SS『H』 ※あとがき追記
(=ↀωↀ=)<SS投稿三日目
(=ↀωↀ=)<F、Gときたら……?
□決闘都市ギデオン・<第八闘技場>
ふじのん、霞、イオ。
通称文芸部三人娘は、本拠地の図書室で夏コミのための同人誌を描いていた。
デンドロの中で描いた原稿も、専用アイテムを使って画像データをアウトプットすれば製本できる。三倍時間を利用した執筆環境であり、段々と広まってきている手法だ。
問題は、デンドロ内の誘惑の多さとトラブルの多さであろうか。
実際、作業中の家屋が吹っ飛ぶことも偶にあるらしい。
とはいえ、今の<デス・ピリオド>の本拠地は平和なものだ。
戦争も終わったし、どこぞの<超級>配信者が本拠地を奪いに来たりもしない。
道場破りの類も来ないし、何事もなく作業に集中できる良い環境である。
それゆえ三人は黙々と原稿を描いていたのだが……。
「デンドロはHに厳しすぎるよ!!」
イオの発した発言にふじのんが飲んでいたお茶を噴き出し、動揺した霞の引いていた線は大幅にズレた。
「え!? え? えぇ……?」
「……急に何を言い出すのです、イオ」
普段から外した発言の多い友人だが、今日の発言はいつになく大暴投……というか死球モノである。
「いや、ほら、これ見てよ!」
そう言ってイオが指差したのは、彼女が描いていた原稿だった。
随分と気合を入れながら描いていたのを二人も横目で見ている。
しかし今、そこに絵は見えず……原稿の上にはモザイクが広がっていた。
「……何ですか、これ?」
「描いてる内にモザイク掛けられちゃった!」
デンドロには、未成年プレイヤーに対する視覚年齢制限というものが存在する。
要するに、センシティブなアレコレにモザイクが掛けられるというものだ。
担当のダッチェスが「私は……なぜ……こんな仕事を……」と自らの存在意義を自問自答する案件である。
「これまでも看板などがこうなっているのは見ましたが……」
「はわわ……」
本拠地の所在地は八番街。
この本拠地に出入りするならばどうしてもそういう店は目に入るし、未成年の彼女達ならば扇状的な看板はモザイクとして見えている。
しかしまさか……。
「自分で描いてもダメとは思わなかったね!!」
今回、イオは自分の描いた絵がモザイクになってしまった。
「私と霞の原稿はこうなっていないのであなたの描いたモノがラインを越えてエグかったのでは……?」
「一理ある!」
同い年の三人ともがBL本を描いていたのに一人だけ規制入ったのは、ダッチェスにアウト判定を受けるほど絵と描写が凄かったのかもしれない。
何というか『少女漫画誌に載ってるくらいならいいけど……流石にこれはちょっと……』と言外に言われたようなものである。
「何でそんなに気合い入った物を……モノを描いてしまったんですか?」
「エヴリン工房の新作乙女ゲーに男性主人公で始められる裏技ルートがあってなんかもう凄かったから! 色々刺激されちゃった!」
「「……!」」
ふじのんは「乙女ゲーだからとスルーしていました……不覚……!」と後悔し、霞も「き、気になるから後で買おうかな……」と決意していた。影響を受けた友人が気合を入れすぎてしまうほどのBLがどんなものか、興味を惹かれすぎている。
ともあれ、ラインを越えてしまうと未成年はデンドロ内でHな絵を描けなくなることが判明したので、今後原稿のアレな部分はリアルで描くことになったのだった。
夏コミに間に合うかは今後の頑張り次第である。
◇◆◇
□■皇都ヴァンデルヘイム・<パレス・ノクターン>
「デンドロはHに甘すぎやろ……!」
ある日のこと、<LotJ>の本拠地のバーで、ガンドールがグラス片手に呻いていた。
「急にどうしたぁ」
一緒に飲んでいたドミンゴスは、比較的真面目なこの男が急に何を言い始めたのかと困惑した。
「俺、昨日十八になったやん……」
「ああ、だからこうして酒を飲もうって話になったしなぁ」
イギリスの成人及び飲酒解禁年齢は十八歳である。
その祝いで二人はこうして一緒に酒を飲んでいる。
デンドロなら酒でリアルの健康を崩すこともない。
しかしながら、突然のH発言は『初めての酒だから速攻で悪酔いしたのかぁ?』と心配になった。
「成人したら視覚年齢制限解除されて……このパレスのいかがわしいモン全部見えるようになったんやけど!?」
「良かったじゃあねえかぁ」
ドミンゴスは笑うが、ガンドールはそれどころではなかった。
見えてはいけないものまで見えてしまったのだ。
「いや、こんな場所とか分からへんって!? 性癖どうなっとんのあれとかそれとか!?」
「ここ作った貴族に言うべきだなぁ」
