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二十一発目 サラと俺

「へー、あなた、年のわりに料理とかできるんだ。すごいね」


「まあな。ていうか、サラ、お前の体、すっげえ臭うぞ! 食事の用意はやっとくから風呂に入って来たらどうだ」



 何ていうか、サラの体からは年頃の女子としてどうなんだという臭いがした。

 うまく表現は出来ないが、なんていうか、汗やらいろいろなやつが混じった混合臭ってやつ?

 サラ自身は、もう嗅覚が疲労しきって麻痺して気付かないのだろう。

 俺の提案にサラは目を輝かせる。



「えっ! お風呂があるの! お風呂って、こう、飛び込んだらザバーンってお湯が溢れる贅沢なやつ。あんなの金持ちや貴族しか入れないと思っていたのに」


「俺が作ったやつだから遠慮なく入っていいぞ」


「やったー」



 風呂の場所を教えてやると、サラは大喜びで向かっていった。

 サラを見送って数分で食事の下ごしらえは完了した。



「ふう、あとはこのまま火にかけておけば完成だな。…………手が空いて暇になったな。…………そういえば、サラのやつ、風呂の湯加減は大丈夫だったかな」



 たいした意味もなく独り言を重ねる俺。


 うん、わかってる。

 自分でも挙動不審だと思う。

 だが、サラの風呂の様子が気になってしょうがないのだ。

 ここで俺はある事実に気付く。

 今の俺、女じゃん!ってことに。



「なんだ! 簡単じゃないか。そうだよ! 心と記憶はともかく、今の俺の体は女の子。女同士でお風呂を覗いても何も問題ないじゃないか」



 あまりの衝動に、そんな単純なことを忘れていた。

 そうと決まれば急がねば。

 サラのお風呂が終わってしまうと大変だ。

 俺はそわそわしながらサラの様子を見に行く。



「サラ、湯加減はどうだ?」


「うん、最高~~~~、まさに生き返ったって感じ。少し傷には滲みるけど、綺麗にしとかないと傷が膿んでも大変だしね」


「なあ、背中流してやろうか?」


「いいの! 至れり尽くせりで、なんか悪いな~」



 サラが湯船からでて、俺に無防備に背中を向ける。

 薄い布で背中を流している間、サラは髪を洗うため両手をあげている。

 ふふふ、サラ、油断大敵だぜ!

 背後からサラのオッパイを両手で鷲掴みにする。



「きゃっ!」



 可愛く声を上げるが、抵抗はない。

 俺の指にサラのオッパイの感触が伝わる。

 大きさのわりに、メッチャ柔らかい! でも、しっかりとした弾力もあって形もよく、最高のオッパイになれる可能性を秘めた逸材だと確信する。



「折角だし、このまま俺も一緒に入っちゃおうかな」



 ちょっとでも不穏な空気を感じたら、「なーんちゃって」とかいって誤魔化そうと思っていたが、そんな必要はなかった。



「うん、そうしたら」



 マジか!!!!

 俺としては、ちょっと怒られるくらいは覚悟していたのだが、これは予想外の反応だ。

 俺は全裸になると、サラの隣に入る。



「うわぁ、アルファって、めっちゃ肌がキレイで羨ましいな。あたしとは大違い。ねえ、さっきはあたしが触られたんだし、今度はあたしが触ってみていい?」


「別に構わないぞ」



 俺の了承もあり、サラは両手で俺の体をまさぐってくる。

 全裸の少女が、同じく全裸の俺の肌をお触りする。

 相手にやましい気持ちがないとわかっているとはいえ、これはヤバかった。



「ふう、アルファの肌、気持ち良かったぁ」


「満足してくれたようで何よりだ」



 風呂を満喫したサラと俺は、俺の調理したスープで遅めの朝食をとっていた。

 さすがに裸は嫌だったのか、サラは荷台にあったシーツを体に巻き付けていた。

 なんちゃってなワンピースに見えなくもないけど、座ればけっこう際どいとこまで見えそうだ。



「うん、美味しい!」



 ろくなものを食べさせてもらっていなかったのか、サラはがっつくようにスープのおかわりを繰り返している。

 消化の良いスープにしといてよかった。

 美味しそうに食べてくれているので、見ているだけで気持ちが良い。

 四杯目のおかわりをしたサラが俺に目を向ける。



「でも、本当にあいつら死んだの?」



 俺のいったことが信じられないようで、まだサラはそんなことを言っている。

 しょうがない、証明してやるか。



「鏡の精霊カーミ出てこい。あいつらの最期の姿を見せてやれ」


「精霊?」



 俺はサラの前にホログラムのように、映像を立体投影させる。



「なに、この気持ち悪い肉団子?」


「あいつらのなれの果てだ」


「!?」


 ブフゥゥゥウウウ!



