」
二人が睨みつけて言った。
「……あはははは……。何を言ってるのか、僕にはさっぱりと分からないよぅ……」
僕は白を切り通す。
てか、実際に、似非マッチョ用語は意味不明だし。
「もう、絶対、目を離さぬで御座る」
「JBBF(日本ボディビル・フィットネス連盟)を舐めるなよ? 大会での汚い手への検査は、厳密だからな?」
二人が凄んできた。
「……あはははは……。本当に何の話か、分からないなぁー」
ヘラヘラ
僕は怒れる友人二人に対して、笑って、適当に返した。
てか、JBBFってなによ? いったい、どこに話が反れたの?
――とにかく僕は、バレたことは、ミスとして反省している。
が、実行したことに、なんら反省はない。
大好きな人と交際出来るチャンスなんだっ、友達に遠慮なんてしてられるか!
(次は、もっと上手く、出し抜いてやるっ)
そう決意して、保健室に向かった。
―――――
―――
―
その後、僕は、保健室内で経過観察の検査を受ける。
もちろん、その間、友人は廊下で奇行に励んだ。
検査中、先生から、[諜報部から借りた制服は、返却しないで私物にしてよい]と言われた。
先生のせいで、僕は[大学生の佐藤君]と、身元を偽っている。
アルバイトの時給から、怪人の時給への変更は、先生の息のかかった経理部の人が、上手く偽造したとのことだ。
が、[大学生の佐藤君]が[小動高校の制服の請求書]を出した場合、誤魔化しが効かないので、その人から[止めて欲しい]と言われたそうだ。
……なんでも、万単位になると、カラー1将軍のチェックが入るらしい。
そこで、先生は一計を案じ、諜報部から借りた制服は、実験中に破損したと、虚偽の報告をして済ませたらしい。
……なんか、雪だるま式に、嘘が増えていくのは、気のせい?
あと、制服を破損する実験ってどんなだよっ!? と思った。
とにかくこれで、この制服は僕の私物になったので、安心して着続けられる。
いや、[この不正は、お前も共犯だなっ][てか、むしろ、お前のためにやったので、主犯はお前だな]と、百万ドルの笑顔で、先生は親指を立てたので、安心は出来ないか……
それと先生に、スマホが壊れたことを伝えた。
――まあ、説明が面倒だし、変な冷やかしを受けそうだから、喧嘩の話は伝えなかったが――
すると先生は、[新たにスマホを購入するまで、緊急呼び出し用の、B.I.P.の業務用端末の貸し出しを手配する]と言ってくれた。
ただその端末は、ネットには繋げるが、B.I.P.以外の個人の電話番号や、アドレスの登録はかなり制限される代物なので、私用には不向きなのだそうだ。
まあ、元のスマホも、アドレスの登録件数は極少数で、当然、青浜さんの連絡先なんて入ってなかったので、たいして変わらないと納得した。
こんな業務連絡と検査をした後、先生が外の友人二人も、保健室内に招き入れた。
そして僕ら三人に対して、[本日は戦闘訓練が行われるので、放課後、アジトへ向かうように]と、命令を下して、昼休みは終了になった。
第28章「リア充ノリが分からない僕」
終了まで、あと7話