元々は大貴族の退廃趣味のための施設を皇王が接収し、国内の遊戯派の拠点に流用した場所である。
なお、ここを建てた大貴族は内戦で粛清済みだ。
「モザイクの下はセクシー下着ポスターくらいやと思ってたのに……!」
「その辺はまだモザイク掛からねえだろう」
どうやらこのパレスのあちこちには青少年の想像の域を超えた絵が飾られていたらしい。
『どれにショック受けたんだろうなぁ……』とドミンゴスは考えたが、複数候補がある時点でダメかもしれんと考え直した。
「うーむ、今後を考えると内装をリフォームすべきかぁ? ガンドールみたいに気にする青少年もいるかもしれねえし、考えてみればモザイクまみれも教育に悪いなぁ……」
見た目はポストアポカリプスの無法集団やられ役幹部みたいな見た目なのに、発言は良識的なドミンゴスだった。
なお、内装が放置されていたのは、前オーナーのカタがインテリアに全く興味なかったからである。
むしろ憑いている子の方が『住むところ変えた方が良くないかな……』とか思っていた。
「むしろ何で今までしてへんかったんや!?」
「大人になるとそういうのでドキドキも興奮もしづらくなるし、ゲームの背景を一々気にもしねえからなぁ……」
※個人差があります。
「大人になるって悲しいことなんか……?」
「とりあえず少年漫画の乳首の有無で興奮はしなくなるぞ」
「嘘やろ……!?」
※個人差があります。
「あとまぁ、成人したからセックスできるようになるが、一つ注意しておくぞぉ」
「セッ……!?」
ガンドールからするとまだ口に出すのに躊躇いすらあるのか狼狽している。相棒がドラゴンカーセッ◯ス扱いされることにはツッコめるが、自分自身に関してはダメだった。
しかし、ドミンゴスはそんなガンドールに構わず話を続ける。
「未成年の<マスター>に性的に手を出そうとするとペナルティ警告出て、アバターが一定時間動かなくなる。動かそうって身体への指令が完全に遮断される感じだなぁ」
視覚年齢制限がダッチェスによる未成年保護なら、そちらはアリスによる保護だ。
それを破ろうとすると一定時間アバターが動かなくなる仕様になっている。
「そうなんか……え? 未成年とやろうとしたん?」
ガンドールはちょっと引いた。
「いや、前にその仕組みを悪用した奴がいてなぁ……」
「悪用?」
「大人の美女アバターだけど中身は子供で、誘惑されて引っかかった奴を身包み剥いでからPKするタチの悪い奴だった……」
「こわぁ……」
普通にPKされてもランダムドロップだが、動けなくされてから《スティール》や《強奪》を使われ続けるとそういうことになる。
その状況になったら自害の方がマシまであった。
「カルディナで遭遇したから遠征するときは気をつけなぁ……」
「気をつけ……いやいやいやいや! そもそもデンドロでセッ……とかせえへんし……!」
ガンドールことリロイ・マクラウド。
リアルでは不良少年を気取りつつも、根っこは真面目な英国紳士である。
何なら『結婚までそういうことしない方がいいんじゃない……?』と思うくらいには奥手だった。
「そうかぁ? 何なら酒のついでに娼館でも奢ろうかと思ったがなぁ」
「……い、要らへんわ!」
そうしてドミンゴスの誘いを断り、その日は酒だけ飲んでログアウトした。
◇◆
なお、ログアウトした後に、ちょっとだけ後悔した。
ついていけない性癖には引くし、真面目だけど、それはそれとしてHなことに興味はある青少年だった。
To be continued
(=ↀωↀ=)<王国と皇国のいかがわしい場所を本拠地にしてるクランの話
( ꒪|勅|꒪)<言い方ってもんがあるだロ
○未成年ペナルティ
(=ↀωↀ=)<この仕様が出てこなかった理由
(=ↀωↀ=)<性的に手を出そうとする<マスター>が作中にほぼいないから
(=ↀωↀ=)<餓鬼道くらいだしあれもティアン相手だったので
(=`ω´=)<まぁ一回うちが誘拐したときに出かけたけどあれは性的接触やあらへんし……
(=ↀωↀ=)<ぶっちゃけ展開がギャグになるからボツになっただけでグレーでしたよ?
(=`ω´=)<そんなー
追記:
(=ↀωↀ=)<成人年齢の話が感想にあったけど
(=ↀωↀ=)<日本で18に引き下げされたのは2022年で
(=ↀωↀ=)<キツネーサンの話書いたのも書籍出したのもそれよりずっと前です
(=ↀωↀ=)<流石にその頃のボツネタについての話でそれ言われてもどうしようもない
(=ↀωↀ=)<執筆開始時は20が成人年齢だったもの
(=ↀωↀ=)<あと感想でタイトル『O』じゃないのと言われても……
(=ↀωↀ=)<アルファベット順ならFGHなので……




