六発目 誕生会の続き
「ハンス、俺の蹴りがお前の股間にキレイに決まったから、お前は当分動けないだろ」
俺は、今もアウアウ言って股間を押さえて苦しんでいるハンスをよそにエミリーに近寄る。
今だに俺の姿はカボチャパンツ1枚のままだが気にしてはいけない。
脱がされたドレスは1人では着られない仕様なのだ。
俺はエミリーの寝顔を覗き込む。
「無防備に幸せそうな顔をして寝やがって。おい、起きろ、エミリー」
今も幸せそうな寝息を立てているエミリーに声をかけるが起きる気配はない。
「…………」
とりあえず、捲れていたスカート部分は直したが、仰向けで眠るエミリーのある部位が、どうにも気になってしょうがない。
それはハンスが良い体と言っていたエミリーの薄い胸部だ。
エミリーのメイド服の胸部分は、どう見ても平たいのだが、そんなに良いのだろうか?
「ちょっと気になる」
ここで誤解しないでもらいたい。
エミリーの極薄の胸部に視線を向ける俺にエロい気持ちは一切ない!
ただオッパイを触りたいだけなら、母親のレイシャや他のメイドたちに甘えながら言えば、いくらでも触らして貰える。
全然、オッパイに困ってはいないのだ。
そう、今の俺は求道者!
未知なるものを確かめたいだけなのだ。
と、言い訳はこの辺にして実際どうなんだろうか?
ハンスやおっさん時代の俺なら確かに問題だが、今の俺は5歳の女児だし、少しくらいなら大丈夫じゃないだろうか。
俺は未知なるものの探求のため、エミリーの胸部にそっと手を置いてみる。
「マジかっ!」
俺は驚愕した。
もちろん、その良さではなく最悪さに。
エミリーの胸は、柔らかさはともかく、大きさが問題だ。
これヤバくねって感じ? エロ神様やレイシャの胸をエベレストとすると、エミリーの胸は砂場の山もいいとこだ。
5歳児の俺の手で、ようやくはみ出るくらいの申し訳ない大きさ。
14歳で、この成長具合はまずいだろ。
エミリー、不憫な奴。
「アルファ様ぁあぁぁ!」
「うわぁっ!」
突然、心を読まれたようなエミリーの声に驚いた。
エミリーの奴、起きたのか?
「うにゃむにゃ」
「寝てるし。……エミリー、タイミングが絶妙すぎるだろ」
まるで狙ってるとしか思えないタイミングだ。
さて、時間もないし動くか。
気になっていた問題もハッキリさせて、スッキリしたし、次の行動に移ることにする。
俺はエミリーに適当なシーツをかけて見えなくしてから、そのままの格好で退室する。
廊下に出ると、近くを通りかかる適当な人物を探す。
良いところにメイドがやって来た。
「なあ、今ちょっといいか」
「きゃっ、アルファ様、そのお姿はいったい!」
「あぁと、その理由は追い追い話するから、まずは誰か呼んできてくれね?」
「た、ただちにっ!」
メイドに呼ばれ、数人が集まってくる。
その中には、この屋敷の執事ライアンの姿もあった。
「アルファ様、どうされ……! 本当にどうされたのですか、そのお姿は!」
カボチャパンツ1枚の俺の姿を見たライアンの瞳孔が拡がる。
俺の刺激的なお子様セクシースタイル、俗に言う寸胴は、ロリコンなライアンの琴線を激しく揺さぶったことだろう。
その証拠に、エミリーのパンモロを見ても微動だにしなかったライアンの表情だが、今は俺のあられもない姿を凝視したまま、呆然と立ちつくしている。
「ライアン、良いところに。撃退はしたんだが、この部屋の中に俺を襲おうとした奴がいるんで捕まえておいてくれ。だが、これはうちの家の中の問題だ。醜態を晒す必要もないし、誕生会の来客たちには知られずにことを収めたい。対応を頼めるか?」
もちろん、ハンスには罰を受けてもらうが、あまり事が大きくなりすぎると、エミリーが襲われかけたこともばれる可能性もある。
それは俺の望むところではない。
俺の要請を受けて、ライアンが口を開く。
「それは可能ではあります、が――」
半裸の美幼女が執事服の中年男性と真面目な顔をして話をしているその周囲で、他の使用人たちは自分達の長の言葉をじっと静かに待ってくれている。
見方によっては、なかなかシュールな光景だ。
「――アルファ様は、それで宜しいのですね?」
「ああ」
俺は力強く頷いた。
「ふう、並の5歳児なら、恐怖と安堵感から泣きじゃくり話もできない状態になると思うのですが、アルファ様には驚かされてばかりですな」
「まあ、みんなにこれ以上心配かけたくないしな。結局、何かされる前に撃退してやったし、俺は大丈夫だ」
「……承知いたしました」
執事のライアンは、それ以上追求することなく、部屋の中にいるハンスの身柄の確保、俺の着替え、来客への対応等に人を素早く割り振って指示を出していく。
