三十一発目 俺とオーガ
俺は砦の中、精霊の洞窟に通じていた扉の前でオーガと対峙していた。
「なあ、トランテッタ、やるとして俺たちで勝てるか?」
「アルファ様が冷静さを取り戻してくださっているのなら問題ないかと。オーガの角は高値で売れますし、強さも価値も最初の獲物としては申し分のない相手ですよ」
「トランテッタがそういうなら大丈夫そうだな。サラもその方向でいいか?」
「もちろん」
サラはヤル気満々だ。
盾の精霊ジルドと契約して、能力を試したくてしょうがないようだ。
だったら、やめる理由もない。
「ダーチ、俺たち全員に『重力緩和(中)』」
「うん、これこれ。前より体が軽いや」
「なるほど、素晴らしい力ですね」
成長した大地の精霊ダーチは『重力緩和』の効果が上がっただけでなく、その対象を複数に設定できるようになっていた。
「オーガ相手じゃ、パワー勝負は完全に負けるだろうから、スピードを活かした勝負ってことでよろしく」
「それじゃ、あたしが前で撹乱するから、援護してね」
「サラさん、オーガのパワーを舐めたらいけませんよ」
「了解。ジルドおいで」
サラが愛用の剣を構えると、盾の精霊ジルドを従えてオーガに向かい風のように飛び込んでいく。
ガァァァ
「よっと」
サラは力任せに殴りかかるオーガの拳をなんなく掻い潜り懐に潜り込み、逆に愛用の剣でカウンター気味に一撃を叩き込む。
オーガの皮膚相手では全然致命傷にはならないが、動き回っている分にはそんな危険はなさそうだ。
というか、下手したらこのままサラに美味しいところを持っていかれかねない。
「俺たちもやるぞ、ダーチ、『土石生成』&『土石造形』&『土石操作』、ゴーレムマンを作ってサラの援護をしろ」
俺の呼び掛けに大地の精霊ダーチがゴーレムを作成する。
前は全長五十センチだったゴーレムマンは、ダーチの成長により二メートル弱の大きさになっていた。
さすがパワーアップしたってだけはある。
だったら他の精霊も経験値を貯めていかないとな。
「他のみんなも出てこい!」
そして、イート、ダーチだけでなく残りの俺の精霊たちも出てくる。
大小色とりどりの五つの球体が俺の周囲を回る。
「イート、あのオーガの頭に、穴なし目出し帽を作れ『着衣創造』」
手持ちの鋼糸を全部使い、目出し帽を作成する。
オーガの頭が目出し帽でスッポリ覆われるが、穴なしなのでもちろん視界はゼロだ。
ガァァァ!
突然視界を奪われたオーガが手に持った小男を放り出し、両手で目出し帽を引き剥がそうともがいている。
今のうちだな。
小男も一本釣りの要領で助けだし、これで気にせずオーガと戦えるってもんだ。
「アルファ、ナーイス」
「サラ、トランテッタ、ここじゃ狭いし、俺が闘技場まであいつを誘導する。トランテッタは怪我人の保護、サラは他所にオーガの意識が向かないようにフォローを頼む」
「了解」
「承知いたしました」
「鏡の精霊カーミ、出番だ、『鏡幻作成』」
鏡の精霊カーミの力で幻の壁を作成する。
実体のない壁だが、パッと見はそこにしか道がないように見える。
ちょうど、オーガが目出し帽を破いたので声をかける。
「ほらほら、オーガ、こっちに来てみろ!」
ガア!
俺たちの姿を捉え、ただでさえ恐いオーガの顔がさらに怖さを増す。
「アルファ、行こう」
「おう、俺たちの姿を見失わせない程度のスピードで逃げるぞ」
俺たちを追って、オーガも移動を開始する。
ゴーレムマンに殿を任せつつ、大地の精霊ダーチの『重力緩和(中)』で自重が半分以下になった俺とサラは、オーガに追い付かれることなく闘技場までたどり着いた。
「さあ、ここなら思いきりやれるな」
さっき鋼糸は使いきったし、丸腰は不味いな。
なんか鋼糸に加工できそうな金属の物はないか。
「!?」
俺は新たに武器となるものを探していて、以前肉塊となった男から拝借した指輪を取り出しピンと弾く。
量的に少ないから長さは大分短くなるだろうが無いよりマシだろ。
「イート、こいつで『糸生成』いけるか?」
糸の精霊イートは明滅すると、指輪で糸を作成する。
銀に輝く数メートルの鋼糸が完成する。
なんの金属なんだろうか、メッチャキレイだ。
「ちょっと、アルファ。あたしのジルドの出番も残しといてよね」
「もちろんだ。頼りにしているさ」
オーガも闘技場に登場し準備は完了だ。
戦闘を開始。
先手はもらった。
「イート、『傀儡糸』」
俺が新たに作成した銀に輝く鋼糸でオーガの首を狙う。
牽制程度になればいいと思って放った鋼糸がオーガの首を飛ばす。
「へっ?」
「うそっ?」
オーガの首なしの胴体が崩れ落ちる。
「…………ちょっと、アルファ」
「マジ、ごめん」
あっけにとられる俺たちを他所にオーガとのバトルは速攻で終了した。
あとで、トランテッタに鑑定してもらった結果、イートが鋼糸に加工した指輪は最高硬度のオルハリコンの少量混ざった輝白銀であることがわかった。
ちょっと勿体なかったかもしれない。




