25.4 シュラバ☆ダ☆バンバ4 SHULABA-DA-BAMBA4
ズドドンッ!
「がはっごぶっ!?!?」
フッ……
磐田君の呻き声が上から聞こえて、髪の毛を掴む力が、緩んだ。
「おんりゃあああぁぁぁーーーー!!」
と、同時に、なぜか気合の入った青浜さんの声が、耳に届いた。
(なんだっ!? なにが起きるっ!?)
ババッ!
慌てて偽拳を引っ込め、弾かれるように頭を上げて、磐田君の手を振り解く。
タタンッ!!
間髪入れずに、後ろに飛び退き、状況を確認する。
すると、お腹を手で押さえて、腰を丸めてヨロめく磐田君の背後に、青浜さんの上履きの裏が迫っていくのが見えた。
(あれ? このロケットみたいな飛び蹴り、前にもどこかで見たような……)
なんのデジャビュ?
「おらあっ!!」
どががんっ!
青浜さんの飛び蹴りが、見事に磐田君の背中にヒットする。
(あっ! 今、スカートの中の、白いおパンツがチラっとっ!)
(南無江の島大弁財天っ!!)
咄嗟に、動体視力が上がったことを感謝し、脳内で祈りを奉げる。
「ぶんべらぼっ!?」
ドシュンーー……
飛び蹴りを喰らった旧式量産型ヤンキーが、奇声を上げて、前方に弾かれて飛ぶ。
当然、その前方には僕がいる。
つまり、白目を剥いた旧式量産型が、僕に向かって飛び込んで来る形となった。
でろりんっ
怪人化で動体視力が上がった僕の目は、奇妙な顔をした旧式量産型が、大量の鼻水を垂らしているのを、しっかりと捕らえていた。
「汚ったねっ!」
ビシンッッッ!
僕は横に避けながら、思わず顎に向かって、力の入った拳を振り抜いてしまった。
「かふぅ……」
カウンター気味にパンチを喰らった磐田君が、ヨチヨチと踏鞴を踏んで、停止する。
(うわわっ! 手に鼻水ついてないよねっ!?)
慌てて、拳を確認する。
(ほっ。セーーーーフ……)
見ると、鼻水はついていなかった。
(南無江の島大弁財天)
一安心して、江の島大弁財天に祈りを奉げる。
カクン……
磐田君は膝から砕け落ち、体が前に傾く。
ごちんっ!
そのまま受身も取らずに、顔面を渡り廊下のコンクリートに打ちつけて、動かなくなった。
「Yes!! 上手くいったなっ!」
青浜さんの明るい声が耳に入り、そちらに目を向ける。
「へへへっ! あたしら、ナイスコンビネーションだったなっ!」
目が合った青浜さんは笑って、悪戯小僧のように鼻の下を擦った。
(まったく、この人は……)
僕は苦笑いを浮かべる。
おそらく、僕を助けようと、飛び蹴りを放ったのだろう。
が、アレでは僕諸共、飛び蹴りの餌食になる所だった。
「顔、膝蹴りを喰らったように見えたけど……何か平気そうだなっ!」
青浜さんがいいねっ! と親指を立てた。
「うん、ずっと手でガードしてたからねっ。無傷だよっ!」
僕もいいねっ! と親指を立て返す。
無茶苦茶なやり方だが、それでも体を張って助けに来てくれたことが、とても嬉しかった。
(あぁ、可愛いなぁ……)
健康的に日焼けした青浜さんの笑顔は、雨天曇天の下でも、キラキラと輝いて見えた。
「あー、でもスマホ、やられちゃったなぁ。あたしがもう少し早く決断してれば、こんな……」
タタタタッ
「由比里くんっ!」
ドスンッ
「ぶんべらぼっ!?」
声と共に、横から強い衝撃を受けて、僕は珍妙な奇声を上げた。
見ると、なぜか芹園さんが、僕にタックル攻撃をしかけてきたようだ。
「わたし、怖かったのっ! 凄く怖かったのっ!」
僕の胸に顔を埋めて、泣きながら訴えてきた。
どうもタックルではなく、抱きついて来ただけのようだ。
(ふわわぁあぁぁ~~~……)
芹園さんは、脳が蕩けそうなほど、良い香りがした。
(なんじゃ、こりゃぁぁ~~……)
芹園さんの体は華奢で、飴細工のように細いのに、どこも彼処も、柔らかいのだ。
「由比里くんっ、ありがとうっ……由比里くん……」
僕の胸板に、美顔を擦りつけてくる。
ポヨヨョン……ポヨヨョン……
芹園さんが動く度に、二つの柔らかいモノが体に当たってくる。
「おっ、おぱぁいぃ~~……」
(ほへぇぇぇえぇぇ~、こりゃあ、旧式量産型ヤンキーが発情するはずだ……)
正直僕も、脳髄が溶けて、耳から垂れ落ちそうです……
「むっ……」
僕がおっぱいで蕩けていると、側にいた青浜さんが、一転して表情を無くした。
「べえぇぇぇぇ!!」
そして僕に向かって、思いっきり可愛い舌を出すと、クルッと踵を返した。
ダダダダダダダ……
そして呆気に取られている僕をよそに、なぜかドア方向ではなく、雨が降りしきる外に向かって、駆け出した。
ダダッ・ぴょん・ぴょん
上履きのまま、軽やかに水たまりを飛び越える。
ダダッ・パシャン! パシャン! パシャン! パシャ……
青浜さんは、折り畳み傘を手に握ったまま、雨に濡れるあじさいの横を走って行ってしまう。
「あっ、青浜さんっ! 待っ……」
慌てて呼び止めるが、その背中は、すぐに見えなくなってしまった……
「由比里くん……わたし怖かったの……お願い、側にいて……」
ギュュゥ……
芹園さんが泣きながら、しがみついてくる。
「あ……うん……」
さすがに、泣いている芹園さんを突き放して、青浜さんを追いかける訳にもいかない。
(この芹園さんの感触は、男を魅了する力があるけれど、僕にとっては青浜さんの輝く笑顔の方が、何倍も魅力的だぞっ。うんっ)
僕は、肉欲に流されそうになる心を、青浜さんの笑顔を思い出すことで押し留めて、この状態のまま、ジッと芹園さんが泣き止むのを、待つしかなかった……
第25章「あじさい咲く渡り廊下」
終了まで、あと1話
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