作戦開始
「レンくん、本当に潜入するんです?」
「仕方ないだろ……まぁ、慣れてるし」
酒場へ戻る途中のユウナの言葉に、少し疲れたように言う俺。後半は呟く程度だったので、聞こえてはいないだろう。
――俺の力を役立てるなら……いいか。
そうふと考えた自分に、俺は苦笑した。
――俺は少し変わったのかも知れない。
自分のためにしか動こうと思えなかった俺は、今では他人のために一人で動こうとする始末だ。これがいい変化なのかは分からないが、願わくは、いい結果をもたらしてほしい。
そう、思った。
「これからの動きをリアナに伝えてから、行動開始。ユウナは――」
「私には教えてくれないんです?」
俺の言葉を遮るように尋ねるユウナに、俺は眉をひそめた。
「ユウナよりもリアナのほうが情報の扱いに慣れてる。俺に盗聴器をつけさせる予定だから、その制御をさせる」
そう言いながら俺はウィンドウを開き、リアナにメールを送る。今言った指示についてだ。
それでなぜ酒場に向かっているかといえば、酒のためである。
「そ、それなら私も行きます!」
「付き添いならいらないぞ? ユウナ単独で行くなら何も言わないけど」
俺のそんな言葉にユウナはなぜかしゅんとすると、静かに言った。
「一人で、いいんですね?」
「ああ。そのほうが楽だよ」
酒場に入る。そこにはリアナが待ち構えていた。彼女は俺に一つのものを放り投げてくる。
「頭領、レオンに作ってもらった腕輪よ。それが状況を私たちのところに伝えてくれるわ」
「アイツはゲーム内なら自由自在の発明家だな」
苦笑する俺に、リアナは真面目な顔を俺に向けた。
「無事で帰ってきてくださいな」
「俺が死ぬとか、ありえないだろ」
互いに笑ってみせるその確かな絆に、ユウナがなにやら羨ましそうな目を向けていたのだった。
◇◆◇◆
準備してレンが去った後、『愚者の盾』の溜まり場である酒場には、攻略組がつめかけていた。
「あら、もしかして稼ぎどきかしら?」
「リアナ女史……貴女は金の亡者か」
リアナの呟きに傍らのレオンがツッコむ。それにシュリが呆れた。
「ただのセコいおばさ――」
「シュリちゃん?」
瞬間、レンに匹敵するほどの圧力がシュリに襲いかかる。シュリは口を閉ざした。次はレオンが呆れた。
「やはりリアナ女史がナンバー2なのだよ」
そんなやり取りの間、アルヴァたち『解放軍』の幹部職たちは少し焦っていた。
「総長、やはり彼一人に行かせるのは荷が重いかと」
「一応フォローはつけてるんだろ?」
「まあ、ね……でも彼でもあるいは……」
アルヴァの珍しく不安そうな表情に、質問したユンとカイムは質問をやめることにする。作戦が始まった以上、じたばたするのは無意味である。
アルヴァは周りに聞こえるくらいに声を出した。
「確認するよ。レンが潜入して情報を集めたら、それを処理し、然るべき配置を整える。その後、彼の合図とともに突撃だ」
応、と皆が理解を示した所で、リアナのウィンドウから反応がある。
その場にいる全員は、真剣に、その情報集めを開始した。
◇◆◇◆




