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#10 辿り着い夢の入口 ꕤ︎︎前編ꕤ︎︎



───あの頃からの夢、絶対叶えたいんだ。


理子から目を離さずに、真っ直ぐ投げられたハルトの言葉。

それはしっかりと理子の胸に届いた。


「そんなに昔から想ってくれてたんだ…」


理子の胸が、じんわり暖かくなる。


「姉ちゃんがここに来た日に言ったろ。初恋は姉ちゃんだって」


ハルトは食卓に視線を落とし、箸先でおかずをつまむ。


「うん、覚えてる。でも冷めたって…」


「そう言っただけ。ほんとはずっと、片思いしてた」


照れる顔を押し隠しながら、ハルトはおかずを口に運んだ。


「……ごめんね、気づかなくて」


ほんの少しだけ責めたくなる気持ちを抑えて、ハルトは理子を見た。


「ほら、おかず、食っちまうぞ」


理子は慌ててまた箸を持って、残り少ないおかずをつまんだ。


「でもさ、」


理子は口をもぐもぐさせて、飲み込んだ。


「実家へ行くって話、お父さんとお母さん、私たちのこと理解してくれるかな……心配」


理子は表情を曇らせて、目を伏せた。


「理解してもらえなくてもいいよ。それでも俺の気持ちは絶対変わらないから。一生、姉ちゃんのことが好き」


ストレートに胸を刺す。

理子は思わず箸を落としそうになった。


ハルトがこんなにも言葉で愛情表現を示してくれるなんて……理子は静かに食事するハルトをまじまじと見つめた。


「なに?」


「べ、べつに」


視線を向けてきたハルトに、理子は慌てて首を横に振って目を逸らした。


ふと、沈黙が落ちる。

理子が思い出したように口を開いた。


「あ…そうだ…」


ハルトはグラスに手を伸ばし、口をつけた。


「今夜から……いっしょに寝る?」


恥ずかしそうに聞く理子の言葉に、ハルトは思いきり咳き込んだ。


「ちょっと、なに動揺してるのよ」


「姉ちゃんが変なこと言うからだろ!」


咳き込むハルトを見ながら、理子は小さく息をついた。


「だってあんた、いつも私にベッド譲ってくれて、自分はソファで寝るでしょ。なんだか悪くて」


「今更だろ……」


ハルトは呼吸を整えながら、理子を見やった。


「前はそれでもよかったの。でも今は、もう付き合ってるんだから、いっしょに寝てもいいかなって思ったのよ……」


理子は視線を泳がせてから、チラリとハルトを見た。

ハルトは理子と一瞬目を合わせ、すぐに顔をそむけた。


「……いや、いい。当分またソファで寝る」


「据え膳食わぬは男の恥、よ」


理子がからかうように言うと、ハルトはふっと笑って理子を見た。


「なに?襲われたいわけ?」


ほんの一瞬、視線が絡む。


理子はハルトを冷ややかに見つめながら、ガタッと椅子の音を立てて立ち上がる。

前のめりになり、ハルトの額に思い切りデコピンをした。


「イッテ!」


「生意気言ってんじゃないわよ」


それだけ言うと、理子は何事もなかったかのようにまた椅子に座り直し、食事を再開した。


ハルトは額を押さえたまま、小さく息をつく。


「じゃあ次の土曜日、実家な。忘れんなよ」


実家。

その短い言葉に、理子の心が少し緊張した。






「ねぇ、ほんとに行くの?まだ引き返せる」


ドアが開いたまま停車している電車。

その座席に座る理子は、すこし不安を滲ませた瞳でハルトを見た。


「行くに決まってるだろ。なんだよ急に」


ハルトは呆れたように笑う。


「じゃあハルトひとりで行って。全部話してきて」


理子は真剣な目で言い終わると、立ち上がろうとする。


「ちょっと待てって」


