二十発目 埋葬と少女
新年早々、インフルエンザでダウンしてました。
更新遅れてすみませんでした。
皆様も体調にはお気をつけください!
元人間だった肉塊を前に、これは俺の罪になるんだろうかと小一時間悩んでみた。
もう、朝日だった太陽は結構な高さまで上がっている。
そこまで悩んで、俺はようやくひとつの結論を出す。
すなわち、
やっちまったことはしょうがない。
ってことだ!
別に俺は殺せとはいってないし、殺すつもりもなかった。
殺ったのは精霊たちで、俺は任せるといっただけだ。
元々、悪人と言ってもいい奴らだし、自業自得だ。
吹っ切れた俺は、大地の精霊ダーチの力を使い、元男たちだった肉塊を埋葬することにした。
男たちの自業自得とはいえ、化けて出られたらたまらないしな。
普通に魔物もいる世界だし、放っといて本当にゾンビやゴーストになって出てこられるのはマジ勘弁だ。
そういう系統の魔物に俺の精霊たちの攻撃が効くとも限らない。
俺のメイン武器はイートの能力を使った鋼糸だ。
俺自身は魔法も使えなければ、特殊能力もない、ただのお嬢様。
極力、危険は回避したいのだ。
「あっ、これ、慰謝料にもらっといてもいいかな」
俺は肉塊から飛び出た指の部分から指輪を外した。
金色のいかにも価値が高そうな指輪は、いざとなったら路銀の足しにもなるだろう。
「いつまでも見ているのも気持ち悪いし、さっさと作業しちまうか。大地の精霊ダーチ出てこい。『土石操作』、こいつらの入る穴をあけてくれ」
オレンジの球体が出現し、俺の目の前の地面に肉塊がスッポリ入る大穴をあけてくれた。
「あとはこれに肉塊を入れるだけだなって、あれ? 肉塊を入れるのは俺の仕事って感じか? イヤイヤ、気持ち悪いし、非力な俺一人じゃ無理だって」
なんせ俺の体は華奢なお嬢様仕様、大の男二人分の重量を運べるとは思えない。
またも精霊の力の出番のようだ。
「ダーチ、『土石生成』&『土石造形』&『土石操作』、ゴーレム…………って、もし本物のゴーレムが魔物として出現したとき呼び名が一緒だとゴチャゴチャして不便だな。まあ、適当にゴーレムマンとでも呼んでおくか」
土と石で作られた、全長50センチ程度のミニチュアゴーレム、俺命名ゴーレムマンが出来た。
太く短い手足でなかなか可愛いが、大きさからいって力は思っていたより弱そうだ。
思った通り、ゴーレムマンだけでは成人男性二人分の肉塊はなかなか動かなかった。
もう1体ゴーレムマンを作成できないか試してみたができないようだ。
俺の魔力的にはまだまだ余裕がありそうなので、これは中級精霊であるダーチの性能の方の問題だろう。
しょうがないので、気持ち悪さをグッとこらえて、頑張って動かそうとしてくれているゴーレムマンと一緒に木の枝を使って肉塊を穴の中に押し入れていく。
なかなかの重労働だ。
「疲れたぁぁぁぁぁ!」
俺は一仕事終えて、そのままへたり込む。
穴のほうは、一応、土もかけたし大丈夫だろう。
手についた土をパンパンと払いながら自分の姿を見ると、汗と土まみれだった。
今度は自分の体をきれいにしたい衝動にかられる。
男たちに体を触られたままだったし、死肉を動かす作業の後ではなんとなく気持ちが悪かった。
ということで、
「気持ちいーー--! 生き返る」
俺は昨日精霊の力で作った湯船に新しく湯を張ると飛び込んでいた。
夜入るのもいいが、今みたいに日が高くなって入るお風呂もまた格別だった。
ゆっくりと湯に浸かる。
そうしているうちに人死にに関わってしまい落ち込んでいた気分も多少マシになっていった。
実際に俺が直接手を下してないっていうのも大きいだろう。
なんだかんだと一時間浸かってしまっていた。
俺は水の精霊ミーズと大気の精霊ターキの力できれいになった服を着て荷馬車に向かう。
「さて、荷馬車もこのままにしとくのは勿体ないし、慰謝料としてもらっとくか。そういえば、荷台にはどんな荷物を積んでいるのか確認でもしとくか」
腐りやすい生物でもあったらえらいことだし、荷馬車の荷台を探っていく。
見たところ大部分は骨董品のような家具や調度品の類いだ。
あの男たちの商品だったみたいだ。
他にも大きな箱の中には小麦や野菜果物といった食料が入っていたし、小さい箱には貴金属や金貨銀貨が数十枚もあった。
これなら当分は食うに困らずにすみそうだ。
「ん? なんだこれは?」
他の荷物のせいでよく見えていなかったが、一際異様な箱があるのに気付いた。
俺は他の荷物の下にあった棺桶のような箱を開けてみた。
「マジか」
そこには棺桶にふさわしいモノが入っていた。
黒髪の少女。
顔立ちは中学生くらいに見えるし、12~14歳くらいだろうか?
