電遊研の日常 ミスコン編
(=ↀωↀ=)<七月七日はレイ君の誕生日
(=ↀωↀ=)<という訳で今年も電遊研SS
(=ↀωↀ=)<あと作者は色々修羅場中ですが
(=ↀωↀ=)<そろそろ色々お出しできると思います
□椋鳥玲二
最近の俺の何が悪かったかと言えば、油断していたことだろう。
今年の文化祭における電遊研の展示がアバターミスコンに決まり、クラスの方は俺の出した団子屋案が通り、どちらも無難に事が進んでいた。
高校最初の文化祭に浮かれていた部分もある。
トラブルなく楽しいイベントになるのだと、俺は油断していた。
油断せず、『部内のトラブルメーカー達(俺と棟上先輩以外の全員)が要らんことをしないか』と気を張っておくべきだったのに。
その結果、俺の油断と楽観を嘲笑うかのように……一枚の紙が俺に絶望を突きつけていた。
「モリモリ先輩」
「……何よ?」
俺はその紙を手にしながら、今回のトラブルメーカー……ド腐れトラップモリモリ先輩を睨む。
「詳しく……説明してください。今、俺は冷静さを欠こうとしています」
「そこに書いてある通りだけど」
「書いてある通りだと――俺がミスコンに出ることになるんですが??」
そう、ミスコンだ。
それも電遊研主催のアバターミスコンではない。
放送委員会主催のリアルミスコンの方に、俺がエントリーしている。
否、させられている。
下手人も既に判明している。
「推薦人、モリモリ先輩になってますよ?」
「そうよ?」
犯人は悪びれもせずに頷いた。
「何でこんなことを……?」
「また例のeスポーツ部の挑戦状よ」
「ああ……」
俺達電遊研とは因縁あるライバル関係になっているeスポーツ部。
電遊研に入るためにこの高校に来て入れなかった人達が中心なので、主に二年と一年で構成されている。
そのため、電遊研に対抗心を燃やす彼らの挑戦を、部長達ではなく二年生のモリモリ先輩が対応することも多い。(二年には棟上先輩もいるが、あちらはいい人すぎて喧嘩が売りにくいのかモリモリ先輩の方に集中している)
彼らの挑戦を受けることはこれまでも幾度もあり、今回もその類と言えば納得はする。
そして部長達もニコニコしながらモリモリ先輩とeスポーツ部の取り決めを追認しているようなので、今回はマジでこれなのだろう。
そこまでは理解した……が。
「……ミスコンですよね?」
「ミスコンよ」
「何で……?」
ゲーム対決に負けすぎて迷走してないかeスポーツ部。
「何でもいいわよ。挑まれたなら電遊研として逃げる訳にはいかないでしょ?」
「ゲームならともかくミスコンから逃げるのは恥じゃないと思いますよ?」
「ちなみにミスコンもフリーの方じゃなくて部活対抗の方に出ることになったのよ」
俺のツッコミを無視して説明続けやがった……。
「部活対抗というと……」
「各部活から代表一名が参加且つ全校生徒投票式ね」
ちなみに記名式で自分の部の代表には投票できないので、電遊研とeスポーツ部の人数差は不利には働かない。
また、仮にどちらも優勝できなかったとしても得票数で差はつくだろう。
勝負の経緯と内容は分かったものの、俺にとって最も重大な部分の納得はまだだ。
「……で、何で俺が出場することに? 俺は男なんですが?」
女性陣かうららから選べよ。俺は棟上先輩の次にミスコン向きじゃないだろ。
「椋鳥、今時肉体の性別で判断するものじゃないわよ?」
「こっちは体も心も男だって話だよ!?」
「アハハハハッ!」
すげえ楽しそうに笑うわこの腐れ外道先輩。
ていうか部内で同情的な視線向けてくれてるの棟上先輩しかいねえ……。
他全員面白がってやがる……!
「ぶっちゃけ選んだんじゃなくて抽選で選ばれたのよ。eスポーツ部が参加者はゲームらしくランダムで決めようって言うからさぁ」
「何でランダムとはいえ男の俺が入ってたんです……?」
「ミスコンの要項に女装すれば男子でも参加可能って書いてあるでしょ? だからアンタだけでなく棟上も入ってたわよ」
「ホントだ……」
これ多分、本来は男子しかいない部活も出られるようにって救済ルールじゃなかろうか。
……救済かこれ?