すぐにハルトに腕をひかれて座席に引き戻されるように尻もちをついた。理子はハルトを軽く睨んだ。


「ふたりのことだろ?」


ハルトのその言葉に、理子の息が詰まる。

次の瞬間、理子は顔を歪めて、息を思い切り吐き出した。


「わかってるけど~!」


そして急に口元に手を添え、小声になって話し出す。


「離婚して、弟と付き合ってますなんて聞いたら……」


そこまで言って、理子は息をつき、元の声に戻した。


「怒られるに決まってるもん…」


その時、アナウンスが流れ、ドアが静かに閉まっていく。


「あ……」


理子は小さく肩を落として、ハルトをチラリと見た。


「だいたい、どう切り出すのよ。いきなり真実を言ったらお父さんもお母さんも卒倒するかも」


電車がゆっくりと走り出す。

流れ始めた景色を見て小さくため息をつく理子の隣で、ハルトが小さく笑った。


「俺が切り出してやるから安心しろよ。それに怒られてもいいじゃん。昔みたいで懐かしいしさ」


「はぁ?」


ハルトの呑気ぶりに、理子は顔をしかめた。


「昔さ、姉ちゃんとふたりで遊んでたら、父さんの大事にしてたウイスキー割っちまって、すげー怒られたよな」


「ああ、あの時ね……」


規則的な走行音を耳にしながら、理子は記憶の糸を手繰った。


「夜遅くまで、正座でくどくど説教されてさ。姉ちゃん寝てんだもん。俺が突っついて起こしてやってさ。よくあの状況で寝れたよな」


「逆にあんたは、よく寝ずにあのつまんない説教に耐えられたわよね」


「寝れるわけねーだろ。すげーこわかったんだから」


「これからその、すげーこわいお父さんに話すのよ。こわくないわけ?」


「こえーよ」


ハルトの恐怖する表情に半分、笑いが浮かんでいた。


「でもあの時と同じで、隣に姉ちゃんがいるから。ああいう状況でも、楽しくいられるんだよな」


さらりと言われたその言葉に、理子は思わず恥ずかしくなり、さりげなく顔をそむけた。

その横顔に、ハルトはそっと耳打ちした。


「この山乗り越えたら、チューしてやるよ」


ふざけて笑うハルトを、理子は勢いよく振り向き両頬をつねった。


「イテテテテテテ!」


周りの乗客が一斉に振り返った。

理子は手を離し、そっぽを向いた。


「生意気」


低く呟き、理子は口元に微笑を浮かべた。






都内から電車で一時間ほど。ふたりは郊外の駅に降り立った。

実家の最寄り駅は、駅ビルが隣接し、商業施設にもつながっているせいか、大勢の人で賑わっていた。


改札を抜けると、見慣れない景色にふたりして足を止めた。


「わぁ。何年か来ないうちに、ずいぶん変わったわね」


改札口の前は開けていて、まるで憩いの場とでもいうように、ベンチや植木が丁寧に揃っていた。


カフェや飲食店、高級スイーツの店までもが並び、理子の記憶にある最寄りとはまるで違っていた。


「出口聞いてくる。ちょっと待ってて」


ハルトはそう言うと、少し離れた窓口へ足早に向かっていった。


理子は行き交う人々の邪魔にならないよう端に寄り、すこし壁にもたれた。

すると。


「お姉さん」


語尾を弾ませた低い声に振り向くと、若い男が立っていた。


「うわ、タイプ。ひとり?誰かと待ち合わせっすか?」


短髪の黒髪で、アクセサリーを少しつけて。

清潔感はあるが、女慣れしていそうな無警戒な笑顔は、いかにも軟派そうな男だった。


理子は愛想笑いを浮かべ、軽く頷いた。


「……彼を待ってます」


「え。彼って彼氏?なんだ、彼氏待ちか~。いっしょにカフェでも行きたかったのに。じゃあさ、お姉さんの連絡先だけでも───」


「なんか用っすか?」


低い声が、男の言葉を遮った。

