2.5 遥か国神の島5
[KMR47]……それはお隣の鎌倉市(江ノ島は藤沢市)に本拠地を置く悪の秘密結社で、BIPとは長年ライバル関係にあった。
KMR47は元々[鎌倉夜叉狐]という名前の組織だったそうだ。
だが、80年代終りに[KAMAKURAオールガールズ]に改名。
さらに、今世紀に入ると[鎌倉娘。2006]に再改名した。
そして、わずか数年で、今度はKMR47に再々改名する迷走っぷりを見せて、今日に至る。
いかにしてBIPとKMR47がライバル関係にあるのかは知らない。
ただ、BIPと互いに切磋琢磨して、世界征服を目指していた有力組織であったことには間違いない。
……因みに、鎌倉が世界遺産に登録されなかったのは、我等BIPが登録阻止に暗躍したお陰だと、藤沢市内では囁かれている……
カラー1将軍の話しは、なおも続く。
「近年、アースジャスティスの長官が代替わりしたとの未確認情報もあるっ」
「もしかしたら、KMR47が壊滅したのは、この新長官の手腕によるものかもしれないっ……」
そして、KMR47を倒したという[アースジャスティス]とは、鎌倉市と逗子市に拠点を持つとされる正義の組織だ。
彼らは最近、正義の組織とは思えない、かなり強引な戦い方をして、KMR47を追いつめているとは、聞いていた。
が、まさか本当に壊滅させてしまうとは夢にも思わなかった。
カラー1将軍の様子から推測すると、BIP上層部も、まったく予期していなかったことなのだろう。
「……そしてっ、鎌倉が正義の手に落ちたとなれば、奴らアースジャスティスの標的が、この江ノ島に移る事も十分に考えられるっ」
「よって、不測の事態に備えて一同っ、気を引き締めて事にあたるようにっ! シマァーーーー!!!」
「シマァーーーー!!!」
動揺しつつも声を合わせて返事をする。
すると……
グオオォォォン~~~~……グオオォォォン~~~~……グオオォォォン~~~~……
タイミングを見計らったように、和風とも洋風ともつかない重厚な鐘の音が、紫宸殿(謁見の間)に鳴り響いた。
いよいよ、総統閣下の登場だ。
僕らは全員、もちろん、怪人もカラー1将軍も片膝をついて、玉座に向かって頭を垂れる。
片膝をつきながら、僕はソッと上目づかいで壇上を見た。
謁見の間の天井が大きく開き、なにもない空中を、腰掛に座った状態の総統閣下が、ゆっくりと音もなく下降してくる。
艶やかで神秘的な紫色の髪。
豪華な飾りの付いたマスク。
雅やかな紫糸と白糸、それに豪奢な金糸の刺繍が入ったマントを羽織っている。
マントの下は、軍の礼服のような型と飾りの黒服を着ている。
総統閣下は、スラリとした足を組んで、深く腰を下ろしておられた。
顔はマスクでうかがい知れないが、おそらく、まだ若い女性だと、僕は推測している。
だが、それは常識的な物差しで測ったもの。
こと、総統閣下には、通用しない推測なのかもしれない。
なぜなら、こうしている今も、総統閣下は薄っすらと視認出来る、黒紫色の妖しげなオーラを全身にまとっているからだ。
それだけでもこの方が、人とは別の、何か高貴な生き物であることを、僕らに知らしめている。
グオオォォォン~~~~……
腰掛が玉座にしっかりと収まると、再度、重厚な鐘の音が鳴り響いた。
ここで[面を上げろ]などとの声は、決してかからない。
僕らは頭を垂れたままで、総統閣下のお言葉を拝聴しなければならないのだ。
「………………カラー1将軍から聞いたように、昨晩、この湘南周辺の悪と正のパワーバランスは大きく崩れた」
「これにより、この地域の情勢は、一気に混沌と化す可能性が高まった……」
総統閣下は座ったまま、朗々(ろうろう)と語り出す。
「……湘南防衛機構サンシャイン、アースジャスティス、さらに周辺に存在する有象無象の正と悪の組織……」
「そしておそらくKMR47の残党も、なにかしらの動きを見せるでしょう……」
スッと立ち上がると、ゆっくりと前へ歩き出す。
一歩進むごとに、身にまとった黒紫色のオーラが、焔のように揺らめく。
「どの組織もこの状況を好機と考え、中には我がBIPと江の島を侵そうとする、不届き者も現れるやもしれない」
紫のオーラが徐々に膨らんでいく……
「我が忠実なる戦士達よっ、あえて貴様らに問おうっ! これは危機なのかっ!」
総統閣下が壇上の先端に立ち、叫ぶ。
「否! 危機ではないっ! 有象無象の存在が、恥知らずにも寄り集まるのなら、これこそ我らの好機っ!」
「急造の、か弱き輪など笑止っ! 我らに、[まとめて粉砕して欲しい]と願い出ているようなものだっ!」
ぶわっと紫色のオーラが広がり、ビリビリと、息がつまるほどの強烈な波動が、こちらまで伝わってきた。
上段のカラー1将軍も、中段の三怪人も、下段の戦闘員も、皆、身を縮ませるように、さらに深く首を垂れた。
そう、この圧倒的な存在感こそが、総統閣下だ。
総統閣下が戦闘に出ることはない。
だが、この存在感、このオーラを直接体で感じれば、この方が他の何者も超越した強者であることが確信出来る。
この方がいる限り、総統閣下がいる限り、BIPは不滅なのだ。
「だが我が戦士達よっ、忘れるなっ! 貴様ら一人一人が力を合わせっ、果敢に戦ってこそっ、この状況は好機となるっ」
なおも総統閣下は、力強く演説する。
「欲しいものはっ、座視していては、決して手には入らないっ」
「価値のあるものは誰もが欲する故っ、必ず他者の手の内にあるのだっ」
「論語の[義を見て為さざるは勇なきこと]のように、我欲を正義にすりかえて自己弁護をするなっ」
「これは自らの欲望だと自覚して、悪事を働けっ」
「欲望のままに他人から奪い取れっ」
「それこそ、我ら悪の組織の矜持であるっ」
総統閣下がそこまで演説すると、上段で首を垂れていたカラー1将軍が、静かに立ち上がった。
「突然だが、最近取り入れたクトゥルフ風の唱和だが、あらため直して、今後は行わない事にした」
カラー1将軍が上段から中段へ降りながら、そう告げた。
「総員っ、面を上げて起立っ!」
潮溜まり怪人イソガニンさんも立ち上がり、号令をかける。
ざざざざざざざ……
全員が無言で立ち上がり、直立不動の姿勢を取る。
その間に、カラー1将軍が中段の中央に立つ。
そして力強く、声を張り上げた。
「総統閣下の忠実なる戦士達よっ、欲望のままに悪事を働く悪鬼となれっ!」
「ただ欲望のために戦い、欲した物を勝ち取れっ! 」
「己の手が汚れるのは、己の汚れた心が望んだ結果だと知れっ!!」
「シマーーーー!!」
カラー1将軍が叫び、拳を突き上げる。
その瞬間、上段に立つ総統閣下の黒紫色のオーラが最大限まで膨らみ、波動が暴風の如く、僕らの体に叩きつけられた。
「「「シマぁぁーーーー!!」」」
「「「シマぁぁぁーーーー!!」」」
「「「シマぁぁぁぁーーーー!!」」」
僕たちはそのオーラに圧倒されつつも、必死に声を張り上げて、連呼し続けた……
続きを読みたいと思った方はブクマを、
面白いと思った方は星評価を、
忘れずに押してくださいね。
押すと、作者が再起動します。




