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<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- Another Episode  作者: 海道 左近


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88/88

SS『I』

(=ↀωↀ=)<お盆の連続更新最終日です


(=ↀωↀ=)<アルファベット順の四話目なのでI。というか四話目がこれだから逆算


(=ↀωↀ=)<あと前話のガンドールの年齢だけど


(=ↀωↀ=)<七章第八十七話のあとがきで『リアルはロンドン在住の十七歳』とは書いてます


(=ↀωↀ=)<戦争後にちょっと経って十八になった感じですね


(=ↀωↀ=)<しかしあのあたりの話ってもう五年も前か……

 ■レジェンダリア・<迷いの森>


 それは深い深い森の中。

 邪妖精と呼ばれる部族の住まう<迷いの森>。

 ジョブに愛された妖精達の中でも、残酷さと他者への加虐性ゆえに恐れられる者共の巣窟。

 森に自生するのは、魔力に感染して脳とジョブの器の機能(スキル)の一部を狂わせる毒性花粉を放つ木々。

 この植物に適応した邪妖精でなければ、方向感覚を狂わされて森を彷徨い続けることになる。

 タチの悪いことに……邪妖精が外部の人間を言葉巧みに、あるいは人を使って誘き寄せることもある。

 そうして森に取り込まれた犠牲者の数々は、『部族の領域に侵入した』という名目で邪妖精に捕まり、死ぬまで彼らの玩具として遊ばれる。

 年間で千人を優に超える人を喰らう狂気の大森林。

 それが<迷いの森>である。


 しかし長きにわたり畏怖の対象だったこの森も、内部時間で二年ほど前からは少し毛色が変わっている。

 自由奔放にして邪智暴虐な邪妖精達。

 そんな彼らが、一人の王に傅いたからだ。


 王の名は、ISBN。

 <マスター>にして、<超級>。

 <超級>にして、指名手配犯“知識欲”。

 後に罪人同盟<デザイア>に名を連ねる少女である。


 ◆


 彼女が邪妖精……というより<迷いの森>を支配下に置いた理由は、迎撃がしやすい環境だからだ。

 彼女が()()()()()をしているとどうしても敵を作るので、そうした追手が追いづらい環境に身を置くために<迷いの森>に目をつけた。

 <迷いの森>に適応する方法は集めた知識の中にあり、さらに言えば彼女と彼女の協力者達……<史折(ブックマーク)>にとっては邪妖精も敵ではない。

 結果として<迷いの森>の絶対強者としてISBNは君臨し、彼女は森の中心部に自らの<超級エンブリオ>であるセラエノを置いた。

 それからは、そこを拠点に知見を広げていったのである。


 この<迷いの森>の新たな支配者の誕生は、レジェダリアにとってどうであったか。

 無論、ISBNの活動は邪悪だ。

 彼女のセラエノは他者の脳を本に変え、蔵書に加えていく。

 本の冊数は奪われた命の数。

 ティアンを殺した数で言えば、かの【疫病王】には劣っても<マスター>の中では上位だろう。

 紛れもなく、<マスター>屈指の大悪人である。

 しかしながら、<迷いの森>に関してだけは……彼女は善行をしたとも言える。

 なぜなら奔放な邪妖精達も、ISBNに逆らう恐怖はその身に刻まれていたからだ。

 だからこそ、彼女が『あまり外から人を入れないように』と命じれば、それまでやっていた外部の人間を誘い込む遊びも控えるようになった。

 外部に手を出すのは、ISBNから命じられたときだけだ。

 結果として、邪妖精による他種族への無差別被害は大幅に減じている。

 功罪は罪の方が明確に重いが、それでも<迷いの森>の犠牲者は減ったのだ。

 これについて友人のジーは「不良が良いことすると何割か増しでマシに見える奴ね。ギャップ萌えね」とコメントし、同盟のまとめ役であるOは「それでも邪悪過ぎないか……?」とは言いたくなった。

 しかしながら、不可侵……と言うよりも吸血士族がターゲットにされないためにISBNと同盟を締結したOには、何も言えることがないのだった。

 ともあれ、ISBNという重石によって、<迷いの森>と邪妖精は一定の安定を得ていた。


 ◆


 ……というのが、少し前までの話だった。


 ◆


 それは深い深い森の中……だった。

 邪妖精と呼ばれる部族の住まう<迷いの森>の……成れの果て(・・・・・)

