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勘違い令嬢は魔術師になりたい~聖女になった義姉に全て奪われましたが、好都合です!~  作者: 星見うさぎ


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42_シルヴァン様ってやっぱりすごい

 

 王都の森って思ったより深い。それが一番にでてきた感想だった。

 マーファス家の側にあった森は大きかった。それよりも、都会である王都の森が小さいのは当然のことで、森とも呼べないようなものなんじゃないかと、そんなイメージがあったのだ。


 だけど、深い。


「思っていたよりすごく森だわ」


 思わず声に出すと、不思議に思う私の気持ちに気づいたのか、シルヴァン様が森について触れる。


「自然は魔力を蓄える。豊かな森や澄んだ川は、定期的に魔物の討伐を行ってでも手を加えずに恩恵を受けるのが王宮の方針だ」

「そうなんですね」


 だけど、これで白い蛇もきっと一匹は生息しているはずだ。

 森に白い蛇がいるのは、豊かな土の中に蟻やミミズがいるのと同じくらい当然のことだから。


「にゃーん!」


 黒猫ちゃんはこっちこっちと言っているかのように、時々こっちを振り返りながらも私がギリギリついていける速さで走る。

 それについていくうちに、ついに森の木々がなくなり、崖になっている場所に出てしまった。


(わあ!森が崖に繋がっているなんて。この下は深そうね)


 そう思いながら立ち止まった私の前で、黒猫ちゃんは崖のふちぎりぎりまで歩いていく。

 そろそろ止めた方が良いのでは?と焦った瞬間、崖の底を覗き込むようにして猫ちゃんは立ち止まった。


 そして振り向くと、やっぱり私を見て何かを訴えるように鳴いた。


「にゃっ!」


「なに?なにかあるの?」


 恐る恐る崖に近づき、黒猫と同じように覗き込んでみる。

 シルヴァン様も私の隣にそっと並ぶと、同じようにした。


「ああっ!」


 崖の下にひょっこりと生えた細い枝。……それに、白い蛇が尻尾を巻き付けるようにして乗っているのが見えた。


「あんなところにいるなんて!黒猫ちゃん、やっぱり私達を案内してくれたのね」

「にゃん」

「ありがとう!それにしても、あの白蛇はどうやってあんなところに行ったのかしら」


 まさか、うっかり落ちて、なんとか奇跡的に枝にしがみついたのだろうか。


「とにかくあの白蛇を助けなくちゃいけませんね」


「そうだな。解毒薬の材料を手に入れたいという思いもあるが、この状態でいるのを見つけてしまって見捨てることも出来ない」


 白蛇をよく見ると、どうも弱っているようだった。そのせいで自力で上がれなくなったんだ。

 シルヴァン様は冷静に現状を分析する。


「僕自身が飛んで蛇を助けに行くこともできるけど、そうすると強い風魔法の反動による突風が吹きつけるからな……下手すると、白蛇が掴まっている細枝が耐えられずに折れて、保護する前に落下してしまうかもしれない」


 そんな……!

 手を伸ばしても到底届かない場所にいる白蛇に、どうしようと頭を悩ませかけたけれど。

 シルヴァン様はすぐに続ける。


「だから、僕の風魔法で白蛇を包み込み、浮かせてこちらに連れてこよう。ステラは受け止めてあげてくれるかい?」

「……え?」


 目を丸くする私の前に出たシルヴァン様は、白い蛇の位置をしっかり確認すると、両手を広げた。


 私は大出力で力押しする魔法か、ほんのちょっぴり魔力を使ってさりげなーく使うこっそり魔法は得意だ。なぜなら命の危機に全力で魔法を使うことと、スカーレットや義両親にバレないように魔法を使うことが多かったから。

 だけど、それだけ。


 残念ながらちゃんとした教育を受けたことはないから、正攻法の魔力操作をあまり知らないんだよね。おかげで緻密な魔力操作が必要な魔法や、ちょうどいい出力の魔法、バランスよく魔力を使わなければ成立させられない魔法なんかはてんでダメなのだ。

 そして、才能のある魔術師様はそういう魔力操作が抜群にうまい。


 そう、今のシルヴァン様のように。


 シルヴァン様は繊細な魔力操作で風魔法を操り、白蛇の体を優しく包み込む。少しでもコントロールが崩れれば、きっと風が見えない刃となり蛇の体を切り裂いてしまうに違いないのに、そんなことにはならない。


 白蛇は体勢を崩すこともなくふわりと浮き上がり、ゆっくりと私の腕の中に降りてきた。


「シルヴァン様、すごい……!」


 これが王宮魔術師団副団長の実力!すごくいいものを見た。私もやっぱり魔力操作の訓練をもっともっと積まねば。

 興奮するとともに、自分の実力不足を実感してちょっとだけ凹む。

 だけど、今はそうやって反省している場合ではない。


「他の材料は一般的なものばかりだから王宮でも揃うはず。今必要なのはこの白い蛇の脱皮した皮だけど……怖い思いをして精神的に疲弊している白蛇さんに脱皮するようにお願いするのは酷だよね……」


 この白い蛇は普通の蛇とは違う特殊種族で、自分の意思で好きな時に自由に脱皮することができる。

 でも、お願いするにはさすがにちょっとタイミングが悪すぎた。


 どうしようかと悩んでいると、白い蛇の居場所を教えてくれた黒猫ちゃんが私の足をちょいちょいとタッチする。


「ん?どうしたの?……って、ええっ!?」


 振り返り、黒猫ちゃんの方を見て、思わず驚きの声がでた。

 猫ちゃんの後ろには、今腕の中にいる白蛇とはくらべものにならないサイズの、巨大な白い蛇がたたずんでいたのだ。


「この森にこんなにも大きな白蛇が生息していたとは」


 その大きさに、シルヴァン様も目を丸くしている。


 巨大白蛇はゆっくりと私に近づいてくる。


「ステラっ!」


 シルヴァン様が焦った声をあげるけれど、それに視線で大丈夫だと伝えて頷くとすぐに理解してくれて立ち止まった。

 この巨大白蛇からは一切殺意も害意も感じない。

 というか、巨大白蛇はむしろ慈愛に満ちた目をしているように見えるような。そして、私の抱いている白蛇を見つめて距離を縮めてきている。


「ひょっとして、あなたはこの子のお母さんなの?」


 そう尋ねると、はじめて私に視線を向ける巨大白蛇。その目がその通りだと言っているように見えた。


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― 新着の感想 ―
白い蛇が珍しくないというのがそもそもステラの勘違いな予感
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