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隣の部屋に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする  作者: 夕姫


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35. 白石夏帆という制御不能の暴走機関車がオレの近くを走っている

35. 白石夏帆という制御不能の暴走機関車がオレの近くを走っている




 うだるような暑さの日が続いている。夏休みが始まったばかりでまだ数日しか経っていない。オレの部屋はエアコンのおかげで快適だが、窓の外からは真夏の容赦ない陽射しが降り注いでいるのが見える。


 そして、いつものように白石が部屋にいる。明後日は、白石と二人でプールに行くことになっている。夏休みの予定を立てた時に、白石が強引にねじ込んできた予定の一つだ。正直、気が重いが約束してしまった以上行くしかない。


 白石はプールが楽しみなのか、いつも以上にソワソワしているように見える。そして、またしてもオレに面倒な質問を投げかけてきた。


「ねぇねぇ先輩?私って、どんな水着が似合うと思いますか?」


 白石は、水着特集のページでも見ているのかスマホをいじりながらそう言った。その、当たり前のように意見を求めてくる態度に少しうんざりする。


「そんなことオレに聞くなよ……自分で好きなの着たらいいだろ?」


 オレは、興味なさそうにそう答えた。人に水着の似合い方なんて聞かれても困る。ましてや、お前との関係はそういうことを聞かれたり答えたりするような関係じゃないだろう。


「むぅ……こういう悩んでいる時は、彼氏の意見が欲しいじゃないですか!」


「その彼氏はどこにいるんだろうな?オレではないから間違いなく」


 オレは、事実を淡々と述べた。白石は、オレの言葉を聞いても、特に反論せずニヤリと笑った。


「そうだ!じゃあ、先輩!私の水着姿を想像して下さい!」


 そして、さらに無茶な要求をしてきた。想像しろ? なんでオレがお前の水着姿を想像しなきゃならないんだ。


「いや無理だな。お前が水着を着ている姿なんて想像できないし」


 思わず反射的に否定した。想像なんてできるわけないだろう。そしてしたくもない。面倒なことになるだけだ。


「えぇ!?そこは頑張るところですよ!?ほらほら、ちゃんと思い浮かべて下さいよ!」


 白石はオレの言葉を全く受け入れない。それどころか、オレの顔の前にぐいっと自分の顔を近づけてきた。近い近い。顔のすぐそこに白石の顔がある。彼女の息遣いが感じられるほどの距離だ。そしてふわっといい匂いがする。何の匂いだ? シャンプーか、それとも柔軟剤か。鼻腔をくすぐる甘い香りに、なんだか少しだけ意識が遠のきそうだ。


「分かったよ……だから少し離れろ」


 白石のそこまで言われたら想像するしかないような強い圧に負けて、オレは目を瞑った。仕方ない。言われた通り、頭の中で白石の水着姿をイメージしてみる。白石は髪が肩にかかるくらいの長さだから、髪を下ろして、ショートパンツ型の水着も似合いそうだな。ビキニもいいかもしれない。健康的な体型だし、きっと似合うだろう。


 あるいは……露出少なめで髪型をポニーテールにしても似合いそうだ。清楚な感じだな。どちらにせよ、どんなデザインでもなんでも似合いそうな気がする……普通に可愛いしこいつ。想像してみると、意外と簡単にイメージできた。


「どうでした?」


 目を開けると目の前には期待に満ちた、ニコニコ顔の白石がいた。その、全てお見通しだとでもいうような笑顔。その顔やめろウザいから。想像できてしまったことがなんだか負けたみたいで悔しい。そして、可愛いと思ってしまったことも認めたくない。だから黙っておくのが一番だ。


「あー……ダメだな、想像つかないな」


 オレは平静を装ってそう答えた。白石の笑顔から視線を逸らし、わざとらしく天井を見上げる。


「本当ですか?顔赤いですよ先輩?きちんと想像できたんですよね!教えてくださいよ~!」


「うるせぇ。そういうことは自分の力で何とかしろ!男のオレに聞くな!」


「……そうですか。わかりました。……じゃあ、今すぐ下着姿になります。先輩が想像できないみたいなので!水着も下着も一緒ですもんね。 先輩が教えてくれないなら脱ぎますから!」


 白石は、真顔のまま服に手をかけようとする。水着も下着も一緒?どこがだ!全然違うだろうが!マジで意味が分かんねぇぞこいつ!暴走機関車か!?


「おい待てバカ。それは本当にマズイから。 頼むからやめて下さい、お願いします」


 オレは慌てて白石の手を掴み止めようとした。焦りで、声が裏返りそうになった。お願いだからそれだけはやめてくれ。本当に冗談抜きでヤバいことになる。


「じゃあ教えてくださいよ~!」


 白石は、オレの焦った様子を見て勝ちを確信したらしい。下着姿になる、という最悪の事態だけは避けなければならない。そのために多少の犠牲は仕方ない。オレはため息をつきながら観念したように答えた。


「……わかったよ。お前は、どんな水着でも似合うんじゃないか?」


 棒読みのような、投げやりな言葉だったかもしれない。白石はオレの返事を聞くと、真顔だった表情をパッと明るい笑顔に変えた。


 本当に、このくだらないやり取りでこんなにも疲れるなんて。夏休みが始まったばかりだというのに、もうすでに心底疲労困憊だ。白石の予測不能な言動とそれに振り回される自分。そして少しだけ彼女を可愛いと思ってしまう自分との葛藤。この夏は一体どうなることやら。考えただけで、またため息が出た。

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