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勘違い令嬢は魔術師になりたい~聖女になった義姉に全て奪われましたが、好都合です!~  作者: 星見うさぎ


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30/49

30_聖女様は大事にしなければならない

 

 ランディ様には今後も魅了の魔力には注意しつつスカーレットと今まで通りに接してもらい、何かあればすぐに王太子殿下に報告してもらうということになった。


 王太子殿下は不名誉な噂が立っている以上、スカーレットとあまり関わりすぎない方がいい。シルヴァン様はそもそもスカーレットに苦手意識があるようだから、関りは薄い。

 だから、こうしてスカーレットに近しい存在であるランディ様がこちらの味方になってくれるのは、すごく心強いことだった。


 それにしても聖女であるスカーレットが魅了の魔力を振りまいていることは頭の痛い問題で、王太子殿下は疲れ気味にため息をつく。


「本当ならば、聖女に問題があるなら神殿預かりとして王宮への出入りを制限できればいいんだが。そういうわけにもいかないしな」


「どうしてですか?」


 そんな選択肢があるならそうすればいいのに。純粋に疑問に思って聞いてみたのだけれど。


「ステラ嬢は、聖女の能力や役割についてどれくらい知っているんだ?」


 聖女の役割……そういえば全然知らないかも?マーファス家ではろくな教育は受けられなかったし、あの日神官様が水晶を持ってやってきて、はじめて聖女様を探していたってことも知ったくらいだ。


 私の身の上話を簡単にしておいたおかげで、王太子殿下も私があまりに何も知らないということに気づいたらしい。


「詳しいことは徐々に教えられたらとは思うが、基本的なことは知っておいた方がいいだろう」


 殿下はそう言うと、私にも分かりやすく、簡単に説明してくれた。


 ──聖女とは、魔王を封印することができる、唯一の存在である。


 何百年に一度、過去の聖女の封印が緩み、魔王が復活する。

 その時期になると、魔物が増え、強くなり、そして魔王の魔力に影響されて強くなった魔物が『呪い』を振りまき始め、それがじわじわと広がり始める。


 呪いを解くことができる者、怪我や病をすべて消し去ることができる者は稀に現れるが、魔王を封印することができるのは聖女以外にはいない。


「最近、呪いが確認されることが増えてきていてな。そのタイミングで大神官たちが集まり、魔王の復活が近づいていることと、聖女が存在していることを予言し、聖女を探すこととなったんだ」


「なるほど……!」


 たしかにマーファス家を出る前、最近は魔物が多いなとは思っていた。

 狩りに困らなくてラッキーだなとしか思っていなかったけど……。

 これからはきちんと色々な情報を知っていくことも大切かもしれない。魔術師団に入れた時に何も知らなかったんじゃ困るもんね。


「呪いについては、ステラ嬢も実際に目にしているはずだ」


「あっ!あの武器庫ですか!?」


 ホコリまみれの武器庫、汚れのこびりついた武器の数々。あれは全部呪いだったということを考えると、確かにすごい量かもしれない。王宮にあったものなんてほんの一部だろうし。


 殿下は「そうだ」と頷く。


「聖女の力はその精神状態にも左右されるとされていて、だから聖女を決して無下にはできないんだ。できるかぎり聖女の要望を聞き、聖女が快適に過ごせるよう努めることになっている。……さすがにあまりに理不尽な要求は代替案などを出してどうにか妥協してもらうことになるが」


「理不尽な要求をガンガンしそうな気がしますけどね」


 おっと、本音が零れたわ。

 だってスカーレットのことだから、これからどんどんエスカレートすると思うんだよね。すでにアンジェリカ様を貶めて、嘘の噂を広めているわけだし。


「その一環で聖女が神殿での生活ではなく、王宮で暮らすことを望んだため、こうして王宮が主体になって聖女のサポートを行うことになったのだ」


 ああ~、たしかにスカーレットは神殿より王宮を選ぶでしょうね。

 派手に着飾ることや贅沢が大好きで、若いイケメンに目がないスカーレットのことだもん。神殿でだってかなりの好待遇を受けられただろうけど、なんたって王族もいるし、頼もしい騎士様たちや魔術師様たちと出会える王宮の方が華やかな暮らしができるって考えたんだろうな。


「まあ、今はまだ能力を少ししか使えないようで、指導と教育、補助を兼ねて常駐している神官とともに訓練にも励んでもらっているところだな。もう少ししたら、実際に簡単な任務に出てもらう予定だ」


「そうなんですか」


 常駐しているという神官様も才能を認められ異例の出世で若くして大神官になった男性らしい。なんでも『年齢が近い方が色々相談しやすいし、親しくなりやすい』とスカーレットが希望したんだとか。うーん、ブレないわね。


「他にも聖女を自国に引き込んで独占したいともくろむ他国との情勢もあるしな。魅了の魔力についても意図的に使っているかどうかが分からない以上、本人に追及することは難しい。……ステラ嬢にはこれからも協力してもらうことが多くなると思うが、どうか頼む」


「もちろんです!」


 私としては運がいいとしか言いようがない。シルヴァン様には有能アピールができるし、殿下に対してもポイントが稼げるので、魔術師団への道がぐっと近くなること間違いなし!


 本当はそろそろ「魔術師団に入りたいです!」って直接アピールしてみたいところだけれど、この運よく手に入れた立場をかさに着て無理やり出世するのはちょっとどうかと思うし、やっぱりダメだった場合に印象が悪くなることは避けたい。


 いずれチャンスは来るはずだと信じて、今はできることをコツコツやって点数稼ぎに邁進するべし!


「まあいくらステラ嬢に浄化してもらえるとは言え、私達もなるべく聖女からの接触に注意していこう」

「はい」


 最後に殿下とシルヴァン様がそう頷きあっていた。


 意図的かどうかは分からないとは言いつつ、殿下達はスカーレットの魅了の魔力は無意識に使っているものではないかと考えているようだった。


 まあそうだよね。もしも意図的だったなら、スカーレットは多少無理やりにでも殿下やシルヴァン様に真っ先に魅了の魔力をかけたはずだもん。躱すことができている時点で、スカーレット自身はこのことに気づいていないような気がする。


 とはいえ、それも含めて今後も注意して観察するということで話はまとまったのだった。


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