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幼馴染み優先で、私を雑に扱う婚約者は捨てることにしました。  作者: ぽんぽこ狸


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56 その後



 御前会議が終わりライツィンガー公爵家に戻り、ライツィンガー公爵とハイディ、そして父とロミルダの四人でテーブルを囲む。


 そんな中、父が最初に口を開いた。


「あの男の顔は見物だったな。ともあれ、うまくやってくれた」


 言いながら父はロミルダの背中をぽんと叩く。


 それからライツィンガー公爵にも視線を向けた。


「まだ奴がどういった対応をしてくるかわからぬ。しかし、こちらには手段がある。そうだろう?」

「その通りです。あんなことがあって決して手放しには喜べませんが……ロミルダ様ありがとうございます。本当に素晴らしかった……」

「ああ、そうだな。姉上……自分もロミルダ君のまっすぐな態度に、引っ張られて恐ろしい相手にたいして毅然とした態度を取ることが出来た。君に任せたブロムベルク辺境伯の選択は正解だったと思う」


 改めて二人にお礼を言われて、ロミルダは、こうして間に合った理由のアレクシスを思い浮かべた。


 彼がいてくれて、ロジーネも手伝ってくれて、母もすぐに協力してくれた。加えてエイミーや多くの使用人がいてこその結果だった。


「そう言っていただけて良かったです。こうして間に合ったのはたくさんの人が手助けしてくれたおかげですから……実って良かった」


 思い出しながらそうしみじみと言うと自然と表情がほころんで今すぐこの結果を全員に報告したくなる。


 帰ったらまずは誰に言おうか。


「なにより、これで重荷が下りたな。ロミルダよ。我々は本来、国境と周辺を領地を魔獣から守る地方の貴族だ。王都の厄介ごとなどこれでこりごり」


 父が話を変えて、くたびれた様子でソファーの背もたれに体を預けながら言う。


 たしかにこんなことにしょっちゅう巻き込まれていたらおちおち訓練もしていられない。


 これきりにしてほしいものだ。


「……始末までは協力しよう。しかし後のことは任せられるな? ライツィンガー公爵、ハイディ夫人」


 父が彼らに問いかけると、ライツィンガー公爵は真剣な表情で頷き、ハイディも同じように深く首肯する。


「はい。ブロムベルク辺境伯殿、……お任せください。一度は情けない部分もお見せしましたが、ここまで手を貸してもらった。我々はきちんと我々の役目を果たします」

「そうね。ディーター……私のような理不尽なことなどもう起こらない王都にしなくてはいけませんから」


 王都を背負うといった彼らの覚悟は固い様子で、父は満足げに頷いたのだった。



 

 結局、竜は復活しなかった。

 

 大方ロミルダの読みどおりだったのだろう。確認して、直接話を聞きたい気持ちもあったけれど、そんなことが出来るような状況では無い。


 フェリベルト国王は竜が復活すると判断した証拠や、竜の眠る洞窟管理など多くのことで父とライツィンガー公爵家が作り出した当初の反対派に突き上げられた。


 初めはなんとか対応をしていたが、その対応はあまりにもずさんなもので、しばらく後に、王族は国を逃げ出した。


 そして当たり前のように捕らえられ、ライツィンガー公爵家によって調べ上げられると、竜を復活させようとしていた行動が露見し、フェリベルト国王を筆頭にその陰謀に関わった人間は正しく裁かれた。


 もちろんフェリベルト国王は極刑で、彼らの行動を阻止し役目を全うしたライツィンガー公爵家が次の王家にと望まれるのは自然な流れだった。


 立場的にもライツィンガー公爵以外にふさわしい人はいない。


 ライツィンガー公爵は少々気の弱いところがある人物だが、彼を象徴としてうまくハイディが周りの貴族からの信用を集めているようだった。


 そしてそれらのことはほんの数ヶ月の間に起こった出来事で、とてもめまぐるしく、ロミルダが活躍できる場面は少なかった。


 しかし、御前会議の立ち回りで、多くの貴族に顔を覚えられ、好意的に接されることが多くなった。


 それを嬉しく思ったのもつかの間、王家が変わり、まだ慌ただしいなかでもロミルダが王都にいるとみれば、次から次に社交の招待状が届くようになった。


「……まったく、体がいくつあっても足りぬな」


 それらの山を見て父は呟いた。


 その若干呆れたような言葉にロミルダも同じ気持ちだと思う。


「大きな力を持っていると知った途端にこれだ。薄情な奴らよ」

「やっぱり、御前会議で言った。魔力好循環薬の製法を知りたいのよね?」

「それ以外に何がある」


 竜を鎮めた魔法薬についてはあの場で説明をしたし、それをライツィンガー公爵家に共有したと言ったが、実際のところはまったくのデタラメだ。


 フェリベルトの心を折るためのただの嘘にすぎず、本当に復活してしまったら改めて王族の血筋が持つ契約魔術を交わして情報をライツィンガー公爵家にだけ開示する予定だった。


 だからこそ、竜が復活していない今の状況では、竜を鎮めた魔法薬に必要な魔力好循環薬の製法は門外不出。


 秘伝のままだ。


 これからも、それを明かすつもりは一切ない。


 先祖の懸念は正しいだろう。大きな力は使い方を誤れば大変なことになる。


 だからこそ、その知識を引っ張り出してきたロミルダにはきちんとその情報を守りきる責務があるのだ。


 もちろん誰にも渡したりしない。


「すこし今から仲良くなったぐらいで、そんな大切な情報を渡すつもりは無いんだけど……」

「直接的に情報を手に入れられなくとも、その情報を使って得をするかもしれない我らにあやかりたいのだろう」

「……それは……そうね」


 そういう考え方もたしかにあるだろう。しかしなんだか現金な考えかたで、手紙の山を好意的に思うことは難しそうだった。


「まぁ、そのような奴らからはこちらも有用そうな人間とだけ繋がってうまみを引き出せば良い。もちろん放置してもかまわぬ」

「うん」

「任せる。好きにすれば良い」


 最近父はこうしてロミルダに任せるということが増えた。


 これも御前会議での立ち回りのたまものなのだろうか。ただそうであろうと無かろうと、こう言われることは、悪くない。


 一人前として認められているような気分だ。


「ああ、しかし、気は抜くなよ。……頼れる婚約者がいようとも、あまり父に心配をかけてくれるな」


 加えて少しだけ、こうして心配を口に出すようになった。それは今までよりもストレートでわかりやすい言葉だ。


 それもまた少し嬉しい変化だった。「もちろん」と笑ってロミルダは剣術訓練ばかりではなく誘いに少しは乗って見ようかと考えつつ父の部屋を後にしたのだった。



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