31話モンスターパレード②
戦いの火蓋が切られ、街の外は騒然としていた。
モンスターたちは咆哮を上げながら押し寄せ、城壁の前で兵士たちが迎え撃つ。
戦場の中心では三姉妹が先陣を切っていた。
「エスメラルダ、左の隊の支援を頼む!」
「了解です!」
「フェリシア、下がるな! 一気に突っ込むぞ!」
「なの!」
「くそっ、こいつら手強いな……なら、まとめて吹き飛ばす!」
ベアトリーチェが拳を振り下ろすと衝撃波が発生し、前方の魔物たちをまとめて吹き飛ばした。
(……三姉妹、すごいな)
俺は中線に立ちながら、その光景を見て思わず息をのんだ。周りの兵たちも空いた口が塞がらないようだった。
彼女たちは軽やかに、しかも強靭な力で次々と魔物をなぎ倒していく。
その背後で、兵士たちも奮闘している。
それに比べて——
「俺は、前線に抜けた敵を切るだけか……」
俺の仕事は、戦線を抜けてしまった敵を迎撃することだった。
「こんな仕事...」
酒造りをしたいだけなのにな...
ギルドの戦士や兵士たちが必死に戦っているが、それでもどうしても突破されるやつがいる。
俺はそんな魔物を相手に、剣を振るうだけの地味な作業を繰り返していた。
しかし——
「ぐるるる……!」
俺の前に現れたのは、巨大な牙を持つ狼型の魔物。
その鋭い眼光が俺を捉えたかと思うと、一瞬で間合いを詰めてきた。
「速っ……!」
反射的に体をひねり、魔物の爪をかわす。
そして、そのまま剣を横に振った——
ザシュッ
次の瞬間、狼型の魔物は一撃で両断された。
確かに、俺は戦闘経験は少ないが、剣の扱いはそこそこできる。
「うおぉぉぉ!」
「負けるなぁぁ!」
周囲では兵士たちが必死に戦っている。
魔物たちはかなり強い。
以外に俺も戦えている。
——レベルが上がりすぎているのか?
——いや、それだけじゃない。
(……そうか、酒のバフか?)
戦闘前、皆でエールを飲んで身体を温めていた。
あの時、皆「身体が軽くなった」と言っていたが……俺も例外ではなかったようだ。
「ってことは、俺も……」
俺は、作業する時用にお酒を小分けに瓶に入れて持ち歩いていた。戦闘前に飲んだのが吉と出た。
目の前にまた別の魔物が現れた。
今度は二足歩行の巨体を持つオーガのような存在。
「おらぁっ!」
俺は、試しに全力で剣を振るった。
ズバァン!!
……衝撃音とともに、オーガは真っ二つになった。
(やっぱり……)
このバフ、想像以上に強い。
「う、うおお……!? ケンイチさん、すげぇ……!」
俺の戦いを見ていた兵士の一人が、驚きの声を上げた。
「ちょっと待てよ……そんな簡単に倒せる相手じゃ……」
「ま、まさか……ケンイチさんも名のある武将なのでは!?」
(……いや、俺はただ酒の効果で強くなってるだけなんだけど!?)
そんなことを考えているうちに、気づけば俺の周りに魔物の死骸が積み重なっていた。
「すげぇ、ケンイチさんがいるから安心だ!」
「うおおおお! こっちも負けてられねぇ!」
兵士たちの士気が一気に上がる。
(……なんか、変なことになってきた)
俺はただ魔物を切っていただけなのに、まるで戦場の英雄のような扱いになってしまっている。
そして——
「ケンイチ! こっちだ!」
三姉妹の声が響いた。
俺が振り向くと、そこには巨大な魔物が立ちはだかっていた。
兵士たちがその前に立ちはだかるも、まるで相手にならず吹き飛ばされている。
「こいつ、他の兵じゃ手に負えないみたいなの!」
「私たちでやるしかないですね……!」
「よし、ケンイチ、お前も手伝え!」
ベアトリーチェが拳を構えながら言う。
「えっ、俺も!?」
「当たり前だ!」
三姉妹の視線が俺に集中する。
(……もう、流れでここまで来たんだ。やるしかないか)
俺は覚悟を決め、剣を構えた。
「よし、行くぞ!」
俺は、三姉妹とともに、最後の強敵へと立ち向かった。
戦場に響くのは、唸る風と魔物の咆哮。
俺たちの目の前には、異形の巨体がそびえ立っていた。
その魔物は、二本の巨大な角を持ち、全身が黒い鱗で覆われている。
腕は異様に長く、大地を抉るように振り下ろせば、それだけで地面が揺れるほどの威力。
「……こいつ、やばいぞ」
俺は息を呑んだ。
今までの魔物とは明らかに格が違う。
この魔物がどれだけの兵士を薙ぎ払ったのか、辺りに転がる武器と無残な跡が物語っていた。
「……やるしかないですね」
エスメラルダが静かに剣を構える。
「このサイズ……普通にやっても倒せねぇな」
「みんなでやれば、なんとかなるなの!」
——ドンッ!
魔物が片足を地面に叩きつけると、それだけで衝撃が広がる。
砂埃が巻き上がり、視界が揺れた。
「くるぞ……!」
次の瞬間——魔物が動いた。