理子が振り向くと、正面には、男をジトッと見据えるハルトが立っていた。


「え、あ……彼氏?」


男が焦った様子で理子に問うと、理子は無言で何度か頷いて見せた。


「ナンパなら、他当たってもらっていいっすか」


静かな低い声が、脅威を滲ませていた。


「……あー。すいません」


男は苦笑いを浮かべ、その場を離れていった。


「……ったく」


男の背を見送るハルトが呟いた。


「姉ちゃんがそんなピッタピタな服着てるから──」


そう言いながら理子を振り向くと────


「ハルト、ありがとう。すっごく怖かった」


ハルトの小言は、理子の甘い声に遮られる。


潤ませた瞳で上目遣いをする理子の姿は、助けられた子犬のようで、嬉しそうにしっぽをパタパタと振っているようにも見えた。

その無垢な可愛さが、ハルトの胸を鷲掴みにした。

ハルトは理子を見つめたまま、固まって動けなくなる。


「……なーんてね」


理子がイタズラっぽく笑い、パッといつもの理子に戻ると、ハルトは面白くなさそうな表情を浮かべた。

一方で理子は、先に立って歩き出そうとする。


「ほら、ハルト、行くよ。どっち?」


「左……」


左に行こうとする理子の背を見ながら、ハルトは笑った。


「うそだよ。右~」


理子はくるりと向き直り、ハルトをわずかに睨んだ。

理子はハルトに駆け寄より、人混みの中でまた言い合い、じゃれ合う。

ふたりのリズムを整えるように。


「ねぇ、手土産買って行こうよ」


「おお、そうだな。母さんにはケーキ、父さんにはウイスキーにするか?」


雑踏の中、ふたりは自然と手を絡めた。






強ばった指先でインターホンを押した。

ピンポーンと大きく鳴ると、理子は指先を引っ込めた。


「はーーーーい!」


家の中から大きな声がして、しばらくすると扉が勢いよく開いた。


「あらぁ、理子ちゃん、ハルト。待ってたわよ。久しぶりね~さ、入って入って」


三浦早苗は陽気に笑い、ふたりを家の中に招き入れた。


「久しぶり、お母さん。ごめんね、突然」


「全然いいわよ。でも何日か前に理子ちゃんから、ハルトとふたりでこっちに来るって連絡もらった時は驚いたけどね。なに、なにかあったの?」


理子は一瞬、隣で靴を脱ぐハルトと目を合わせたが、すぐに母に向かって笑顔を浮かべた。


「ちょっとたまには、近況報告でもしようかなって。それに、久しぶりにお母さんとお父さんに会いたくて」


「あらぁ、嬉しいじゃない。」


「あ。これ、手土産のケーキ」


理子が持っていた水色の袋を、顔の高さまで上げると、早苗の顔がパッと明るくなった。


「まぁ!TOPS!気が利くわね~。でも手土産はいいから、たまには顔見せに来てちょうだい」


早苗の、遠慮はいらないわよと訴えるような瞳に、理子は小さく頷いた。


「うん」


その口元に、ふっと笑みが浮かぶ。


「ハルト、あんたもよ」


早苗がハルトを鋭く見ると、ハルトは照れくさそうに笑った。


「おう」


「それじゃほら、リビング入って~。お父さんも首を長くして待ってるんだから」


早苗がリビングへのドアを開けると、懐かしい光景といっしょに、懐かしい匂いが、理子とハルトの鼻をかすめた。


ゆったりとしたリビングダイニング。

どこか生活感がありながらも、きちんと整えられたその部屋は、来るたびに、理子とハルトの心を一瞬で昔にタイムスリップさせる。


「おお。ハルト、理子。よく来たな」


ダイニングのテーブルで新聞を読んでいた三浦孝介は、ガサガサと音を立てて新聞を畳んだ。


「お父さん、久しぶり」


理子はダイニングテーブルに近づき、孝介の顔を見つめた。


「元気そうでよかった」


