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新江の島縁起〜なぜかイタリア出身の怪人として戦うことになった僕は、魔法少女に恋をした〜  作者: 綿野草空希


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2.4 遥か国神の島4

 そんな事を考えていると、中段に、先日戦闘で負けた[岩屋怪人ヨサノン]さんが、包帯を巻いた痛々しい姿で入って来た。


 [岩屋怪人ヨサノン]さんは女怪人で、岩屋内に歌碑がある与謝野晶子をイメージした怪人なのだそうだ。


 乱れ髪に、なぜか着物の白装束なので、与謝野晶子というより四谷怪談のお岩さんみたいだ。


 針の髪を飛ばす[乱れ髪攻撃]は中々強力なのだが、岩屋とお岩と乱れ髪と、与謝野がコンガラがっている感が強い残念な怪人さんだ。


 先日の戦闘では、なぜか最終的に[うらめしや~〜]と、与謝野とは全く関係ないことを言い出し、こちらもなぜか涙声になったシャイニング・ブルーが、強烈な蹴りを放ってヨサノンさんは敗北したのだ。


 続けて[潮溜り怪人イソガニン]さんも中段に現れた。


 イソガニンさんは確か怪人歴が7、8年位の中堅怪人で、稚児ヶ淵にいる蟹をイメージした怪人だそうだ。


 戦いでは主に潮溜り内に潜み、近付いた魔法少女を奇襲攻撃することを得意としている。


 潮溜りばかりに潜んでいては、ピュア・シャイニングに察知されてしまうので、浅瀬や植え込み、落ち葉の下などと、色々と潜む場所を変えて奇襲を行っている。


 だが、近年はちょっと、潜む場所のネタが尽きているようだ。


 一年弱前、僕が初めて戦闘員として見た戦闘が、イソガニンさんだった。


 アルバイト戦闘員の僕は、かなり遠くでその戦闘を見ていたのだが、なんともぐだぐたな事に、イソガニンさんが潜む場所に選んだのは、ヨットハーバー近くに路上駐車された車(事前にBIPが用意したもの)のトランクだったのだ。


 それじゃあもう、潮溜りも、磯蟹も、関係ないじゃんね。


 しかも、イソガニンさんが車のトランクを開けて奇襲する前に、シャイニング・ブルーに発見されて、蛸殴りにされる体たらく。


 ……蟹なのに……


 シャイニング・ブルーに発見された理由は、ヨットハーバー付近に路上駐車された車のトランクに潜むのが、五回も連続で続いたからだそうだ。


 そりゃあ、毎回同じ場所に潜んでいたらバレるよね。


 ……以来、ネタ切れの奇襲攻撃は諦めて、正面から戦いを挑むことが増えているが、結局、いつも蛸殴りにされている。


 ……蟹なのにね……


 (四度目までは奇襲が成功していたって聞いた時は、思わずピュア・シャイニングの方を心配してしまったなぁ……)

 今となっては懐かしい思い出だ。


 最後に中段に入って来たのは[干潟怪人ムツゴロン]さんだ。


 なぜ、江ノ島とは関係ない、有明海のムツゴロウを模しているのかは謎だ。


 こちらも海水浴場の砂浜に潜み、近付いた所を奇襲攻撃するという、二番煎じもいいところの怪人さんだ。


 名前から戦い方までグダグタ感が強いが、本人もそれを相当気にしているそうなので、指摘するのはタブーとなっている。


 他に何人(何体)も怪人はいるが、現在メインで戦闘をしているのは、この(頼りない)お三方だ。


 (しかし最後に[ン]がつく怪人が多いよね……何でだろ?)


 (総統閣下の趣味だったりしてね……怪人ムラサキウニンさん、なんてのもいるし……)


 そんな馬鹿なことを考えていると、女幹部の[Color1(カラーワン)将軍]がハイヒールのブーツを鳴らして、謁見の間の上段に現れた。


 とたんに、戦闘員はおろか、怪人さんたちまで緊張して、身を正し直立不動となる。


 [Color1(カラーワン)将軍]……この方はBIPの大幹部で、総統閣下の補佐役、ナンバー2の地位にあるお方だ。


 総統閣下以外には敵味方関係なく、冷徹にして無慈悲、誰からも畏怖いふされる大将軍だ。


 幹部用のアイマスクを付けており、顔は分からないが、恐らく30代中頃の女性だと思われる。


 豊満なナイスバディに、ちょっと露出度高めの、黒紫色のレザーとエナメルを使ったボンデージ・ファッションを、常に着用している。


 この方をなにかに例えると、某ドロ◯ジョ様といった感じか……


 ([朱を奪う紫]に出てくる女将軍[バイオレット]にも似ているかなぁ?)


