第24話 サボり魔除霊
「えっ、ちょ、瑛!?なになになに!?」
「決まってるだろ。勉強をサボろうとする悪霊を、今から俺が除霊してやるんだよ」
俺は萌真の華奢な肩を両腕でガッチリとホールドし、逃げ場を塞いだ。
首筋に顔を埋めるようにして密着すると、彼女の髪からシャンプーの甘い香りがふわりと鼻をかすめる。
心拍数が跳ね上がり、体温が一気に上昇していくのが、触れ合った肌越しに伝わってきた。
「ば、バカ!もう悪霊なんていないってばぁ……!」
「いや、確実に憑いてるね。さっきまで真面目にやってたのに、急にベッドにダイブするなんて、まともな精神状態じゃない。これは強力な悪霊の仕業だ」
「私の意思だよ!ただの私のサボり癖だよ!」
「ほら、そうやって悪霊が俺を騙そうとしている。悪霊退散の儀式を始めないとな」
俺は意地悪く口角を上げると、萌真の首筋にフッと息を吹きかけた。
「ひゃうっ……!」
萌真の体が、ビクンと大きく震える。
打たれ弱く、そして非常に感じやすい彼女の弱点は、心中塚での『除霊』の際に完全に把握済みだった。
俺の腕の中で、萌真が顔を真っ赤にしてジタバタと抵抗を始める。
「や、やめてってば!くすぐったい……っ!」
「動くなよ、悪霊。除霊の最中に暴れると、もっと強力な術を使わなきゃならなくなるぞ」
「術ってなに!?もー、瑛のイジワル!離してぇ……!」
涙目で抗議する萌真の顔は、熟れた林檎のように真っ赤に染まっていた。
その可愛らしい反応を見ていると、俺の中のSっ気と、彼女を独占したいという仄暗い欲求がさらに刺激されていく。
「離さない。完全に悪霊が抜けるまで、俺はこのまま儀式を続けるからな」
俺はそう宣言すると、ホールドした腕の力をさらに強め、彼女の弱点であるくすぐりのツボと、敏感な耳元への攻撃を同時に仕掛けるべく、ゆっくりと顔を近づけていった。
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【瑛視点】
「ひゃあっ!?そ、そこはダメだってば!」
俺の指先が、萌真の脇腹にある『くすぐりのツボ』を的確に捉えた。
幼い頃から一緒にいる俺は、こいつのどこをどう触れば一番反応するのか、手に取るように分かっている。
「ほら、悪霊が嫌がって暴れてるぞ。やっぱりかなり深く憑りついてるみたいだな」
「違うっ、あははっ、私がくすぐったいだけぇっ!瑛のバカ、ストップ!」
涙目になりながら身をよじって逃れようとする萌真だが、背後から完全にホールドしている俺の腕からは逃れられない。
暴れれば暴れるほど俺の腕の中にすっぽりと収まり、その柔らかい体温と甘い香りが直接伝わってくる。
「バカとはなんだ、バカとは。せっかく俺が、愛の力で除霊してやろうとしてるのに」
「愛の使い方が間違ってるぅ……っ!」
俺は萌真の耳元に唇を寄せ、意図的に声のトーンを落とした。
演劇部で鍛えた特技である、腹の底から響かせるような低く甘い声色。それをゼロ距離で吹き込まれると、打たれ弱いこいつがどうなるか。
「俺は、お前がサボってるのが許せないんじゃなくて……他のことに夢中になっているお前を見るのが、ちょっと面白くないだけなんだよ」
「え……っ」
冗談めかした『除霊』の口実に、ほんの少しだけ俺の独占欲という『本音』を混ぜて囁く。
その瞬間、萌真の体がビクッと跳ね、抵抗していた力がフッと抜けた。
真っ赤になった耳たぶが、俺の目の前にある。
俺は衝動に駆られるまま、その小さな耳たぶを甘く食み、続けて白くて華奢な首筋へと唇を落とした。
「ひゃうっ……!?」
チュッ、と微かな水音が響き、俺の歯が軽く彼女の肌に触れる。甘噛みだ。
萌真の口から、これまで聞いたこともないような、甘く掠れた吐息が漏れた。
「え、瑛……?ちょ、ちょっと、待っ……」
「待たない。中途半端な除霊は一番よくないんだ。最後までやり遂げないと悪化する」
俺は腕の力を少し緩め、代わりに彼女の体を反転させた。
仰向けになった萌真の上に覆い被さるような形になる。ベッドのマットレスが沈み込み、俺たちの距離はさらに縮まった。
俺を見上げる萌真の大きな瞳は、すっかり潤んでいた。
顔は極限まで真っ赤に染まり、荒い呼吸を繰り返している。普段の天真爛漫でお調子者な面影はどこにもなく、ただ俺の熱に当てられて翻弄される、一人のピュアな女の子の顔がそこにあった。
「も、もう……許して……」
「ダメだ。まだお前の目の中に、サボり魔の悪霊が隠れてる」
俺は彼女の抵抗する両手首を片手でふわりと押さえ込み、もう片方の手で彼女の頬を撫でた。
そして、再び首筋から鎖骨のあたりへと顔を埋め、執拗に甘い攻撃を繰り返す。
吐息が掛かるたび、唇が触れるたび、萌真の体がビクンビクンと小さく跳ねる。
「あ、ぁ……っ、んっ……瑛ぇ……っ」
完全にキャパオーバーを起こしたらしい。
萌真の瞳からポロリと涙の雫がこぼれ落ち、彼女の腰から完全に力が抜けたのがわかった。
抵抗するのをやめ、俺の胸の中にすがりつくようにして、力なく崩れ落ちる。
俺の服の胸元をギュッと握りしめるその手は、小刻みに震えていた。
「……どうだ。悪霊は退散したか?」
俺が意地悪く微笑んで顔を覗き込むと、萌真は涙目でコクコクと何度も頷いた。
「た、退散した……完全にいなくなったから、もう除霊はおしまい……っ」
「そうか。それはよかった。俺の『愛の力』は絶大だからな」
俺は満足して彼女の手首を開放し、代わりにその柔らかい体を優しく抱きしめ直した。
荒くなった互いの心音が、重なり合って聞こえてくる。
このまま、もう一度唇を重ねよう。
そう思って俺が萌真の顔に自分の顔を近づけ、二人の距離がゼロになろうとした――まさにその絶妙なタイミングだった。
ガチャリ。
何のノックも前触れもなく、部屋のドアが無慈悲に開け放たれた。