素人目からみてもテキパキとした見事な手腕だ。
できる奴ってのは、こういうライアンみたいな奴のことをいうのだろう。
ライアンはロリコンなだけで、仕事面では優秀な男だ。
同じロリコンでもハンスとはえらい違いだ。
「ちょっと、俺自身、長く会場を離れすぎてしまったな。会場に戻るために何か1つ趣向を凝らした演出をしたいところだな」
「それなら良いものをご用意しましょう」
ライアンが自信ありげに発言した。
「あとは、このライアンにお任せください」
ライアンがここまで言うのだ。
任せても大丈夫だろう。
「頼んだぞ」
俺は、これ以上サービスショットを披露する必要も感じず、着替えるためにその場を後にした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「アルファ様、お戻りが遅いわね」
「そういえば、そうだな」
誕生会の会場となっている広間の近くまで来ると、中の方から貴賓の方々の少し心配してくれている声が聞こえてきた。
やはり、時間が掛かりすぎたか。
俺は静かにお嬢様モードをオンにする。
「さあ、行くか」
俺が会場の扉の前に立つと、両脇に控えていたメイドが扉を開け放つ。
「お父様、お母様、……アルファ、ただいま、舞い戻りました」
再度ドレスを纏わせてもらった俺が誕生会の会場に舞い戻る。
その瞬間、会場がざわめいた。
俺は今、ロイヤルブルーのドレスに身を包まれていた。
お色直し、これがライアンの用意してくれた趣向だ。
「ほほぅ」
「見て、アルファ様のドレス、素敵っ!」
「本物の妖精のようだ」
会場のいたるところから賛辞の言葉が上がる。
俺の着ている今度のドレスの背中には妖精のような羽の意匠が取り付けられていたから舞い戻るという表現にしてみた。
この2着目の俺のドレスのイメージは、まんま妖精ということだ。
もし俺がドレスをダメにした場合の代用として用意していた物らしいが、今回はいい演出になった。
こうして、俺も会場復帰し、誕生会は無事に成功した。
最後に、主催者でもある俺の父親が壇上に立つ。
「皆様に祝福され、我が娘アルファもこの歳まで成長することができました。これから少しづつ外の世界に出ていく娘を宜しくお願いいたします。…………最後に、我が家のしきたりにならい、娘のアルファには今後のお側係となるメイドをこの場で選んでもらいたいと思います。おいで、アルファ」
「……はい、お父様」
おいおい聞いてないぞ!
内心そう思いながらも父親に促されるように俺は壇上に上がる。
俺は会場にいるメイドを順番に見ていく。
清純な感じのミレーヌさん。
魅惑ボディのバーバラさん。
頼れる妙齢のサフィーヌさん。
その他にも、うちの屋敷には多数の魅力的なメイドたちが揃っている。
「アルファ、決まったかい?」
「はい。…………ただ、その前にみんなに一言いわせてもらってもよろしいでしょうか?」
「もちろん、良いとも」
「ありがとうございます、お父様」
俺の提案を父親が快く了承してくれた。
俺はこの会場にいる人たち1人1人に視線を巡らす。
そして、ゆっくり話し出す。
「私は子どもで、まだまだこの世界の常識も知らず、屋敷のみんなにいろいろ迷惑をかけることも多いです。そんな私をみんなは、それぞれ優しく受け止めてくれています。そんな中、1人、ちゃんと私に悪いことは悪いと怒ってくれたメイド見習いがいたんです。最初は確かにムカつきました。大嫌いでした。ただ、その言動の全てが全部私のためとわかったとき、ただの大嫌いじゃなくなり、私自身、少し人として成長出来たような気がしました。……って、あれ、言いたいこと伝わってますかね? 長々と話してしまいましたが、とにかく私が言いたいことは2つです。1つは、みんなのことは好き、大好きってことです! そして、2つめなんですが、私はこれだけ大好きなみんながいる中、敢えて私を成長させてくれる大嫌いなメイド見習いを選びたいと思います」
俺がひとしきり話終わると盛大な拍手がおこった。
俺の気持ちはうまく伝わっただろうか?
言葉は拙く、文脈もメチャクチャかもしれないが、これだけ盛大な拍手をもらえたし、きっと大丈夫だろ。
「では、アルファ、その者の名前を教えてくれるかな?」
「はい、お父様」
拍手が終わると、俺は今も幸せそうな寝息を立てているであろう、元天敵であったメイド見習いの名を告げた。
読んでいただきありがとうございます。
これで主人公が5歳の話は終わりです。
次話からは、10歳の話になる予定(変更の可能性あり)で、頑張って月曜日までには投稿したいと思います。
遅れたらすみません( ̄▽ ̄;)
引き続きお付き合いいただけたら有り難いです。