 そこはもう森などではない。

 荒野の中心に、黒く巨大な正六面体……セラエノだけが残っている。

 魔力に感染して生命を惑わす木々の全ては()()で枯死して、レジェンダリア中に恐れられた邪妖精は全滅している。


 この惨状の始まりは、何だったか。

 偶々この近くを訪れた脱獄犯(・・・)三人が、彼らをそうと知らぬ異国の行商人一家と交流を持ったことだったか。

 脱獄犯の中で最も気まぐれで危険な人物が、『キャンディおねえちゃんすっごくきれい』と自らの容姿を行商の娘に褒められ、気を良くしたことも発端だったかもしれない。


 その後、三人と別れた行商人一家は<迷いの森>に入ってしまい、侵入者として邪妖精に殺された。


 外部に手を出さなくとも、侵入者=玩具という邪妖精のルールは変わらない。

 ISBNにしても、追っ手を邪妖精が勝手に迎撃する分には放置していた。

 だからまぁ決定的だったのは、その後だ。

 行商人一家と同じように脱獄犯達も<迷いの森>に足を踏み入れてしまい、邪妖精達に遭遇した。

 そこで邪妖精達が一つ前の玩具について面白そうに語ったことで、気まぐれで危険な人物の……【疫病王】キャンディの機嫌を損ねた。

 さらには「他の命は僕達の玩具さ! 僕達の命だけが最上位で大切なもの! それがこの森の『正しい理』なのさ!」とこの地におけるルールを教えてしまったことで、脱獄犯のリーダー……【犯罪王】ゼクスの()()()に火をつけた。

