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12/20

12 第六夜

 火曜日、新しい可能性について考え出した俺は、夜になるのが待ち切れなかった。

 仕事もそこそこに、今日も定時で帰宅する。横の同僚が不思議そうに「どうしたの? まさか彼女でもできた?」と聞かれ、俺はただ笑ってやり過ごした。

 帰宅した俺は、早めに夕食を終え、灯りを消してベッドで横になる。

 だが、さすがに色々考え過ぎて寝付けない。頭の芯がずっと興奮したままなのがわかる。変に早く寝ようとしたのもいけなかった。

 その夜、もう何度目になるか、暗い部屋の中、瞼を開けた。

 ほの暗い部屋の中にぼんやりと浮かぶ家具や壁、天井のほの白い輪郭を見上げていた。

 もう何時だろうと思ったが、時計は見ないようにした。

 ここんところ、仕事に集中できてない分、職場でのやることは溜まっていた。それを思い出してしまうと、余計に寝れそうになくなってきた。

 そのまま俺は何度も寝返りを打って長い夜を過ごした。

 そして、明け方近く、ようやく夢を見た。


――俺は車を走らせていた。

 流れる車のテールライトの赤い列。

 目の前の時計は、18:56。

 時間を無駄にすることはできない。

 素早くハザードランプをつけ、車を路肩に寄せる。俺は後座席のバッグから携帯を取ると、素早く《しず》と打った。

 ここまでは同じ。さらに、

《駅で待って迎えに行く》

 新しくできた時間があるから、ここで焦らなくてもいいはずだ。素早くそれだけ打って送信した。

 携帯をハンドルの側に置いて、よく見えるようにすると、すぐにウインカーを出して車を出した。

 車が連なる速い流れの車線に多少強引に割り込んだ。大きなクラクションを鳴らされる。

 雲出大橋を渡った次の交差点でUターンし、今来た道を戻る。

 雫のいる南が丘駅まで、この時間だとどのくらいかかるだろう。

 ただもう一度、雫の顔が見たかった。

 あいつに会えるかもしれない。それだけで脳内がカッと熱くなっていた。

 だが、津へ向かう上り車線は混んでいた。車はすぐに渋滞、なかなか前に進まなくなった。赤いテールランプの列は遥か向こうまでびっしりと続いている。

 18:59

《何かあった?》

 返事がきた。

 新しい雫の言葉だ……。

 俺は、ちらりと携帯の画面を確かめ、「よし!」と声に出した。

 車は、少し進んでは止まるを繰り返した。

 ラジオのアナウンサーの低い声が、東京で起きた地震の話をしているのに気づく。

 あれ? 

 時計を確かめると、19:02の文字。

 時間が進んでいた。

 前の車が動き出したので、俺は慌ててアクセルを踏み込む。

 また新しい時間に入った。

 車はノロノロながらも、着実に前へ進む。

 交差点を一つ、二つ越えて雫の待つ駅に近づく。

 もう一つ、次の信号を……、

 そこまでだった。

 

――目覚めた俺は、思わず「やった」とつぶやく。

 夢が延びた。最後は確か、19:05。

 四分延びた。

 雫の言葉が変わった。ちゃんと言葉を交わせるってことだ。

 彼女はあの時間の中で、まだ生きているんだ。

 俺は拳を固く握りしめた。

 会いたいという思いが熱を持って膨れ上がってくる。

 でも、あの先をどうすればいい?

 会うにも遠い、あの短い夢の中で。

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― 新着の感想 ―
 ひとつのことに集中してたくさんの時間を費やすことができる人 継続力のある人は尊敬できるなあ
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