「まぁ正直弱いの引いたとは思ったわ。まったく、困らせてくれるわね椋鳥」
「人を地獄に突き落としながら被害者面しないでもらえます?」
というか、この人は運要素絡めた勝負で毎度自爆してる人だ。
俺を自爆に巻き込まないでくれ。
「ちなみに向こうの代表はアンタに格ゲーでボコられた二年よ」
「ああ、浅田先輩」
「二年でも一番美人で半ばオタサーの姫なあの人ですな」
俺達の会話に、加田が注釈を入れるように口を挟んだ。
けど、あの人は真面目に格ゲーやってる人だからいわゆる姫とは違うんじゃないかな。
「…………」
ん? モリモリ先輩が何やら不満そうだ。
「……二年で一番美人なのってワタシじゃない?」
「ハハッ、目つきと性根直してから言ってもらえます?」
「胸も直すべきでは?」
「ぶっ殺すわよ一年坊共!!」
モリモリ先輩が俺と加田のツッコミにキレた。
だったらツッコミ入れたくなるような妄言吐かないでほしい。
「椋鳥君って時々煽り力高くなるわよね。格ゲーマーだからかしら?」
「それは流石に暴論かと……」
部長と棟上先輩が何か話してるけど、まぁそれはさておき……。
「……もう棄権でいいのでは?」
向こうも俺と同じで男子を出すならともかく、真っ当に美人な先輩出されたらもう勝負が成立していないように思える。
ゲーム対決ならまだしも、これゲームじゃないし……。
「勝てる可能性はゼロじゃないわ。小数点以下でも目があるなら挑むのよ。アンタも好きでしょ、小数点」
「ぐっ……!」
人のポリシーを逆手に取りやがってコイツゥ……。
「あとミスコンの衣装ならそこにワタシがこの前着た水着とかバニーがあるわよ」
「俺を社会的に殺す気ですか?」
モリモリ先輩じゃあるまいし乳首隠しリボンなんて着たら高校通えなくなるわ。
「ダメよ先輩。玲二くんにそんな格好させられないわぁ」
そのとき、これまで俺達の会話を見守っていたうららが俺を庇うようにそう述べる。
「うらら……!」
「玲二くんが女装するなら身体のラインを隠せる露出の少ないタイプが良いと思うの」
「うらら……?」
「あたしと違って玲二くんは骨格しっかりしてる方だもの。でも顔は整ってるからあたしが化粧すれば十分戦えるわ」
「うらら……!?」
味方かと思ったら背中から刺しにきやがった。
「スリーサイズと肩幅は……。そうねぇ、プリンセスとクラシックメイド、どっちの方向性がいいかしら」
「……うらら、身体の採寸しながらガチっぽい提案するのはやめてくれ」
「?」
あ、ガチっぽいというかガチだこれ。
完全に俺を素材にするつもりの目をしている。
「任せて。玲二くん、顔は良いからあたしの腕でカバーできるわ! テッペン取りにいきましょう!」
そしてこのキャラクリガチ勢は勝つ気満々でプランを立てている。
奴の脳内では俺を対象に各種スライダーを動かしているのかもしれない。
「体格的におっぱいスライダーは大きめにするわね」
マジで動かしてた。
「人のバストサイズはそうそう変わらねえんだよ……!」
「男の方がおっぱい盛るの簡単だから大丈夫よ」
「俺のメンタルは大丈夫じゃない……!」
「お二人とも」
「なぁ、加田! お前からも何か言って……」
「こちら、小生のリップコレクションですぞ。予備で持ってる新品だから安心して使うがよろしい」
「ブルータス、お前もか」
助けてくれると思った友人がまた背中から刺してきやがった。
しかも善意でやってるっぽいからどうにもならない。
「クッ、何と言われようと俺は……!」
「椋鳥君」
「部長、部長からも何か言って……」
「この前の罰ゲーム、まだ履行前だったからこれにしましょう」
「トドメ刺しに来たよこの人!?」
かくして、四面楚歌(棟上先輩除く)の部室で俺は女装させられる羽目に陥ったのだった。
◇
その後、――ミスコンは俺が優勝した。
ネタ投票半分、うららのファッションセンスとメイク技術がヤバすぎたの半分だと思うが勝ってしまった。
格ゲーだけでなく、ミスコンでも俺に負けた浅田先輩は泣いていた。
そして先輩を泣かせ、ミスコン後に男達からラブレターを貰う羽目になった女装を……俺は永遠に封じることを決意した。
かくして、女装は俺にとってケモ耳とメガネに続く第三の禁忌ファッションとなったのである。
To be continued
○浅田先輩
(=ↀωↀ=)<玲二くんに格ゲーでボロ負けして泣かされた上に
(=ↀωↀ=)<今度はミスコンで負けて尊厳破壊された人
(=ↀωↀ=)<ちなみに彼女自身は
(=ↀωↀ=)<「ふ、ふん! 引っ張り出されて一票も入らないと可哀そうだからね! 恵んであげるわ!」
(=ↀωↀ=)<と玲二くんに票を入れていた
(=ↀωↀ=)<N高みたらし被害者の会、会長
(=ↀωↀ=)<なお、翌年になると妹がN高に入学してくる
◯ミスコン投票
(=ↀωↀ=)<玲二くんは関知してないけど
(=ↀωↀ=)<玲二くんだから入れた人もそこそこいる




