32話パレードの終わりと不穏な鐘
「——ッ!!」
魔物の腕が、大木を薙ぎ払うような速度で横に振られる。
「くっ!」
俺は瞬時に身を低くし、避ける。
その直後、俺の背後で建物が吹き飛んだ。
「威力がやばい……!」
一撃でも当たれば、ひとたまりもない。
「……ケンイチさん、正面は私たちが引きつけます」
エスメラルダが前へ出る。
「お前は後ろから一撃を入れろ!」
ベアトリーチェが叫び、すぐさま駆け出した。
「いくなの!!」
フェリシアが魔物の足元へと飛び込む。
エスメラルダは剣を構え、正面から魔物の視線を引きつける。
「……光よ」
彼女の剣が淡く光り、斬撃とともに魔物の胸を切り裂く——が、鱗が硬く、深くは入らない。
「この……!」
ベアトリーチェは拳を振り下ろし、魔物の膝を狙った。
だが、鱗に弾かれる。
「硬ぇな……だが、効いてないわけじゃねぇ!」
ベアトリーチェはすぐさま後退し、次の隙を狙う。
その間に——
「なのっ!」
フェリシアが魔物の足元に飛び込み、小回りの効いた素早い攻撃を繰り出した。
足の関節や隙間を狙い、短剣で何度も斬りつける。
「よし、これなら——」
しかし。
「……グォオオオオ!!!」
魔物が咆哮し、巨体を揺らすと——
三姉妹の攻撃が、すべて振り払われた。
「っ!!」
エスメラルダとベアトリーチェはすぐに距離を取るが、フェリシアは避けきれず魔物の足に蹴り飛ばされる。
「フェリシア!!」
「っ……なの……!」
彼女は転がりながらもなんとか体勢を立て直したが、一撃の威力が尋常ではない。
このままでは、三姉妹が危ない。
「…こんなおっさんでも意地はある!!」
俺は剣を握り直し、魔物の背後に回り込んだ。
「お前の相手は……俺だろ?」
魔物が俺に気づき、振り向こうとする。
その瞬間——
俺は一気に跳躍した。
「おおおおおおおお!!!」
剣に全力の力を込め、魔物の背中に向かって——
渾身の一撃を振り下ろした。
——ズバァァァァンッ!!
魔物の背中を裂くように、剣が振り抜かれる。
「……!?」
今までの攻撃とは違い、俺の剣は深く食い込んだ。
(いける……!)
俺の攻撃が通るなら、勝てるはずだ。
「ケンイチ! もう一撃いけるか?」
「やるしかねぇだろ!」
三姉妹が再び魔物を牽制する。
そして——
俺は魔物の首元を狙い、もう一度跳躍した。
「これで——終わりだぁぁぁ!!!」
最後の一撃を振り下ろし——
——ズシャァァァァッ!!
魔物の首が地面に転がった。
しばらくの沈黙の後——
「……やった、なの!」
「終わった……のですね」
「はぁ……はぁ……やれやれ、骨が折れたぜ」
そして—
「お疲れ、ケンイチ!」
三姉妹が、俺の背中を力強く叩いた。
「……おじさんをいたわってくれないか?」
こうして、俺たちは巨大な魔物を討伐したのだった。
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モンスターパレードの終結後、俺たちはギルドの人たちとともに後片付けに追われていた。
戦場となった街の外には、倒されたモンスターの死骸が転がっている。
兵士たちは手際よく解体し、使える素材を仕分けていた。
俺も手伝いながら、ふと遠くの城を見上げた。
戦いが終わってからも、あの城の最上階に明かりが灯り続けている。
すると、突然ギルドの使者が俺たちのもとに駆けつけた。
「ケンイチ様、王城の将軍からの呼び出しです!」
「……将軍??」
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俺たちは城へと招かれた。
最上階の広間に通されると、すでに何人もの権力者たちが待ち構えていた。
中央に座するのは、この国の将軍——ガルヴァン・レオンクスというらしい。
老練な顔つきに鋭い眼光。歴戦の将らしく、纏う空気には威圧感がある。
「よくぞ戦ってくれた。君たちのおかげで、我が国アルルカンは壊滅の危機を免れた。」
将軍の言葉に、周囲の重臣たちも頷く。
「特に、お前の力は目を見張るものがあった」
視線の先には俺——ケンイチがいた。
「……俺はただ、できることをしただけですよ」
「謙遜するな。お前がいなければ、あの巨大な魔物を討伐するのは困難だった」
将軍はそう言うと、立ち上がり、俺に向かって一歩踏み出した。
「——ケンイチ。お前に頼みがある。」
「……頼み、ですか?」
「この国に留まってくれぬか?」
その瞬間、広間がざわついた。
それはまるで、「やはりそうなるか」と納得する者たちと、「そんなことが可能なのか」と驚く者たちの声だった。
「あなたの力があれば、国の戦力は飛躍的に上がる。願わくば、王直属の騎士団の将として迎えたい。」
「……すみませんが、その話は受けられません。」
俺はすぐに答えた。
「……何?」
将軍の表情がわずかに険しくなる。
「俺には、帰る場所があります。修道院です。」
「修道院……?」
「俺は修道院の院長として働いています。ここで戦ったのはたまたまの縁ですが、俺には俺の守るべき場所がある。」
俺がそう言うと、三姉妹やセラフィーナが静かに頷いた。
「ふむ……それは理解した。しかし、だからといって、お前の才能をみすみす見逃すわけにはいかん。」
「……将軍?」
「しばらくこの国に滞在するのはどうだ? 期間を決めて、国の防衛に力を貸してもらえればいい。」
「……」
将軍の視線には本気が宿っていた。
「ただの戦力としてではない。お前にはこの国の“戦略”にも関わってほしい。」
「……」
俺は一瞬、考え込んだ。
ここに留まれば、確かに国の助けにはなるかもしれない。
しかし、それは俺の本分ではない。
「申し訳ありませんが、今すぐに決めることはできません。今日はもう遅いですし、一度持ち帰って考えさせてください。」
俺がそう告げると、将軍は少し考え込んだ後、深く頷いた。
「……よかろう。だが、そう長くは待てんぞ。」
「ありがとうございます。」
俺は一礼し、三姉妹と共に広間を後にした。
翌朝、再び鳴る戦の鐘
俺たちは城を出て宿へ戻り、一晩休息をとった。
だが、次の日——
——ゴォォォォン……!!
「……鐘?」
重く響く鐘の音が、街の空に鳴り響く。
「なんだ?」
宿の窓を開けると、街のあちこちで兵士たちが慌ただしく動いていた。
「まさか……またモンスターパレードか?」
「いや違うぞ!!戦だー!!」
「戦が始まるぞー!!!」
俺は剣を手に取り、三姉妹と共に外へ飛び出した。




