27.9 潮風のエトランゼ9 〜夏音Side〜
さくさく……ぽりぽり……ずずず……
……鳩サブレーって、イチゴ牛乳と合うなぁ……
サクサクサク
「……美味い。……けどさ、やっぱり白浪って変な奴だよ。アースジャスティスにB.I.P.との戦闘を任せるのは、やっぱり不安だ」
あたしは呟く。
和菓子屋への手土産に鳩サブレーを持って来たことや、酷い作戦やあたしへの暴言だけじゃない。
白浪の一挙手一投足が、何かあたしに、強い警戒感を与えるのだ。
「目的のためなら手段を選ばないってゆーか、何するか分からないってゆーか……」
「さすがに無関係の一般人は巻き込まないだろうけど、それこそ戦闘を見に来たB.I.P.の協力会員に、手を出しそうじゃないか?」
あたしは、それは不可だ。
いくらB.I.P.を応援してるといっても、あたしはそれを、B.I.P.と同じ敵とは考えられない。
悪を倒すためなら、正義のためなら、どんな手段でも許される――
そう考えるのは、何だか凄く、怖いことのような気がするのだ。
「……いやいや、さすがにそれは無いじゃろう。そこまですると、ヒーロー協会から問題視されるからのぅ。それは、しないはずじゃ……」
じっちゃんは口では否定したが、その表情には、微かに不安の色が広がっていた。
ぽつり
「――じゃが確かに、弁天様を泣かせる訳にはいかん――何より可愛い孫娘の身が心配じゃ――」
じっちゃんは小さな声で呟いたが、よく聞こえなかった。
じっ
「………………」
そして、鳩サブレーを食べている桜花とあたしを、静かに見つめた。
「うんっ、そうじゃなっ! やはり遥君に湘南防衛機構サンシャインを任すのは止めじゃ。わしはまだまだ、現役でやれるじゃろうっ」
ニカッ
「よしっ! 可愛い三人の孫娘のためにも、もう暫くは頑張るかのうっ。はっはっはっはっはっ」
じっちゃんは、笑顔を浮かべて、元気に笑った。
「うん? 三人って何だよ? 現役なんて言っても、やっぱり耄碌してんじゃないのか?」
あたしは間違いに気がついて、突っ込む。
きょとん
桜花も首を傾げて、じっちゃんを見てる。
「はっはっはっはっはっ! はっはっはっはっはっ!」
しかし、じっちゃんは言い直しも否定もせずに、笑っているだけだった。
(何だ? 言い間違えじゃないのか?)
普通に考えれば、孫は桜花一人のはずだ。
(一人は当然、桜花だろ。で、もう一人は多分、血は繋がってないけど昔から孫のように接してきた、あたしだろ?)
――じゃあ、もう一人の孫娘って、いったい誰だ?
もしかして、撫子ちゃんのことかな?
脳内のクマが真剣に、自分自身を指差す。
いや、あんたは一人じゃなくて、一頭でしょ?
「桜花よっ、すまんが明日のお夕飯は、桜花特製[ニンニクたっぷりのペペロンチーノ]にしてくれっ。一つアレで、スタミナをつけたいのじゃっ!」
じっちゃんが、いいねっ! と親指を立てながら、桜花に注文する。
「ふふっ、分かった。おじいちゃんはパスタが大好物だもんね。張り切って作るから一杯食べてねっ」
桜花も顔を綻ばして、いいねっ! と親指を立てた。
「夏音ちゃんも、明日おいでよ。パスタ、好きだよね?」
「まあ、ナポリタンじゃなきゃ、何でも良いよ」
今のあたしには、ナポリタンは大NGだ。
昨日の変態怪人を思い出すし、何より由比里の好物だから……
「夏坊、もう一枚、鳩サブレーは、どうだ?」
「サンキューおっちゃん」
おっちゃんから、鳩サブレーを受け取った……
……その後あたしは、頭から食べるか、尾っぽから食べるかで、脳内のクマと口論になった。
それと、イチゴ牛乳と鳩サブレーの組み合わせは、とても気に入った。
[鳩サブレーイチゴ牛乳味]とか、作ってくれないかなぁ……
第27章「湘南防衛機構サンシャイン」終了
第28章「リア充ノリが分かんない僕」(全9話)は是陽Sideになります。