 カツンッ! カツンッ! カツンッ! と靴音を鳴らし、カラー1将軍が壇上から階段を下りて、下段に整列する僕らの方へと、歩いて来た。


 「……ゴクリ……」

 隣に立つ戦闘員姿の一宮君が、緊張で唾を飲み込んだ。


 カラー1将軍が僕らの目前を歩き、戦闘員一人ひとりをじっくりと、舐りつけるように見て行く……


 と、一宮君の隣に立つ椎名君の前で、ピタリと止まった。


 「中肉中背の貴様……マフラーが緩んでいるじゃないかっ!」

 カラー1将軍のレザーグローブに包まれた手が、ガッと椎名君のマフラーを掴む。


 「しっかりと締めろっ!」


ギリギリギリ……

 カラー1将軍がマフラーごと、椎名君の首をギリギリと締め上げていく。


 「おぐっ!? うっ……」

 アイマスクで表情は見えないが、椎名君は相当に苦しいのだろう、体をビクっビクっと悶えさせている。


 「ふんっ!」

 ある程度締め上げると、カラー1将軍は突然興味を失くしたように鼻で笑い、パッと手を離した。


 「げほっ! ゴホ! ……あっ、ありがとうございましたっ、シッシマァーーーー!!!」

 なぜか嬉しそうな声で、お礼を言う椎名君。


 カラー1将軍が数歩だけ歩き、今度は僕の前で止まった。


 瞬間、フワッと微かな香水の香りが、鼻を掠めた。


 (ああぁ……やっぱりカラー1将軍って、良い匂いがするなぁ……)

 実はコレ、BIP内では有名な話で、カラー1将軍は恐らく、外国ブランドの香水であろう香りを、いつもさせているのだ。


 ただし、かなり控えめにつけているようで、目と鼻の先まで近づかないと分からない。


 「……貴様……なんだそのふざけた体型はっ? 戦闘員としての自覚はあるのかっ!? ああんっ!?」

 カラー1将軍がギロリと僕を睨みつけてくる。


ぐにいぃぃぃ!!


 カラー1将軍が常に腰に装備している得物の、深い瑠璃色の鞭……


 ……乗馬に使うような短い物ではなく[サーカスの猛獣使い]とか[なんとかジョーンズ博士]が使う、先がとても長い鞭だ……


 瑠璃色の鞭、[紺瑠璃のwhipウイッブ]をホルダーから引き抜くと、その柄を僕のお腹に突き立てて、グリグリと捏ねくった。


 戦闘員タイツはゆっくりとした力では硬化しないので、お腹に激痛が走る。


 「いでででっ!? あっ、ありがとうございますっ、シシシッシマァーーーー!!」

 なぜか嬉しそうな声で、お礼を言ってしまう僕。


 「ふんっ!」

 カラー1将軍はまた興味を失くしたように鼻で笑うと、パッと鞭を収めた。


 そのまま戦闘員の列の前に戻る。


 「貴様ら弛んでいるぞっ! もっと緊張感を持てっ!」

 よく通る声で叱られる。


 「弛んでいる者は全員、私が貴様らの粗末な物を引っこ抜いて[ワイルドだろう?]と笑ってやるっ!  分かったかっ!!」


 サディスティクな声と古いネタに、戦闘員が震え上がり内股になる。


 女性の戦闘員さえ震え上がって、内股になった。


 「ありがとうございますっ、シマァーーーー!!」

 なぜか全員が、嬉しそうにお礼を言う。


 一つ断っておくが、僕らは変態の集団ではない……多分。


 あと、引っこ抜かれた去勢済み男子は、ワイルドとはほど遠いとも思った。


 戦闘員の内股が引き締まると、カラー1将軍は満足されたようで、壇上に戻る。


 ……階段を上る後姿が、ちょっと色っぽかった……


 カラー1将軍はまだ空席の総統閣下の玉座の横の、いつもの立ち位置に戻る。


そして、怪人、戦闘員をゆっくりと見渡した後、よく通る声で話し始めた。

 「重要な話しがあるっ、よく聞けっ!」


 間を置き、もう一度、一同を睨みつけてから、再度話す。


 「昨晩にあの[KMR47]が壊滅したとの、驚くべき情報が、本日届いたっ!」


 瞬間、一同、息を呑む。


 「当然、[KMR47]を壊滅させたのは[アースジャスティス]とのことだっ!……」


ざわっ……


カラー1将軍の突然の発表に、一同、騒然としてざわめく。

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