表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣の部屋に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする  作者: 夕姫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/42

40. たまには先手必勝というモチベーションでいく

40. たまには先手必勝というモチベーションでいく




 今日はついに7月31日。白石の誕生日。今まで、女の子の誕生日を意識したことなんてなかった。ましてや、プレゼントをあげようなんて。誰とも付き合ったことがないオレにとって、女の子にプレゼントを買うというのは、想像しただけで難易度が高すぎるイベントだ。何をあげたら喜ぶのか分からないし、そもそもどうやって選べばいいのかも分からない。一人で買いに行くなんて無理だ。


 だから手っ取り早い方法を選んだ。本人に直接聞いて一緒に買いに行く。それが一番間違いない。いつもの白石が部屋に来る集合時間よりオレは少し早めに部屋を出た。そして、隣の白石の部屋のインターホンを鳴らす。ピンポーン、ピンポーン、と、いつもとは逆の行動になんだか少し緊張する。


 しばらくして扉が開いた。そこに立っていた白石は目を丸くしている。


「えっ!?先輩!?どうしたんですか、私の部屋に来るなんて!初じゃないですか?」


 白石は、驚きを隠せない様子でそう言った。確かにオレが白石の部屋に来たのは初めてかもしれない。いつもはこいつがオレの部屋に来るばかりだからだ。その、予想外の訪問者を見た顔がなんだか新鮮だった。


「白石。出掛けるぞ。着替えろ」


 オレは、自分の照れ臭さや緊張を隠すように、少しぶっきらぼうにそう言った。行き先は言わない。ただ出かける、とだけ告げる。


「え?出掛ける?」


 白石はまだ状況を掴めていないようだ。きょとんとした顔で、オレを見上げる。


「着替えたらオレの部屋にこい。じゃあな」


 オレはそれだけ言うと、白石の返事を待たずにすぐに部屋を出た。これ以上、白石の驚いた顔を見ているのも気恥ずかしいし、あれこれ聞かれるのも面倒だ。


 自分の部屋に戻り、しばらくソファーに座って待つ。心臓が少しバクバクしている。自分で提案したことなのに妙に落ち着かない。


 数分後、オレの部屋のチャイムが鳴った。扉を開けると、そこに立っていたのは着替えた白石だった。今日の白石は、夏らしく、白を基調としたふんわりとしたワンピースを着ている。いつもと雰囲気が違うが、それがとてもよく似合っていて可愛い。


「せ~んぱい!どうしたんですか急に出掛けようなんて!」


 白石は部屋に入るなり、興奮した様子でそう言った。瞳はキラキラしていて好奇心に満ちている。


「あー……いや、そのお前、今日誕生日だろ?」


 オレは少し口ごもりながら本題を切り出した。わざわざ出かけようと思った理由。それはこいつの誕生日だからだ。そして、なぜ一緒に買いに行くのか正直な理由を続けた。


「だから……デートしてやろうかと思ってな。 正直、オレには女の子の誕生日プレゼントを1人で買うのには難易度が高すぎる。」


 デートしてやろうか、なんて、柄にもないことを言ってしまった。自分で言って自分で気恥ずかしくなる。だが、プレゼントを一人で選べないというのは紛れもない本音だ。


 白石はオレの言葉を聞くと、一瞬固まった。そして、次の瞬間、その顔は今まで見たこともないような最高の笑顔になった。


「誕生日……覚えててくれたんですね。 すごく嬉しいです! いっぱいいっぱいデートしましょう!わぁ~楽しみです!」


 白石は心から嬉しそうにそう言った。その曇りのない純粋な喜びの笑顔を見ていると、なんだかこっちまで幸せになるような気がした。面倒だと思っていた誕生日デートも、白石がこんなにも喜んでくれるなら悪い気はしない。


 とりあえずオレたちは電車に乗り、隣町まで移動した。隣町には駅前に大きなショッピングモールがある。そこで買い物をすることにしたのだ。電車の中では、他愛もない話をしながら過ごした。隣町の駅に着き、ショッピングモールへ向かって歩いていると、白石が少し遠慮がちに言った。


「あの先輩。 ……手を繋いでください」


「は?嫌だよ」


「私の誕生日なので甘えていいですよね?それに隣町なら誰かに見られる心配も少ないじゃないですか?私は別に恥ずかしくないですし!」


 白石は、誕生日という特権を最大限に利用しようとする。「私は別に恥ずかしくないですし」と、自分は平気だという態度を見せる。その、私は平気ですが何か?とでもいうような顔は少しウザい。


 でも……誕生日だからな……


「……。 今日だけだぞ!ほら」


 しばらく躊躇したが、結局、白石の押しに負けた。誕生日だし、隣町だし、まあ今日だけならいいか。そう自分に言い聞かせて白石に手を差し出した。


「わぁ!先輩優しい!」


 白石は、パッと顔を輝かせ、オレの手に自分の手を重ねてきた。繋いだ手から伝わる体温に、なんだか急に恥ずかしくなってきた。周りの人が見ているような気がして落ち着かない。このまま無言で歩くのは気まずい。何か話題を探さなければ。


「そ、そういえば白石の誕生日プレゼント買いたいんだけど何欲しいんだ?」


「んー、なんでも嬉しいですよ!先輩がプレゼントしてくれたものなら!あっ、でも、普段使い出来るものとか嬉しいかも。 一生大事にしますし!」


 白石は、嬉しそうにそう答えた。具体的なものは言わない。でも、先輩がくれたものなら何でも。普段使いできるものがいいと。そして一生大事にする、と。その言葉は素直に嬉しかった。だが同時に具体的なヒントにならないという点で困った。


 なんかそれはそれで困るんだが……何をあげれば、普段使いできて、しかも「一生大事にする」ほどのものになるんだ? オレのプレゼント選びの難易度は全く下がっていなかった。


 オレは、白石と手を繋いだまま、ショッピングモールの自動ドアをくぐった。涼しい空気と共に店内の賑やかな喧騒が耳に届く。さて、この広いモールの中から白石が気に入るもの、そしてオレがプレゼントとして渡せるものをどうやって見つけようか。


 白石と手を繋いで歩くという、予想外の状況に戸惑いながらも誕生日を祝うために、オレは白石とともにウインドウショッピングを楽しみながら、白石の気に入ったものを探すことにしたのだった。この、手探りの誕生日デートはまだ始まったばかりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