51 助け
立ち向かおう。
(やるしかない……もう、それしかない)
途端、剣と剣の打ち合う音が外から響いた。
「な、なぜここがっ!!!」
見知らぬ叫び声がする。ロミルダはすぐに小さな窓から目をのぞかせて、先ほどの襲撃者の一派を見やった。
夜の闇とたき火だけの明かりでは人の顔を認識することは難しい。
影は濃く、それはまるで劇中のような鮮やかな打ち合いで、美しい血しぶきと魔法の光を孕んだ炎がゴウッと燃え上がり、あたりを包む。
あんまりな高出力で魔法を使っているので、襲撃者の一派を襲った何者かは、すぐに魔力切れを起こすだろうとすぐにわかった。
それだけ、後先考えない特攻だったのだろう。
そしてその剣筋には見覚えがある。
「…………まさか」
荒く、取り乱していて我を忘れている獣みたいに獰猛だけれど彼だ。
ロミルダを襲ったであろう襲撃者たちは彼の勢いに圧倒され、奇襲だったことも相まってか背を向け走りだす人すらいた。
そういう人間には目もくれず、彼は即座に視線を巡らせて馬車に目をつける。
呼ばずとも来ると言うことがわかったので、馬車の後方へとゆっくりと足を進めた。
鍵が乱暴に開けられる音がして、それからゆっくり扉が開いた。
近くに来ればやっぱり彼だという確信を持てる。
息を切らして、剣を収め、馬車に乗り込んでくるアレクシスの顔は酷い顔をしていてたまらず呼んだ。
「アレクシス」
「……お嬢っ……っ、お、お嬢っ、よ、良かった。無事、無事か?」
ロミルダが呼ぶと彼は、酷く震える手を伸ばしてぐっと掻き抱くように抱きしめた。
ふとロミルダも体の力が抜けて二人して膝をついた。
アレクシスの声音と、熱すぎるぐらいの体温、うるさいぐらいの心臓の音、それからきつく抱きしめる腕が彼の抱えていた不安や恐怖のすべてを伝えている。
それを感じると一度無理にながして収めた涙がまたにじんでくる。
「……」
「っ……お嬢っ」
存在をたしかめるみたいに呼んで、実感するみたいに抱きしめる。
言葉な少なかったけれど、それだけでどれだけロミルダを想っているのか酷く伝わってくる。
彼の感動が映るようにアレクシスの胸の中でロミルダは小さく息を殺してぽろぽろと涙をこぼしていた。
目が覚めてこの状態でいた時間は長くなった、しかし人生が終わったかもしれない絶望と混乱はまだ体に鮮明に残っている。
恐ろしかったのは事実だ。泣き言をいうのは情けなくて嫌だけれど今はただ、彼の体に重を預けて静かに目を伏せる。
そうしているとやっと、もう大丈夫なのかと思うことができる。
アレクシスがきて、襲撃者を倒してくれた。
だかららもう大丈夫なのだ。
きっとまだやれることはある。
「よかった……」
続けてぽつりと言った彼に、ロミルダは少し体を離して、それからその言葉にしっかりと応えた。
「うん。……ありがとう、アレクシス。助けに来て、くれて」
少し、弱々しい声になってしまったけれど、きちんとお礼を言えた。
しかしアレクシスはまだ実感したりない様子で「ああ」と返事をしてからまたロミルダをギュと抱きしめてしばらく離さないのだった。




