2023年 8月某日 鋼
2023年 8月某日編 (4/4)
連続エピソードラストです
「作戦続行。和泉さん、コアが見えるまで水吸わせて。」
「はい!」
「俺は渡部さんの援護に回る。」
「頼んだぜ、古賀!」
ヒーローたちの声に呼応して、和泉のハイドロ・スパイクの威力も上がっていく。
竜巻は水を大量に吸い上げ、川面に巨大な影を落としていた。自然発生した竜巻のように移動することもなく、その場に留まり続けている。
なおも、吸い上げた石を雨のようにヒーローたちへ吐き散らす。
「金剛打!」
「千蔓!」
渡部は鋼鉄化した腕で石を払いのけ、古賀は蔓を使い石を打ち返している。その二人の援護を受け、和泉のハイドロ・スパイクで竜巻の透明度を上げていく。
「綺麗な水を飲み込んで、竜巻もだいぶデカくなりやがった。」
ボソッと渡部が呟いた。
竜巻は川面から5メートルほどの高さになっていた。
「見えた!!!」
古賀が叫び、それに他の声が重なった。
白の渦の中に、茶色の長細い逆三角形が見えた。逆三角の中心が赤く光っている。
「いきます!アクア・サイフォン!!!」
和泉が叫ぶと今まで吸わせていた水が逆流し始めた。
水を吸い上げようとする竜巻と、それを押し返そうとする和泉の技とで、竜巻が長細くなっていく。
体内にため込んでいた石も尽きたのか石の雨も止んだ。
竜巻がわずかに縮んだ、その一瞬を逃さず、渡部が走り始めた。
「古賀!アシストよろしく!」
「任せて!渡部さん!」
そう叫び合うと、渡部の足元から木が生えてきた。渡部はそれに飛び乗り体制を整える。
「巨樹」
古賀の声に木はぐんぐん大きくなり竜巻と同じ高さになった。
「鋼殻」
渡部がそう唱えると、渡部の体がみるみる銀色になっていく。鋼の体になったのだ。
全身が服まで鋼になると竜巻の中に上から飛び込んでいった。
「真っ二つにしてやるよ――鉄槌!!!」
ドーンっと地面を揺らす轟音が叩きつけられた。竜巻は消え失せた。
竜巻があった場所には、銀色の体の渡部が、文字通り真っ二つにしたエニグマのコアを両肩に担いで立っていた。
「クリーンのみんな、受け取りよろしくね。」
古賀の声に戦いが終わったことを確信した俺たちは、班長の指示の元外に出た。
受け取ったコアは、全長2メートルほどで渦を巻くように歪んだシワだらけの木だった。コアの中心部で赤く光っていたところは真っ黒に抉れていた。
「チェーンソーで細かく切って運ぶ。用具の用意開始。」
班長の村越の声にクリーン全員が、道具を取りに行く者と、切るために場所を準備する者、コアを動かす者と分かれて作業を始めた。
「今回は簡単でよかったですね。」
そうチェーンソーを運びながら高木が俺に言った。
「ばーか。渡部さんが簡単にしてくれたんだよ。」
「そうなんですか?」
「ヒーローはコアを壊せば終わりだから、割ったコアを川に落としてもよかったのに、わざわざ持って出て来てくれたんだよ。」
「そうだったんですね……。」
「敵によっては、粉砕しないといけない場合もあるけど、ヒーローの人たち、特にベテランの人たちは余裕があれば、俺たちクリーンが仕事しやすいようにしてくれてるんだよ。」
「ありがたいっすね。」
「そ。だから安易に簡単なんて言うなよ。」
「はい。肝に銘じておきます。」
「よし!じゃあ、早く片付けて飯行こうぜ!」
「宮部さんのおごりでお願いします!」
「それは勘弁……。」
ベテランヒーローに助けられて早く仕事を終えることのできた俺たちは、帰りの車では、夕飯をどこで食べるかで盛り上がった。
厄介なエニグマを倒した安堵感で、食も話しも進み、楽しい食事会だった。
その夜に見た、手のひらが光る不思議な夢のことも、翌日にはすっかり忘れるほどに。
次回は 5月 3日 (日) 21時更新です。
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技名増やし過ぎたw覚えられない……
次回は新しいエピソード!お楽しみに!




