レン
「……」
気配を断つ。
存在を溶かす。
意識を薄める。
「奴はどこ行った!」
「くそが。ロイドなんて名乗りやがって……!」
「おい、向こうの方見んぞ!」
バタバタバタ、と遠ざかる足音を聞いて、
「……行ったか」
俺は陰になっていた岩場から出た。辺りには気配もなく、それを裏付けるように《索敵》にも敵影はない。
俺はオレンジから受けた魔法で壊れた腕輪を見て、嘆息する。
「……あいつら、合図と受け取ったかねえ?」
軽い口調。
敵陣の中、それも奥深くにただ一人という状況。それでも特に何も感じない。慣れていた。
「……昔よりマシ、か」
そう思わず漏らすと、俺は更に奥へと進む。すでに《索敵》を最大限利用して、敵の動きから建物の構造を把握している。
これからすべきことは、敵の不安を煽ることと、『虚空の淵』の悪行を晒すこと。
それと、あの男……ユアンの目的の確認。
そのためにはまず、
「撹乱、といきますか」
そう言って、駆け出す。
迷いはない。迷いはすなわち死だと、身体で覚えているから。
そして飛び出したところは、敵の待機拠点の一つ。そこには警戒状態の荒くれどもが五、六人いる。
「よ。レンさん登場しましたよ?」
「っ! てめっ!」
「まず一人」
そう言って反応の早かった男の首筋に手刀、昏倒させる。正しくは気絶状態か。
すかさず二人目に行こうとした所で、ガタイのいい女がナイフを突き出していた。
おそらくそれでPKしたことがあるのだろう。いい動きだった。反応も早く、動作も早い。
しかし、俺が育った場所では小学生レベルだ。
「凶器よりも身体操作を覚えよう!」
そう言って、手の甲で相手の顎を叩く。女はぐらりと崩れ、
「……」
「あ、ぐ……ッ!」
俺はそのまま敵のナイフで女の腹を刺した。そのままナイフを拝借する。
「「「……」」」
「得意なのは刀だが……」
三人の男が警戒してそれぞれの得物を構えるのを見て、思わずため息をついた。
「ナイフの方が、経歴長いんだよ」
そう言って、飛びかかってくる敵を迎え撃った。