 そして二人が動いたら、やる気のない最後の一人……ガーベラだって動かざるを得ないのだ。


 結果、<迷いの森>は滅んだ。


 この地の要であった木々は伝染病で死滅し、種族的猛者である邪妖精はスライムと見えざる敵に殺された。

 地の利を以て他者を虐げる強者として君臨した強豪部族といえど、<超級>三人を相手取れば弱者に回る。

 脱獄犯達はそのまま森の中央、邪妖精の首魁たるISBNが座すセラエノに到達し……戦闘を開始した。

 ISBNにしてみれば邪妖精の自爆に近く、『何故こんなことになったのか』と言いたくもなる話だったが、それでも侵入者に対しては応戦した。

 疫病の、不可知の、そして変形の<超級>。

 <超級>の中でも殺傷能力に秀でた三人との戦い。

 絶対有利のセラエノ内であっても油断はできないし、しなかった。

 それでもISBNは互角以上の戦いを繰り広げていたが、彼らは徐々に《全智全脳(セラエノ)》にすら対応し始めた。

 このままでは万が一もありえると、ISBNが判断を下した。

 それゆえ、ISBNは転移魔法で彼らを強制転送(・・・・)することで戦いを強引に終わらせることを選択したのだ。


 そうして、レジェンダリアを放浪していた三人の<超級>は……何処かへと飛ばされたのだった。


 ◆


「全く……リアル(向こう)と同じくらい死ぬかと思ったよ」


 戦いを終えて、ISBNは重く息を吐く。

 言葉にした通り、ここまで死にかけたのはリアル以来だ。

 死んだところでリアルに戻るだけだが……それもある意味では死ぬようなものだ。

 彼女にとっては、リアルでできることとこちらでできることの差がありすぎる。

 リアルでは本を読むのも、インディーズゲーム一つやるのにも脳波操作の集中力が要る。

 まぁ、好きな製作者……エヴリン・シェムハザの新作がリアルでの二年近くの間に何本出ているかは少しだけ気にもなっていたが。

 ともあれ、決着は先延ばしという形でついた。

 いずれまた戦うかもしれないが、少なくとも遠くに飛ばすように意識して魔法を行使したので、レジェンダリアにはいないだろう。


「次やるとしてもケイやペディの手を借りたいね……」


 <史折>の中でも純粋戦闘に秀でた二人だ。

 あの二人と組めば、今回よりは余程勝率も上がるだろう。

 <マスター>の魔法職では五指に入るだろう二人なのだから。

 あるいは、今カルディナで起きているらしい動乱が終わったとき、娑婆に出ている魔法職の“最強”は二人のどちらかになっているかもしれない。


「?」


 ISBNがそんなことを考えていると、不意にセラエノの中に自分以外の気配があることに気づいた。

 脱獄犯達のいなくなった図書館の中に、また誰かがやって来ている。

 ISBNは『また侵入者?』と臨戦態勢に入ったが、そこにいる人物を見てそれを止めた。


「……珍しいじゃないか。というか、直接会うのは初めてだね――『象徴(シュンボルム)』」


 そこにいたのは、正体不明の人物。

 全身をローブで覆い隠し、両手は金属のグローブで隠され、顔は何らかの装備効果によるものか影で隠されている。

 徹底的に正体を伏せられ、名前さえも《看破》できない。

 しかしそれこそは、ISBNと同じく<デザイア>の一角。

 <求誓教団>のトップ……『象徴』と呼ばれる人物だ。


(何をしに来たのかな?)


 同盟相手であり、これまで遠隔会議で顔を合わせたことはあるが、言葉を交わしたこともない。

 大抵は、『象徴』の代わりとして隣に浮かぶ『シーツおばけ』が喋るからだ。


(……そういえばいないね?)


 しかし今、『象徴』の傍に『シーツおばけ』の姿はない。

 『象徴』は一人だけで、このセラエノを訪れている。


「生憎と色々立て込んでいてね。お構いすることもできないのだけど……」


 突然の来訪を訝しむが、不可侵の契約を交わした同盟相手であるため、ISBNは温和に対話しようとして……。



『――【()()()()()()?』

 ――聞こえてきた声音に、リアルにはない背筋を凍らせた。



 それは、ISBNが初めて聞く『象徴』の声だった。

 男性の声だが、問題はそれではない。

 ただ一言の質問文に込められた、感情の重さ。

 恐らくは感情の矛先ではないISBNにすら、ハッキリと伝わってくるほどに……熱く、冷たく、そして黒い。

 矛先に触れただけで、肉が溶け落ちるのではないかと錯覚するほどに。


「……さっきまで戦っていたけれど、飛んでいってしまったよ。多分、もうレジェンダリアにはいないね」


 実際には転移させたのはISBNだが、そこは濁した。

 今の『象徴』の感情の矛先には、掠りたくもないからだ。


『…………そう』


 答えを聞いた『象徴』はそれだけ言うと、何かのアイテムを振ってセラエノから消え去った。

 恐らくは、特定地点への転移を可能とするものだろう。


「…………」


 厄介な来客達が去り、その後に残った光景を見渡しながら、ISBNは決意する。


「よし、引っ越そう」


 もうこんなところに住んでいられるかと、邪妖精の王だった少女は拠を移すことに決めたのだ。


 ◆


 かくして邪妖精部族は滅び、ISBNは行方不明となった。

 この日を境に、レジェンダリア内の勢力図は大きく動くこととなる。


 Episode End

(=ↀωↀ=)<時期的には今本編でやってる天と地の戦いと同じく戦争の頃に起きた話


(=ↀωↀ=)<前からちょこちょこ匂わせていた脱獄組VS【蔵書王】 ISBN


(=ↀωↀ=)<でもこっちの方は話数かけてやる余裕はなさそうなので


(=ↀωↀ=)<概要と結果……というかエピローグ相当の部分をお出しした感じです


(=ↀωↀ=)<出しておかないといけないけど出すタイミングなかった話


( ꒪|勅|꒪)<でもSS四本書くなら大体書けたんじゃねーカ?


(=ↀωↀ=)<ネタと勢いで走っていい短編とちゃんと書く中長編は同じ話数でも同じ労力じゃないから……



○ISBN


(=ↀωↀ=)<セラエノ内での戦闘力は最強格に匹敵する


(=ↀωↀ=)<でも今回はちょっとヤバい気がした段階で三人まとめてバシルーラした

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― 新着の感想 ―
まじでお願いします。いつかでいいのでこの戦闘内容を書いて欲しいです。待ってます。いつも楽しみにしてますこれからも頑張ってください!界獣も楽しみです!
うーんこれマール君か?
強制転移、ねぇ…アクシデントサークルの模倣でしょうか…そういえば、シックスゲートもアクシデントサークル関連だったはず。六門開口、何をもって六門とするのか…国の数、転移門の開発、強制転移。とすると、元々…
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