娘の言葉に孝介は照れくさそうに笑った。


「お前たちはどうしてた。もう何年も顔を見せないで。3年ぶりくらいか?」


「ふたりとも元気よ」


そう答えた理子の隣で、ハルトが紙袋をテーブルの上に置いた。


「父さんこれ、手土産」


孝介はハルトと理子の顔を交互に見ながら、紙袋に手を伸ばした。


「悪いな。……おお、ローヤルか。父さんの大好きな酒だ」


紙袋から出してそのものを見つめると、孝介の表情が柔らかく崩れた。


「ありがとな、ふたりとも。ほら、座れ」


「そうよ、座って座って。今お茶入れるわね」


そう促され、理子とハルトは一瞬、顔を見合わせて微笑みあうと、椅子に腰を下ろした。

その後ろを早苗がドタバタと通り過ぎ、キッチンへ入っていった。


「修司くんはどうしてるのー?」


早苗が用意していた急須にお湯を注ぎながら聞いた。理子は少し慌てて咳払いをし、キッチンの方を見た。


「えっ、げ、元気よ。元気、元気」


ハルトは一瞬、眉をひそめた。


「いっしょに連れてくればよかったのに~」


早苗はお茶が入った湯呑みをトレイに乗せて運び、それぞれの前に静かに置いた。


緑に澄んだ表面から、ふんわりと湯気が立ち上がり、理子はどこか懐かしさを感じた。


「修司は今日も明日も休日出勤なのよ」


平静を装う理子の横で、ハルトがチラリと理子を見やった。


「あら~、そうなの。大変ね」


早苗はテーブルの真ん中に煎餅や饅頭が入ったお皿を置いて、孝介の隣に腰を下ろした。


「それで?あんた達の近況、教えてちょうだい」


にこやかに笑う早苗によって、口火が切られた。

ハルトと理子は、また小さく顔を見合わせた。





両親の背にある掃き出しの窓の向こうには、広い庭が広がっていた。

穏やかな雰囲気が漂うその光景に、理子は今の自分との落差を感じていた。


「どんな近況なんだ?」


孝介がハルトと理子を交互に見やる。


口を開こうとしない理子に、ハルトは見かねて、小さく息をついた。


「実は姉ちゃんさ……」


ハルトが一呼吸置いたところで、理子は口を開いた。


「実はね、私ね、2キロ痩せたのよ。わかる?」


理子は頬に両手を添え、何パターンかポーズを決めた。

3人の視線が理子に集中する。


「……わからん」


孝介が、低く吐き捨てた。

そのとき────。


「あら、理子ちゃん……結婚指輪してないの?前はしてたわよね?」


早苗の視線が、理子の手元に落ちた。


「あ………」


理子は思わず、右手で左手を包み込むように隠した。


「姉ちゃん、つい最近、離婚したんだよ」


ハルトがぶっきらぼうに言うと、孝介と早苗は目を丸くした。


「えっ!?」


ふたりの声がきれいに重なった。


「離婚!?本当なのか、理子」


「何があったのよ、理子ちゃん」


ふたりの言葉を聞きながら、理子はハルトを睨んだ。


「どういたしまして」


ハルトは肩をすくめた。


「あいつ、理子に何かしたのか?」


孝介の目が怒りに燃えていた。

理子は目を伏せた。


「……不倫されたの。」


「不倫!?」


孝介と早苗の声が、またきれいに重なった。


「それでわたし、ハルトの家に転がり込んで…。そしたら修司が謝ってきたんだけど、拒否したらストーカーまがいなことまでされて」


「どうして父さんたちに言わなかったんだ」


娘を思うがゆえに、孝介の口調が強くなる。


「私たちはいつでも理子ちゃんの味方よ?」


早苗の瞳には深い愛情が滲んでいた。


「……ハルトがいてくれたから」


理子はぽつりと呟き、かすかに口元に笑みを浮かべた。

少し顔を上げると、ハルトと一瞬目が合った。


