2023年 8月某日 ベテランのミーティング
2023年 8月某日編 (2/4)
連続エピソードになります
徐々に大きな渦を形成しようとするソレは、こちらが見ているのが分かっているのか、不規則に動き回り、音もなく消えては、また現れる。
まるで早く来いよと、不敵に手招いているように……。
ランニング中に、体育館の電話がけたたましく鳴った。
出動ミーティングが始まる。班全体に緊張感が生まれた。駆け足で電話を取った柚木がミーティング場所を告げた。
大きめのスクリーンがあるミーティングルームだ。きっと先発班の撮った映像を見ながらのミーティングになるのだろう。俺たちは急いでミーティングルームへ向かった。
「お疲れ!クリーン班が全員揃ったみたいだから、全体ミーティングしようか!」
俺たち53班が入室した途端、スクリーンの真ん中で画面を見ていた古賀がこちらを向き話し始めた。
「先発班の持ってきた映像を見る限り、規則的に木の葉が混ざっていることから、木属性のエニグマと見て間違いないと思う。竜巻の中にきっとコアがあるんだろうけど、濁った雨水を巻き上げてコアを隠してるね。」
映像を流しながら古賀は淡々と説明をするが、何をどう見たら水属性なのか木属性なのか、画面を見てもただの濁った渦にしか見えない。プロにしか分からない世界なのか、もしくは勉強不足なのか、どちらもあり得そうで言い出せなかった。
「今回、俺はサポートと指示役に徹するから、メインは渡部さんにお願いします。」
「いきなり、メイン指名かよ!」
「だって、木属性討伐に相性良いのは金属性でしょ?」
「まあ、そうなんだけどさ。事前にひとこと言っておけよ!」
「またまた~!そんな繊細な性格じゃないくせに~」
「うるせぇよ!」
どうやら何の打ち合わせもなくミーティングが開かれているらしい。普段ならメインに指名されたヒーローがミーティングを仕切るのだが、今回は異例だ。
「サブに和泉さんに入ってもらって、巻き上げている濁った水の透明度を上げるために、きれいな水を竜巻に吸わせてほしい。」
「はい。」
和泉が映像と古賀を交互に見ながら返事をする。
「で、俺はメインだけど何すりゃいいんだ?」
渡部が、自分を指さしながら古賀に問いかける。
「そんなの、竜巻の中に入って行ってコア破壊するに決まってるじゃん!」
「そっか、そっか~ってなるかボケ!いきなり何ぬかしてやがる!!」
「最後のトドメをよろしくってことだよ!」
「それにしたって、俺だけ命知らずな作戦じゃないか?体ズタズタにする気か?」
「それくらいしないと倒せないよ。渡部さんなら何とかなるでしょ?頼むからさ~」
「はぁ~。しょうがねぇ、体張ってやるよ。」
「ありがとう!渡部さん!」
こんなにも命がけの作戦を、安請け合いしていいのか疑問は湧いて来るが、ヒーローたちの作戦は決まったようだ。
「てか木属性相手なら、お前の弟子は呼ばなくていいのかよ?」
渡部は炎属性の三条のことを言っていた。
「渡部さん、竜巻が炎を吸い上げたら二次災害になりますよ……。」
冷静に和泉が指摘した。確かに渦の中心に炎が届かず周りに纏ってしまったら、火事の元だ。
「言われてみりゃそうか!」
ガハハハッと豪快に笑う渡部に内心心強さを覚えていた。
これから命がけの任務なのに、自分の失言を笑い飛ばせる心の強さに感服する。
「清掃班からです。今までの事例からの推測ですが、コアは木製の穴の開いたドリル状の可能性が高いです。クリーンは木片の回収もできるよう数名分のバキュームの準備をします。」
村越がヒーローたちの会話に割って入った。なんとなく話が進まない気配を察したのだろう。
「透過ヒーローの法月さんにお願いなのですが、今回の現場は人目に付きやすい河川敷ですので、運転手以外のクリーンを支部から透過してほしいです。」
名指しされた法月は静かに頷き、村越を見た。
「了解しました。運転手以外は支部から透過を掛けます。」
「よろしくお願いします。」
「んじゃあ、細かい詰めは現場でやろう、1時間後に出動!しっかりお昼食べてね!」
「「「はい。」」」
こうして、若干グダグダしたミーティングが終了した。
バキュームを積み込むために、倉庫へ向かう途中、無駄な緊張が抜けていることに気付いた。結局憶測でしかコアの形状は分かっていないし、作戦も渡部の命がけなのに、不思議と嫌な緊張が消えていた。
ベテランヒーローたちの凄さなのか、天然なのかそこは今回のメインヒーローと指示役しか、分からない。
俺たちは程よい緊張感の中、不敵に手招く、あの黒く濁った水の正体も分からないままに、ヤツの懐へ飛び込もうとしていた。
次回は 4月 26日 (日) 21時更新です。
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おじさんたちのやり取り書くの楽しいw
次回もお楽しみに!




