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幼馴染み優先で、私を雑に扱う婚約者は捨てることにしました。  作者: ぽんぽこ狸


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14 泥沼


 

 魔獣増加の情勢もあってそれからの日々はめまぐるしく過ぎていった。


 いつもどおり討伐をしたり、領地や戦術、ブロムベルク辺境伯家に伝わる技術の勉強などロミルダにはやることが多い。


 やってきた春の社交シーズンも、ブロムベルク辺境伯家は魔獣に対抗できる武力を持っているとあって引っ張りだこだ。


 そのせいで知り合いの多い王国騎士団の貴族たちともゆっくり会うことができないうちに、契約している子爵家の領地が魔獣の手に落ちたという連絡が入り、ロミルダは早々に切り上げることになった。


 馬車を用意し乗り込んで帰路につくと、エイミーが名残惜しそうに窓の外を見ながら言った。


「……まだまだ見て回りたい城下のお店も、催しもありましたのに……残念すぎますわ」


 いつになくしょんぼりとしているエイミーにロミルダはなんだか申し訳なくなってくる。


「ごめんなさいエイミー、領地に戻って私が対応するとお父さまに言ったばっかりに」

「……」

「今度、大きな休暇を取られるように調整するのは、どう?」


 ロミルダがエイミーの機嫌を伺いながら言うと、彼女はチラリとロミルダを見やって、それからふるふるとかぶりを振った。


「何を言ってますの! お嬢様ったら! そこにお嬢様がいなくてはどうしますの! わたくしお嬢様と行きたかったのよ?」

「!」

「一人で退屈な休暇を過ごさせというの?」

「い、いいえ! じゃ、じゃあまたすぐ遊びに来ましょう。エイミー」

「ええ、ええ! そういたしましょう!」


 ロミルダが改めて提案するとエイミーの顔にいつもの笑みが戻る。それに、一緒に行きたい言ってもらえたのが嬉しくてロミルダも笑みを深める。


 ブロムベルク辺境伯領に戻ってからも忙しいとは思うけれど、目標はエイミーと旅行で王都に行けるぐらい大きな休暇を取ることだ。


 それを達成できるように頑張ろう。


 まずは、面倒な討伐を片付けなければ。


「……ああ、そういえば、お嬢様! わたくしたちが王都にいる間に決着がついたってしています?」


 ロミルダは、先日聞いた魔獣の話からして、誰がどのような配置についていてどうするかということを考え始めようとした矢先、エイミーはぱっとなにかを思いついてロミルダに言う。


 もちろん決着という言葉だけでは何に決着がついたのかわからない。


「何の話?」

「まぁ! もう忘れてしまったのかしら! 元婚約者の方とその幼馴染みの方の争いのことですわ!」


 エイミーは瞳をキラキラとさせながら言う。


 彼女はなんだか少し楽しげだった。


(元婚約者と幼馴染みと争い……ああ、ラウレンツとユリーナ様の)


「たしか公爵家で問題を起こした後、ラウレンツがユリーナ様との浮気関係を暴露して、ユリーナの婚約者から訴えられた話……だったわよね」


 取っ組み合いの喧嘩を始めて止められた後、その後どんな展開になったのかは見ていないから聞いた話なのだが、ラウレンツがユリーナとの浮気関係を暴露して彼女の噂をあることないこと言いふらした。


 その結果、ユリーナの婚約相手にまでその話が知れ渡り、婚約破棄騒動にまで発展。


 ユリーナはラウレンツを、侮辱罪で訴えたのである。


 そしてその、泥沼具合に今では社交界で彼らに近づこうという貴族は誰一人としていない。

 

 そんな様子だったのだがついに決着がついたらしい。


「どうなったの?」

「結局ラウレンツ様の発言が正しいと判決がくだったようですが……もちろんユリーナ様との浮気関係ですからユリーナ様の婚約者から損害賠償を請求されたそうですわ!」

「……おお」

「おかげでミレッカー伯爵家は火の車、ユリーナ様も不名誉すぎる汚点を背負い修道院へと入れられたのです!」

「そうだったのね……。火の車と修道院、すさまじい結末ね」


 まさかあの件がきっかけになってそこまでの事態になるとはまったく想像していなかったので、ロミルダは結末を言われてもあまり現実味がなかった。


 しかし、そんな調子ではさすがにどちらもロミルダに関わってくることは難しいだろう。


 元より婚約破棄してからあまり興味はなかったが、もう関わることがないと思うとなんだかすこしだけ社交界に向かうのも気分が楽だ。


 エイミーの話が聞けて良かったと思う。


「知れてよかった。ありがとう……ところでよくエイミーは、そんな情報を追っていたわね。私は半分ぐらいを忘れてしまってたし」

「あら、これでもわたくし、腹を立てていましたのよ? お嬢様が鈍感なのをいいことに、ラウレンツ様ったらずいぶんお好きになさっていたんだもの!」


 ロミルダが、聞くとエイミーはプリプリと怒りながらそう言った。


 どうやらラウレンツのことでモヤモヤとしていたのはロミルダだけではなかったらしい。


 よく仕えてくれているので、あまりストレスはかけたくないのだが、またブロムベルク辺境伯家に戻ったらエイミーが怒りそうなこと一件あるのだ。


 なんせ春の社交シーズンの終わりなのである。辺境伯騎士団には、王都や他領から新人がやってくる場合がある。


 新しい見習いが入るだけなら、さほど問題にはならないのだが、新人騎士となると話は別なのだ。


 それで、大体毎年エイミーは怒っている。


 加えて今年は魔獣の増加に、魔獣の手に落ちた領地と来た。


 何も問題なくすんなりと討伐を終えて、いつもの日常に戻れるとは思えなかった。




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