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<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- Another Episode  作者: 海道 左近


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SS『G』

(=ↀωↀ=)<SS投稿二日目


(=ↀωↀ=)<あと今回の話は二〇四五年のお盆シーズンだけど


(=ↀωↀ=)<前回と次回はまた時系列違うよ

 □■二〇四五年八月某日


 藤原銀河が外出の際に気をつけていることは二つある。

 一つはマスクをつけること。

 もう一つは努めて低い声でしゃべること。

 バーチャル配信者にとって身バレほど怖いものはない。

 買い物するときに、レジでうっかり気づかれた……なんて話は度々聞く。

 配信者の先輩によると、自分の声がコラボキャンペーンで流れているコンビニで買い物するときが一番緊張するという。

 銀河……バーチャル配信者ジーからすれば羨ましくも怖い話だ。

 そんな風に考えながら、買い物カゴに和菓子を入れていく。

 現在はお盆で実家に帰省中。親に頼まれてお仏壇のお供えを買いに来たところだ。

 面倒だけれど、偶の孝行である。


「…………」


 ふと、週刊誌コーナーに置かれたゲーム誌に目を向けると、気になっていたインディーズゲームの名前があった。


(名前だけ出てたエヴリン工房の新作、今回はどんな感じなのかしら)


 エヴリン工房は企業ではなく同人サークルだが、人気のゲーム製作者だ。

 一人でプログラミング、シナリオ、グラフィック、音楽を手掛けているらしく、その上でクオリティも高いのでインディーズでもコアなファンが多い。

 銀河もジーとしての配信でプレイ動画をあげることがある。

 ただ、ジャンルもRPG、シューティング、ADV、シミュレーションなど多岐に渡り、当たり外れと言うよりも、ファンでも作品によって合う合わないの差が大きいのが難点と言えば難点か。

 そして今回はと言えば……。


(今回はアクションなのね。それなら配信でも使えそうね。……前のはセンシティブな乙女ゲーだから無理だったのよね)


 前作も個人としては大変楽しくプレイしたが、配信ではちょっとアウトだった。

 とはいえ、エヴリン工房のゲームは配信受けもいいので、新作もデンドロ側のネタがないときに使わせてもらおうと思った。

 配信や収益化のガイドラインが緩いのも配信者としてはありがたいエヴリン工房である。


「……あら」


 と、そのままページを捲っていると、今度は配信者特集なる記事があった。

 そういえば……と思い出しながら記事を読めば、そこにはジーの切り抜き画像も載っていた。

 『許諾したのはこれだったわね』と思い出す。

 今頃はきっと一人暮らしのマンションの方に見本誌が届いているだろう。


「…………」


 銀河はジッと、もう一人の自分とも言うべきアバターの顔を見る。

 大きな目が可愛らしさとイタズラっぽい印象を与えている顔だ。

 自分でメイキングした顔なので、勿論気に入っている。自分にとっての理想系とも言える顔だ。

 しかし不意に、自分自身の目元に手を伸ばしかけて……それを止めて本も閉じた。

 それから低い声で買い物を済ませて、実家に帰った。


 ◇◆


 帰宅して、母に和菓子を渡してから自室に戻る。

 そこでマスクを外して、鏡を見る。

 姿見に映るのは、鋭い目つきだ。

 女性にしては目力もある。

 悪役令嬢が似合う……というか、女優になったら悪役か女傑以外できそうにない目つきである。

 男性としては好みの分かれるところだろう。



 ただ、それ以外の顔のパーツはアバターであるジーによく似ていた。

 アバター同様、顔のライン自体は可愛いと言えるものだ。



「ハァ……」


 生まれ持った顔が嫌いという訳ではないが、自分が輝くにはちょっとこの目つきは剣呑すぎるし、顔のラインは目つきに対して可愛すぎると銀河は考えている。

 実際、目つきと髪色を変えて作ったアバターであるジーの可愛らしさを見ると、なぜリアルはこうもアンマッチだったのかと溜息が出る。

 兄などは『別に大して違わないじゃないですか』などと言っているが、あの男は根本的に人間を文字情報で見ている節がある。パーツ一つ分の違いをあまり気にしていないのだろう。星座キャラなら調和の重要性をもっと意識すべきだと銀河は思う。

 実際、銀河が芸能の道に踏み込む勇気を持てなかったのは、自らの顔のバランスについてシビアに判断したのが理由だ。

 子供の頃から「銀河ちゃん、目コワッ……」と言われていたせいでもある。


(まぁ、別にいいのだけれど……)