その少女は裸で目隠しのうえ、猿轡まで噛まされて両手両足を縛られていた。
……犯罪臭が半端ない。
「もしも~し」
声をかけるが反応はない。
まあ、意識があったとしても猿轡されてるし話せないよな。
息はしているし、死んではいないようだ。
男たちに折檻されたのか、暴れて自分でつけたのか、少女の白い皮膚は細かい傷だらけだ。
「……………………はあ」
触りたい! 触りたい! が、ここは我慢だ!
最近、見る機会がめっきり減ったオッパイに興味津々だが、さすがにこんな状況の女の子にイタズラするっていうのはどうなんだろうかと思う。
もし意識があった場合に男たちの仲間と勘違いでもされたら、めんどくさい事態になりかねない。
「今、猿轡外してやるからな」
俺は少女の猿轡をはずす。
すると、少女は騒ぎ出す。
「何よ! また来たの。今度こそ、あんたたちのその手を噛みちぎってやるんだから!」
「おわっ! あぶねぇ」
少女は威勢のいい言葉を吐き出しながら、手当たり次第に噛みつこうとし、ちょっと俺にも予想外なくらい元気だ。
…………このまま解放して大丈夫なんだろうか?
勘違いでぶちのめされるのはゴメンだぞ!
とりあえず、目隠しをとって反応を見てみよう。
俺は少女の目隠しをとってやる。
「このっ!…………って、あれ? あなた、女の子? あなた誰?」
「とりあえず、視力は問題なさそうだな」
最初に鬼をも殺しそうな視線で睨まれたが、俺の姿に気づいた少女は、その目を疑問符で埋め尽くしていく。
まあ、そうなるよな。
何日間この状態になっているか知らないが、とても正気を保てるような待遇ではないことは確かだ。
現代日本人の転生者でお嬢様育ちの俺なら一日で発狂する自信がある。
「俺はアルファだ」
「『俺』って、あなた女の子なのに男の子みたいな話し方をするのね」
「まあ、(中身は)男なんで」
「へっ?」
「気にしないでくれ。今手の拘束もはずしてやるから」
あれ、なかなか固いな。
「おーい、ゴーレムマン、この娘を傷つけないように注意しながら拘束具をぶっ壊してくれ」
「きゃっ」
呼ばれてやって来たゴーレムマンを見た少女が小さく悲鳴を上げたが、しょうがないと思う。
使用者でなければ、ゴーレムマンと魔物の違いはわからないだろう。
ゴーレムマンは、少女の手足の拘束具を壊すとただの土と石になって崩れていった。
今のダーチの能力と適当に込めた俺の魔力では、二時間くらいが活動限界ということなのかもしれない。
十分に役に立ったと思う。
少女は体をほぐしながら辺りの様子を伺い、周囲に俺以外に人がいないことで警戒を少し緩めた。
今も隠そうとしないので、俺の前にはぷりんとした形の良いオッパイが露出したままだ。
「あたしを買った男たちは? いないなら今がチャンスだし、逃げないとあなたも危険よ」
ここは安心させるためにも正直に伝えた方がいいか。
「…………奴らなら、死んだ」
「へっ? あいつら、あれでなかなか腕のたつ奴らだったのにどうやって! まさか、あなたがやったの?」
「…………企業秘密だ」
「キギョウヒミツ?」
「ようは内緒ってことだ。さて、これであんたは自由になったわけだが、話を聞かせてくれるか。まずは名前と年齢から」
「あたしの名前は…………サラ、年は13歳」
真っ裸で年下の女の子に見えるはずの俺に自己紹介してくれた少女はサラというようだ。
本名かどうかはわからないが、別に偽名でも呼び名が欲しいだけなので問題ない。
さあ、これからどうするか。
グウゥゥゥゥ
俺とサラの腹が鳴る。
恥ずかしかったのか、サラがお腹を押さえて、アハハと軽い笑いを飛ばしている。
この状況でも腹が減るって、人間て案外図太い生き物だと思う。
そういえば、まだ朝飯もまだだったな。
「うん、まずは食事にするか」
俺は荷台にある食材をとりに向かい、朝食の準備に取りかかるのだった。




