2023年 8月某日 渦
2023年 8月某日編 (3/4)
連続エピソードになります
お昼も食べて、出動準備の最終段階へ入る。
「法月さん、ステルスお願いします。」
村越に続いて俺たちクリーンはステルス、つまり透過の技を掛けてもらった。
今回の現場は住宅街に近い河川敷。いつ誰に見られるかもしれない。それならば、最初から姿を消した状態で行けば、安全性が高まる。
もちろん車を運転する、七尾と立石はステルスを掛けずに出動になる。運転手がいない車が走っていたら大騒ぎになるから当たり前だが、運転手の2人は見える範囲での活動になる。交通整理やらいろいろやることがあるのだ。
「俺、もう見えなくなってるんですよね……。」
高木が不安そうに声を掛けてきた。
「大丈夫。一般人には見えてないよ。高木は初めてだよな、ステルス掛けてもらってからの出動。」
「はい。」
「車のドアを運転手以外が開けると自動で開いたみたいになる。もちろん自動オープンのドアがついてる車ならいいんだけど、あいにく、そんなハイテクな車じゃないから、七尾さん、立石さんがドア開けたり閉めたりする間に乗降車や荷物の出し入れするように。」
「はい。」
「あとは、いつもの出動と変わらないから、安心して。」
「はい……。」
なんとも納得いってなさそうな返事が帰ってきたが、あえて気にせず出動準備を進めた。
風が関わるエニグマの対応は俺も初めてだ。班長・副班長もあまり経験は無いようだ。
未知に近い敵と対峙する不安もあるけど、少しワクワクしてしまうのは俺の悪い癖なのかもしれない。
そんなことを考えながら車に乗車した。
天気は変わらず、鈍色の空の下で強風を伴いながら小雨が降り続いていた。
人を不安にさせる景色の中、車は現場へ向かって進んだ。
「今回は一般人にも見えているエニグマとヒーローたちは戦う。俺たちは下手に外に出ず、車で待機するよう指示があった。車の中から戦況を確認していく。」
村越の指示に、車内に響き渡る返事。車内待機を残念に思ってしまう気持ちもあった。ヒーローたちの戦いを間近で見られるのが、クリーンの特権だと思っている。だから、遠くや車内待機で、戦闘が見えにくいのが悔しいのだ。
まあ、文句も言っていられないし、何より安全第一だと自分に言い聞かせながら現場に到着した。
川面に小さな竜巻が、発生しては消えるのを繰り返していた。
やはり自然発生の竜巻ではなさそうだ。
ヒーローたちは外に出て話し合っている。こういう話し合いを聞けないのも、車内待機のもどかしい所だ。
ヒーローたちは頷きあってそれぞれの持ち場に向かったようだ。
「さあ、戦闘開始しようか。」
インカムから古賀の声が聞こえた。
俺は、子供のように窓に張り付いた。ここからでもヒーローたちの戦いを見逃さないためだ。
「ハイドロ・スパイク!」
小さくできた竜巻に、川上で待機していた和泉が川面を突き破るように綺麗な水柱を突き上げ、エニグマの竜巻に吸わせていく。
竜巻は唸りを上げながら大きくなるが、真っ黒だった竜巻は灰色に変わっていく。
「いいね、和泉さん!もっと透明度上げちゃおう!」
古賀の声を合図に、ハイドロ・スパイクの威力が増した。竜巻の色が徐々に白に近くなっていく。
「竜巻の中に何か黒い物が見えます!」
和泉がそう言った途端、その黒い塊は空高く吐き出され、和泉目掛けて降ってきた。
「金剛打!!!」
走って来た渡部が、鋼鉄にした腕で黒い物体を叩き返した。落ちてきたそれを見て和泉が驚く。
「石……?」
「古賀、ヤツは石を飛ばして来たけど、どうだ?木属性で間違いないか?」
渡部の焦ったような声がインカムから流れてきた。
もし、土属性のエニグマが起こす竜巻だったら、また作戦を考え直さなければならない。投石により事態は悪化していた。
「確認するから、引きつけてて渡部さん。」
そう言って古賀が前に出る。
「葉索――さあ、竜巻の中へ行っておいで。」
その声に呼応するように古賀の前に無数の木の葉が舞い上がり、竜巻の中に入っていく。竜巻の中は水と石と木の葉が渦を巻いて大きくなっていく。その間も渡部と和泉に、石は雨のように降り続いている。直撃すれば、ただでは済まない。
少し待っていると、竜巻から石に紛れ木の葉が徐々に出てくるようになった。
出てきた木の葉は、古賀の元へ戻って行く。
その木の葉たちを古賀は念入りに確認した。
「大丈夫!間違いない。木の葉の切れ方に乱れが無いから木属性による竜巻だ。作戦は続行しよう。」
「おう!」
「はい!」
渡部と和泉の声にも迷いが無くなった。
ここからヒーローたちの巻き返しが始まった。
次回は 4月 29日 (水) 21時更新です。
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古賀の技が増えすぎてノートに入りきらない……w
次回もお楽しみに!




