僕はいつの間にか、ギルドマスターになった
僕は戦いが嫌いだ。
なぜなら、単純に戦いの才能がないからだ。戦場に出ればすぐに死ぬだろう。
だから僕はパーティに加入した。一人だと絶対に死ぬから。
加入したパーティは僕を入れて6人だった。初心者パーティという触れ込みだったので加入したけど、そんなことなかった。
でも、なぜか僕が組んだパーティメンバーはみんなすごくて、才能に溢れていた。弱小パーティの一つだった僕たちが、この街を代表するパーティになるのに時間は掛からなかった。それもこれも周りのお陰。
そのはずなのになぜか、仲間たちは「キミがあの時、一歩下がってと言ってくれなから私の命はなかったよ。本当にありがとう、やっぱりキミには敵わない」とか言ってくる。それは僕とあまり距離を取られると、いざという時に護ってもらえないかもしれないからだ。
でも、さすがにそれを面と向かって言うわけにもいかないので、適当に「キミが無事で良かった」とか言ったけど。
キミたちは強いから大丈夫だろう。でも、僕はそうじゃない。キミたちが護ってくれないと普通に死ぬ。
それ以外にも「お前はオレたちの光だよな。オレもお前に追いつけるように頑張るぜ」とか言ってきたりもする。僕ってただのお荷物だよ。それがなんで『光』なんだよと突っ込みたくなるけど、彼ら彼女らはそれを否定されても聞く耳を持たない。まるで自分たちが絶対に正しいかのように。
そしてまた時が経ち、僕たちパーティはギルドを結成した。
パーティとして登録できるのは9名までだ。10名以上でパーティを組む時はギルドとして登録しなければならない。
どんどんメンバーが増えていったので、ギルドにせざるを得なかったのだ。僕としてはこの人たちについて行ったらいつか死ぬんじゃないかと思って、何度かメンバーに話したけど、結局説得されて残ってしまうのだ。僕の意思がもっと強ければ抜けられるのに。
もっと時が経ち、僕たちのギルドはかなりの人数が所属するものになった。それも強者揃いで、一人一人にご指名の依頼が来るぐらいだ。
もちろん、僕には来ない。
だって僕は名をあげていないから。ていうか、強くないし、頭も良くないし、仲間のお陰で生き残っただけだし。
そしてもう少し時が経って、僕はギルドマスターになった。
なんで。
本当になんで。
口車に乗ってしまったのが運の尽きだったのかな。
僕はギルドマスターになんてなりたくなかった。
でも、なってしまった。
何故かというと、それはメンバーたちから『お前しかいない』とか『あなた以外に適任はいないのだから認めて』と言われたりした。
もちろん、断った。
でもその夜にあるパーティメンバーが訪ねてきた。
そのメンバーというのが『メアリー』と言って、唯一僕の無能さを知っている存在。他のメンバーはいくら無能だと言っても信じてくれないのだ。
そのメアリーが僕に言ったのが「ギルドマスターになった方がいい。ギルドマスターであれば前線に出る機会は減るだろう。そうなれば命を落とすリスクは極めて低くなると言っても良い。だからこそ、この提案に乗るべきだ」ということだった。
そう言われると確かにこのまま前線に出ていたらいつ命を落としても仕方ない。
それからの日々は戦場に出ず、事務仕事がほとんどだった。メアリーの言った通りで事務仕事をしていた方が僕にとっては全然いい。
そしてそれから数年して久し振りに戦場に出て、僕は両腕と両足を麻痺状態に片目を失明という代償を背負うことになった。
まぁ…みんなを救えたからよかったけど、もう二度と前線には出たくないと思わせるには十分な経験だった気がする。
でも今は前線に出るとか出ないとかの話の前に、ギルドメンバーの現状がヤバい。僕の怪我に責任を感じて、僕のところにお見舞いに来ては頭を下げたり、泣きながら謝ってきたり、静かにじっと見つめられたりと色々だ。
今までのギルドメンバーを知っている僕からすると、明らかにおかしい。なんでそこまで責任を感じているのか全く分からない。
今まで助けられていた人間がやっと助けられるタイミングが来たから、助けただけなのに。それにいくら僕が「大丈夫」だと言っても信じてくれない。
「はぁ…これから本当にどうしようかな」