それから、ゆっくりと顔を上げ、理子は孝介と早苗をまっすぐ見つめた。


「ハルトがいろいろ助けてくれたの。ハルトがいてくれたから、立ち直れた」


ハルトは黙ったまま、またすぐにどこか照れくさそうな顔をした。


孝介と早苗は心配が抜けきらない顔で、互いに顔を見合わせた。


「そうか……ハルト、世話になったな。ありがとう」


孝介は視線に想いを込めて、ハルトを静かに見つめた。

ハルトは小さく首を横に振って、視線を落とした。


「ハルトは昔っから理子ちゃんの世話焼くの、好きだったものね~」


早苗がそう言って笑い、お茶をすする。

ハルトは余計なことを言う母親のことをじろりと睨んだ。


「そうだったか?」


孝介は早苗の方に顔を向けた。


「やだ、お父さんおぼえてないの?理子ちゃんが落ち込んでると熱心に励ましたり、出かけると心配だからついて行ったり、デートや合コンにまで行こうとしてたのよ」


理子は口元に手を当て、クスクス笑った。

その隣で、ハルトは居心地の悪さに顔をそむけた。


「ほぉ。そうだったか。それで?ハルトの近況は?」


突然話を振られ、ハルトはドキッとする。


「あ……いや……。その……」


そのとき────

ピンポーン!とインターホンが鳴り響いた。


「はーーーい!」


早苗が立ち上がり、バタバタと玄関へ向かう。

ハルトは小さく息をつき、心を落ち着かせた。


玄関から、誰かと話す早苗の弾んだ声が聞こえてくる。


「ああ、井戸端会議だ。こりゃ長いぞ」


孝介は苦笑まじりにそう言った。





早苗が玄関の扉を閉めたのは、日が暮れ始めた頃だった。

オレンジ色と群青色のコントラストが滲む空。どこかでカラスが鳴いていた。


「ごめんね~。遅くなっちゃって。あの奥さん話長くて。なかなか終わらせてくれないの」


リビングダイニングに戻ってきた早苗は、悪びれもなく笑った。

ダイニングテーブルの上には、煎餅や饅頭の空いた袋が無造作に置かれていた。

孝介と客人ふたりは、すっかり待ちくたびれた様子だった。


理子がリビングの時計に目をやると、16時を過ぎていた。


「あ。私たち、そろそろ帰らないと。ね、ハルト」


理子は立ち上がり、帰り支度を始めようとする。


「は?」


頬杖をしていたハルトは眉を寄せ、理子を見上げた。


『まだ俺たちのこと話してねーだろ』と目で訴える。

理子は一瞬、視線を合わせると、

『その話はまた今度でいいの』と、わずかに首を横に振った。


「何言ってるの。今夜は泊まっていきなさいよ~!積もる話もまだまだあるし、ねぇ、お父さん」


早苗が後ろから理子の肩に手を置いて、弾んだ声で言う。


「そうだな。泊まっていきなさい」


理子は焦って、口を開いた。


「か、帰らなきゃ。ハルト、明日、し、仕事でしょ?」


「……休み。ちなみに姉ちゃんも、休み」


『こいつ裏切りやがって~!』と理子はハルトに憎しみの目を向けたが、ハルトは素知らぬ顔で、口元に笑みを浮かべていた。


「じゃあ泊まっていけるわね!でも部屋がね…」


早苗は少し言いづらそうに口を開いた。


「あなた達の部屋、今、物置にしてて寝るスペースがないのよ。だから、和室に布団敷いて、ふたりで寝てちょうだい」


理子とハルトの表情が、同時に固まったのを、早苗も孝介も気づいていない。


「いいわよね?あなた達、昔いっしょに寝てたし」


「たまに会った姉弟で、話すこともたくさんあるだろうしなぁ」


無邪気に盛り上がる両親を尻目に、理子とハルトは目を合わせると、すぐに逸らしたのだった…。



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