任務完了
攻略組の援軍が到着し、その場の流れは完全に有利なものとなった。
ユアンとメルファが倒れ、数多い雑魚も動きを封じられている。その場にいる他の「色」たちも化け物じみた力を持っているわけではなく、
「総員、敵を捕縛しろ!」
アルヴァの命令により、その場は制圧へと向かっていた。
『蒼海』が膨大な数の水弾を全体に向けて放つも、アルヴァが騎士盾の特殊効果で不可視の結界を張って防ぐ。
『紫電』がその身を帯電させて鉤爪を振るうも、風魔法を併用するミンが攻撃を逸らしつつカウンターを決めていく。
『碧風』がその場に暴風を起こし動きを阻害しようとするも、ユウナが自らに《エンチャント》をかけ、強引に突破する。
事前に相談した計画通りに戦局が移行し、
「作戦成功。各々役割を遵守せよ!」
その場の制圧は十数分後には完了していた。
まず『虚空の淵』の幹部がユアンとメルファを除いて捕縛された。
他の「色」たちはなぜかメルファほどの力を持っているわけではなく、複数でかかればたやすく捕縛することが出来た。
その場の決着は既につき、残りは麻痺状態のメルファと気絶しているユアンを捕縛すれば一連の騒ぎは終わることだろう。
アルヴァが指示を出した。攻略組に対する人々の信頼を削ぎ、無知な一般人を危険に巻き込もうとした主犯には、当然自由はない。その側近も同様に牢屋へと入れておくようにと、そう部下に言った。
そして、『解放軍』の部下がそれに従おうとした時だった。
部下の手がユアン、メルファ両名に伸びた時、
「や、あ、……やめ、て」
ひどく恐れた様子のメルファに触れ、
「や、あ、あああああああああああああああああああああああああああああああ!」
その部下が、燃え上がった。
「なんだっ!?」
「『紅玉』が、麻痺を無視して魔法を……!」
突然の叫びと、攻撃。燃えた男の体力が尽きる前にその場から強引に離脱させ、アルヴァは治癒を指示、続けてメルファから離れるように全員に通達した。
普通ではないメルファの様子に、おとなしく従う面々。
狂ったように叫ぶメルファ。
そして気絶しているユアン。
俺は目を見開いた。
「全員気をつけろッ! ユアンはもう……!」
俺がそう言って動いた瞬間、ユアンも飛び出し、一瞬で攻略組との距離を詰めた。メルファの炎に煌めくナイフを、振り下ろす。
俺は、背中にそれを、深く受けた。
さすがに、痛む。そして、身体の動きを封じられる。今度は麻痺毒ではなく、石化の呪いのようだ。
そして俺の目の前。そこには呆然としている少女がいる。
俺は、笑いかけた。
「無事か……ユウナ」
「レ、ンくん……」
まるでひどい衝撃を受けたようなその表情を見て、俺は可笑しく思った。
そして、背後から嗤い声が聞こえる。
「さようなら、英雄さん」
そんなユアンの言葉と同時、俺たちを中心に半径五メートルほどの落とし穴が開いた。それはあまりに昏く、まさしく奈落、まさしく『虚空の淵』だった。
「レンくん! 今エンチャントを……」
足場もないのにどうしようというのか。
そんなことも焦って把握できないユウナが必死にしがみついているのを感じて、
「負けるなよ、『戦巫女』」
俺は、笑った。
そして、ユウナを強く、蹴り飛ばした。
「え……」
痛みも忘れてそんな声を上げるユウナは、吹き飛ばされて『虚空の淵』の範囲外へと出た。これでもう奈落に落ちることもないだろう。
ちょうどその方向に、こちらに必死に手を伸ばすミンの姿が見えた。その近くにはアルヴァやユンたちの姿もある。そのどれもが、こちらに向けて何か叫んでいるようだった。
俺はそれらを見て、伸ばされたミンの手を見て、やはり笑った。
「この世界を抜けだしてくれ……」
俺はそう零しながら、地面にまっすぐ引かれて奈落へと落ちていく。
そんな俺を追うように、ユウナが俺の名を叫んだような気がした。
これを以て、俺の仕事は終わったのだ。




