ギルドマスターとして元気をアピールする
さすがにこのままギルドが衰退していくのを見ているわけにもいかないので、僕は傷が癒えたら動き出すことにした。
もちろん、両手、両足が麻痺状態のため車いすじゃないと移動できない。
僕の側近とも言われているメアリーに押してもらうことにした。
家からギルドの屋敷まで移動している最中に、メアリーに気になっていることを質問してみることにした。
「それにしてもなんで、みんなはこんな状態になっちゃっているの?」
その質問に対して、メアリーはすぐに答えてくれた。
「それは全てあなたの責任よ」
「僕の責任?」
「あなたも皆があなたのことを特別に思っているのを知っているでしょ?」
「特別かはともかく、みんな仲良くしてくれているなぁとは思ってるよ」
本当に良い仲間に恵まれたと個人的には思ってる。ここまで良い仲間に恵まれただけでも、僕の冒険者としての人生はとても良いものになった。
「はぁ……あなたは自分のことになると鈍感になるのは本当にどうにかならないの?」
「…僕は自分のことをしっかり理解できていると思っているんだが」
「それはないわ。あなたはあなた自身がどれだけこのギルドで影響力を持っているのか分かっていない」
そんなことないと思っているけど、メアリーがこれだけ言うということは本当に自分のことを理解できていないんだろうか。
「そうなのかなぁ…」
「そうよ。あなたはあなたが思っているより多くの人から愛されてる。そしてその愛は少し歪んでいるの。何もない日常がそのまま続くのであればその歪みはまだ許容の範囲内だったかもしれないわ」
メアリ―は止めることなく、そのまま話し続ける。
「でも、今回の出来事でその歪みがもっと歪み、あなたも見たように自分のことを必要以上に責めるようになってしまったのよ」
メアリ―の話を聞く限り、彼ら彼女らがこうなってしまったのは僕の所為だ。であればその責任を取って、僕がどうにかしないといけない。
そんな話をしていたら、ギルドの屋敷に着いていた。ギルドの屋敷に入るとラウンジがあるので、それなりに賑わっていたりしないかなぁなんて淡い期待を持ちながら入った。
もちろん、そんなことはなくて静寂に包まれていた。それも人がいないわけではなく、それなりに人がいるのにだ。いつもならそれなりに賑わっているのに、今はそんな様子の欠片もない。
「これはかなり重症かもしれない」
「この歪みは簡単には戻せませんよ。まず第一としてあなたはこれからギルドマスターとしての勤めをしっかり果たしてもらわないといけません」
「わかっているよ」
ここで僕が日常生活に苦労しているところをあんまり見せるわけにはいかない。なるべく、今まで通り活動できているところを見せないと、余計に心配させてしまう。
僕が車いすに乗りながら進んで行くと、メンバーの視線は自然と僕のところに集まって来る。
「みんな、僕は大丈夫だ。だからみんなが責任を感じることはない」
こんな言葉だけでどれだけの意味があるのかは分からない。普段だったら言葉である程度のことはどうにかなる。でも、目覚めてから今までの感じを見るに言葉じゃなく、時間が解決してくれるのを待つしかない。
「無理しないでくれ…マスター」
「そうだ、俺たちがあんたを護れなかったんだ。もっと責めてくれ」
「うちがもっと強ければ…」
「我のせいだ」
こういう反応しか返ってこないのは分かっていた。それでも僕は『大丈夫』というアピールはしておかないと。
そしてずっとここにいるわけにもいかないので、僕はギルドマスターと護衛だけが入れる特別な部屋に入ることにした。
この部屋は僕とギルメンの中でも幹部と呼ばれる数名が話し合う時に使われる場所。部屋に特殊な魔法が掛けられていて、ここでの会話を盗み聞きすることも、外に会話が漏れることもない。
それぐらい厳重にしないといけない情報について話す時などに使われているけど、今日は一先ず落ち着くために入った。
「一先ず、仕事をしようか。手伝ってくれるかい、メアリー?」
「もちろん、手伝わさせてもらいます」
それからは、メアリーに手伝ってもらいながら溜まっていた作業をした。
手伝ってもらったなんていうけど、ほとんどメアリーに行ってもらった。僕は手足の自由が利かない、サインを書こうにも書けないし、判子なども押せない。全てメアリーの代行してもらわないとできないので、やっぱり僕がギルドマスターでいる意味ってないんじゃないかと思った。
でも、それを口にするとメアリーがすぐに「そんなこと二度と言わないでください。あなたがいるからこのギルドは存続しているんです。各故、私もあなたと共に歩んでいきたいんですから」と言われてしまった。そんな風に言われると『辞めます』と言えるような雰囲気ではない。
「これからの仕事の仕方もちょっと考えないといけない」




