表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
71/73

歪な再会

久しぶりの更新。読んでいただければ幸いです。


 五百の悪魔を倒し、洞窟を抜けたところで耳元でポーンとシステム音がなった。

 徹夜明けのようなだるさを感じつつそれに意識を傾けると、ステータス画面が開く。その際、称号の欄が変更されていた。どうやらこれを知らせるためのシステム音だったらしい。


「『虚空の化身』……?」


 それを読み上げつつ、なんとなく内容を確認すると、こんなことが書いてある。


 一つ、虚空の化身はあらゆるプレイヤーの敵となる存在である。ただし、生命樹と味方となるわけでもない。


 一つ、能力値に効果はない。


 一つ、この称号解除には状態異常回復の処置が必要である。ただし、自力での解除は認められない。


 なんて、こんなことが書いてあって。


「なんかやば――」


 危機感を言い終わる前に、全身を包む漆黒のローブと幾何学模様の仮面が勝手に装着される。


「……」


 試しに外そうとするも、無意味だったようで。


「……前途多難だぞ、おい」


 俺はため息を吐いて空を仰いだ。






 本当に前途多難だった。


 昨日のことである。

 俺は洞窟から出た後、まず感じる空腹感を解決しようと、アインへ戻った。

 戻ろうとした。

 しかし、待っていたのは、住民NPCの怯えた視線とプレイヤーの敵意だった。


「人型のモンスターだと……?」

「しかもコイツ、ランク表示がないぞ!」

「なに!? じゃあ、ユニークか!?」


 アインの門を警護しているプレイヤーが、そんなことを言う。

 ユニークモンスターは、再湧出しないモンスターのことを言い、その強さは押し並べて強いことが知られている。

 それと、俺が間違われているのだ。


「待て! 俺はプレイヤーだ!」


 俺が大きな声でなんとか自分のことを伝えようとするが、


「コイツ、なんか叫んでやがる!」

「威嚇しているのか!」


 などと、どうやら伝わらないらしく。

 どんどんと戦力を揃えていく門番の様子を見て、俺は逃走を余儀なくされるのだった。





 そんなこんなで、俺が帰る場所は限られてくる。

 自分の家、戦場の一軒家は使うことができた。

 久しぶりに帰ってきた家に入って、気が抜ける。


「……とりあえず、寝るか」


 問題の先延ばしであることは理解しつつも、俺は自室のベッドに倒れこんだ。



 とは言いつつも、昔のどうでもいいことを思い出したせいか、深くは眠れない。起きて、どうしたものかと首を巡らせると、居住空間から続く工房へと視線が辿り着く。


「……なんか作るか」


 俺は暇を潰せるかと思い、工房へと移動する。

 特に目的もないので、趣味の刀を作ろうとして素材のロングソードを取り出した。炉に火を入れて、それを放り込む。

 充分熱したと判断したところでロングソードを取り出して、同時にストレージからつなぎ石を取り出した。


「別の金属と階層構造にして……」


 俺はこの1年で覚えた工程を辿り、《練成》を繰り返した。

 この1年何度も繰り返した工程。

 そのはずだった。


「……うん?」


 手元の刀の様子がなにやらおかしい。

 普段なら《練成》時の輝きこそあれ、普通の物質が生まれるはずである。出来上がった刀身に柄を合成して、出来上がった品をタップすることで性能を確認するのが常だ。

 けれど目の前の刀は、うっすらと黒いオーラが漂っていて。


「……」


 恐る恐る柄まで合成した後のそれをタップすると、こんなことが書いてあった。


『黒鴉』

 その刃はどこまでも昏く、鋭い太刀。

 天使の障壁を無効化。


 俺はそれを見て、


「……天使に攻撃が効きにくいのは障壁のせいなのかね」


 なんて的はずれなことを考えた。

 その時。


『あれ、入口が、空いてる……?』


 と声が聞こえてきた。

 あどけないような懐かしいその声は、俺の親友のもので。

 直後に聞こえてきたものも、知っているものだった。


『まさか……!』


 生きていたかと安堵すると同時に、俺は焦りを感じていた。



  ◇◆◇◆



 《生命樹》での前線と同じレベル帯のフィールドでの狩りの後、私、ミンちゃん、シュリさんはレンくんの家へと行くことにした。


「たまに掃除してあげないと、汚くなるしね~」


 そう言うミンちゃんは少し寂しそうな顔をしていた。

 データの世界であるここでは、掃除の必要性なんて無い。ただ、行きたいだけなのだ。楽しい思い出の場所に。


「アタシもついてっていいのか……?」


 シュリさんは行ったことがないらしい。『愚者の盾』としてずっと活動していた彼女はすこし遠慮しているのだろう。


「大丈夫だよっ。ボクたちもう友達じゃんっ」


 ミンちゃんが明るくそう言う。

 私もそれに首肯した。

 それならいいけど、とシュリさんも連れて戦場の一軒家へと向かう。かつては苦戦したこのフィールドも、今ではモンスターの方が私たちを避けるようになっていた。

 やがて辿り着くと、ミンちゃんが扉に手をかける。それと同時にミンちゃんが首を傾げた。


「あれ、入口が、空いてる……?」


 私はそれを聞いた時、目を見開いた。


「まさか……!」


 レンくんが。

 そう思うと、私はミンちゃんをも押しのけて中に転がり込んだ。見慣れた店内、そこには誰もいなかった。

 がっかりする私は、しかし奥の工房で物音がするのを聞いた。


「ユウナちゃん!」


 制止するミンちゃんを気にせず、私は工房へ続く戸を開く。

 そこにいた人影に、迷わず声をかけた。


「レンくんっ!」


 工房が明かりに照らされ、私の目に入ってきたその人影はしかし妙な格好をしていた。

 全身を覆う黒い外套。顔を隠す幾何学模様のお面。

 そして、その頭上に現れた、赤いゲージ。

 それはモンスターを表す表示で。


「ユウナ、そいつから離れろ!」


 追いついたシュリさんが拳を構え、その黒い人に突撃する。

 その黒い人は、その攻撃を難なく躱すと、工房から逃げ出そうと駆けた。


「させないよっ!」


 魔法を同時発動させたミンちゃんが風を纏い、ナイフの切れ味を上げて斬りかかった。

 その対応に一瞬速度をゆるめた相手は、突如その場から消えた。

 速度を急に上げたのか、と理解するより速く、相手は逃げ出してしまった。

 慌てて店からでて周りを見渡すも、そこには何もなくて。


「何だったんだ、今のは」


 シュリさんがそうつぶやくのを耳にしながら、


「……レン、くん」


 どうしてか、私はそんなことを口からこぼしてしまった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