 サラの奴、スープを吹き出しやがった……汚いな。



「気を付けろ、食事中だぞ」


「あなたが変なもん見せるからでしょ!」



 サラが肩で息をするくらいの勢いで抗議の声を上げる。

 だが、それは俺の知ったことではない。



「そんなもん、素直に信じなかった方が悪い」


「あなた、そんな天使のような見た目のわりに、案外鬼畜なのね。この殺し方もとても人間業とは思えない」


「いや、これは全部精霊の仕業だ」


「精霊? あなた契約者なの?」



 おや、実家を出るときにレイナードからきいた契約者って言葉をサラから聞くとは思わなかった。



「サラ、契約者ってなんなんだ?」


「呆れた。そんなことも知らずに精霊と契約をしたの。アルファはどこの出身?」


「王国の南方、サファイア家の領内だ」


「なるほどね」



 サラが納得いったというような感じで頷いた。



「契約者っていうのは、その名の通り精霊と契約をした者のことよ。比較的平和な南の地方では珍しいのかもしれないけど、争いや魔物、自然の驚異の厳しいその他の地域では時々現れたりもしてるわ。まあ、そのほとんどが下級の精霊との契約者なんだけどね」



 サラが説明してくれたことは以外だったが、導きの精霊エロジジイは他所にも精霊の祠のように精霊と語らえる場所はあるといっていたし、嘘ではないだろう。



「ということは、俺の他にも契約者はいるのか?」


「いるとは思うけど、数はそう多くないんじゃない? あたしの知っている契約者は王宮にいる女の子一人だけだしね」


「へぇ、王宮にも精霊の契約者がいるのか」



 王宮にいる俺以外の精霊の契約者か。

 メッチャ興味がある。

 いろいろ落ち着いたら王都も行ってみたいな。



「さて、そのままの格好じゃ不便だろ。サラ、そこに立ってみてくれ」


「なんで、裸? まあ、いいけど」



 サラは疑問に思いながらも従ってくれた。

 生まれたままの姿のサラ。

 身長は俺より高く、150センチくらいか。

 白い肌に肩より少し長いくらいに切り揃えられた黒髪が日本人形みたいだ。

 顔は俺の方が整っているが決して不細工って訳じゃない。

 美人ってよりは可愛いといった容姿だ。

 体は年齢以上に発育していると思う。

 体の線は比較的細いのに出るところが立派に出ている。

 ロリコンじゃなくてもストライクゾーンに入るかもしれないほどだ。

 やばい、これ以上見てたら変な気持ちになりそうだ。



「材料はシーツで良いだろ。一応、防御力のことも考えて鋼糸も少し織り込んでおくか」


「あのさ、あたしどうなるの?」


「大丈夫だ。心配なら目でも瞑っておけ」


「ん、そうする」



 サラは素直に目を閉じた。



「糸の精霊イート出てこい。『着衣創造』」



 俺はイートの力を使いサラに新しく服を作ってやる。

 白いエプロンドレスが瞬く間に完成する。

 エプロンドレスの胸部や腰部の要所には鋼糸も編み込み、それなりの防御力も期待できる逸品だ。

 女の子ということを意識して白地に白の刺繍で目立たないように花とかもあしらってみた。

 以前、自分に作った無骨な鋼糸ドレスとは段違いだ。



「もう終わったから目を開けて良いぞ」


「? おおー、服! 可愛い~」



 サラは自分の格好を確かめるようにくるくる回っている。

 実に嬉しそうだ。



「さて、腹も格好も落ち着いたなら、サラの俺と出会うまでの経緯を聞いても良いか? 」



 俺の申し出にサラは一瞬だけ顔をしかめたが、すぐにやれやれという顔をしてくれた。



「…………まあ、いいか。アルファには助けてもらったわけだし、別に隠すほどのことでもないしね」



 俺とサラは向かい合うように座り直す。



「あたしは西の出身で戦争孤児なんだ。それでおじさんちに引き取られていたんだけど、そこのうちも経済的に苦しくってさ。早く独立してやろうと傭兵になったんだけど、そこで最初の雇い主の依頼で任務についてて、逆に捕まって売られて、この有り様ってわけ」


「へぇ、傭兵だったのか。いいのか? そんなことベラベラしゃべって? 傭兵だったらこれからの信用問題に響くんじゃないのか?」


「信用も何も、雇い主殺されちゃったし、仲間もね」


「それはご愁傷さまだな」


「残念ながら、あたしの育ったところではよくあることなのよね」



 人間同士の戦争が多いためか、思いがけず賊の錬度が高く討伐隊や護衛が全滅するのは西の地域ではよくある話のようだ。

 サラは悲観的な顔をせずに話す。

 それだけでサラの内面の強さがわかる気がした。



「サラはこれからどうするんだ?」


「う~ん、どうしようかな。狭い箱に閉じ込められてなぶりもの寸前にされてて、最近、奴隷とかにされる未来しか見えてなかったからな~」


「南に行くなら知り合いを紹介するけど?」


「それもいいけど、やっぱり助けてもらって、そのままお別れっていうのは性分に合わないし、あたし、アルファと一緒に行ったらダメ?」


「それは別に構わないが、いいのか? 俺は魔物の多い東側に行く気だぞ。危険があるかもしれない」


「自分を鍛え直すにはちょうど良いじゃない」



 サラは本気のようで、引く様子がない。



「夜に交互に火の番もできるし、二人いたら便利よ。それに、あたし馬車の扱いは結構うまいんだけど?」



 そういえば、馬車ってどうやって操縦するんだ? 適当に手綱を引っ張ればどうにかなると思っていたけど……そんなわけないよな。

 日本にいたときは馬車なんて乗ったことなかったし、こっちの世界でだって必ず御者がついてくれていた。

 自慢じゃないが、俺は手綱すら触ったこともがない!



「俺と一緒に行って後悔はしないのか?」


「さあ、それは未来のあたしにでも聞かないとわかんないや。でも恩人の役に立てるし、自分自身強くなれるってお得じゃない」



 そこまで言われたら断る理由はない。

 一人で不安じゃないかと言われたら不安だ。

 精霊も万能ではないのもわかっている。



「サラ、言っとくが、三食と風呂くらいしか提供できないぞ」


「それで充分よ」


「じゃあ、よろしく頼む」


「やったー、よろしくね、アルファ」



 こうして、俺の一人旅は二人旅になった。



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