 今は理想形とも言える容姿のジーとして活動し、成功もできている。

 また、これでアバター同様の目つきだった場合、何ならリアルバレのリスクもちょっとあるのがデンドロだ。

 デンドロをリアル視点で遊んでる者がいると、アバターとリアルの顔が似ていたらそこでバレかねない。

 しかし、声を低くし、マスクをつけて、アバターと違う目つきだけ露出していればまずバレない。そういう意味では違って良かったのかもしれない。


(王国の<超級>とか、リアルバレ怖くないのかしら。アホなのかしら)


 先日、東京を歩いていたら見覚えのある顔の黒髪美人を見かけたので一瞬リアルとデンドロのどちらか分からなくて困惑したほどだ。

 十二単でなくても人によっては気づく顔だった。

 宗教トップだからできる荒業なのだろうかと思わないでもなかった。


(本人とアバターのデザインを変えすぎても苦労しそうだけれど。ジュリちゃんはリアルより背の高いアバターを作ったら最初苦労したらしいけれど)


 逆に、妖精サイズのアバターにして苦労してるアホもレジェンダリアでは時折見かける。

 そして自分のクランのサブオーナーは胸を盛っていた。

 クランのオフ会(身バレ厳禁配信者の銀河は欠席)に参加したメンバー曰く、「守森さんの胸はモリモリ偽乳でした……!!」とのこと。

 なお、そのメンバーは後でデストラップに放り込まれて死んだ。


(私も第二形態とか慣れが必要だったものね)


 変身すると身長は倍近く伸びるし、体型も変わる。

 そして目つきはリアルに寄るのだ。何故?

 顔貌に合わせた可愛い目つきのアバターから、リアルの目つきが似合うスタイリッシュ女傑への変身。

 一粒で二度美味しいが、本人としてはリアルのチグハグさを思い出して複雑である。

 リアルもどちらかでまとまっていればと思わなくもない。


(でもまぁ、そういうものね……)


 古今東西、コンプレックスを持たない者は少数派であろう。

 銀河は目つきを気にしているし、守森は胸を気にしているし、ディスは……容姿ではなく声が甘々プリティなのを恥ずかしがって喋らない。(なお、ディスについては「お前も配信者にならないか?」と再三誘っているが断られている。ASMR出したら売れる声してるのに)

 そしてISBNに至ってはそれ以前の問題だ。

 しかしそうした様々なことも、『まぁ誰しもが何かしらのコンプレックスを抱えて生きているのよね』と、配信者として成功して自分の中のあれこれと折り合いをつけた最近の銀河は納得している。昔だったらもうちょっとネバネバしていた。

 それでも偶には今日のように鏡を見て凹むけれど。


「銀河。お夕飯の時間ですよ。母さんが呼んでいます」

「……はあい、兄さん」


 と、そんな風に物思いに耽っている間に時間が経ったのか、銀河同様に帰省していた兄が扉越しに呼びに来ていた。

 扉を開き、そうして兄の顔を見る。


「…………」

「何です?」

「ううん、何でもないわ童が……兄さん」

「?」


 兄の顔を……先日デンドロで見たものと大差ない顔を見て、銀河は思った。

 そういえば身内にも怖いもの知らずのアホがいたんだったわ、と。


 To be continued


○エヴリン工房の乙女ゲーム


異国の学園に入学した女の子が主人公。

攻略対象は『恋愛に鈍感な犬系男子』、『女性よりも美しい女装少年』、『捉えどころのない性別不詳』、『心優しい巨漢の先輩』、『寡黙でミステリアスな先輩』、『ライバル団体のエース』など。

お助けキャラとして『占い師の部長』、お邪魔キャラとして『貧乳で意地悪で負け犬な先輩』がいる。



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― 新着の感想 ―
エヴリン工房が電遊研最後の一人だな…? 前回丁寧にフラグ立ってたから流石に分かる ディス、萌え声なんだ…ただのコミュ障だと思ってた
エヴリン工房の乙女ゲー…一体どこの電遊研メンバーをモデルにしたんだ… 王国の超級ってそういえばリアルと同じ顔が2人とリアルが健康だったらこんな感じが1人だったか そしてエフもリアルと同じ顔だったのかw
更新お疲れ様です ディスさん可愛い声なんですね デンドロの無口キャラ達で無口の理由明かされるの初ですね!
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