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ペシミスト  作者: 坂本梧朗


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17/21

第17話

 トランスコムに移って通勤は楽になったが、時間管理はタイトになった。営業所が近いので藤木が毎日作業現場に来た。エリコに仕事を発注している星雲産業の担当者も一日一回は顔を出した。それで池尻倉庫のような野放図なことはできなくなった。ここではリーダーの「休憩! 」の声かけは作業終了時刻の五分前にならないと発せられなかった。そして作業開始は規定時刻通りだった。


 ある日、終了五分前になっても「休憩! 」の声がかからないので、リーダーが忘れているのだろうと思った省吾は、作業を止め、休憩場所に足を運んだ。するとそこには藤木が居て、リーダーと話をしていた。他の作業者は作業を続けていて止める様子はない。普段はリーダーの合図がなくても、五分前になると自発的に作業を止め、休憩場所に集まってくるのに変だな、と省吾は思った。自分だけが藤木とリーダーが居る側の椅子に座ってインスタントコーヒーを飲むのも気が引けて、省吾は作業場所に引き返した。後で聞くと、藤木が現場に居る間は、リーダーは藤木を憚って五分前になっても声をかけないということだった。大した女だと省吾は思った。


 一度、リーダーがうっかりして、藤木が居るのに「休憩! 」と叫んだことがあった。すかさず、「まだ五分前よ! 」という藤木の鋭い声が飛んだ。それでリーダーの合図は無効となった。

 星雲産業から派遣された若い女性が短期間現場に入って見習い作業をしたことがあったが、朝礼でその女性が紹介された時、藤木は「若い女の子が入ってきたと言って、鼻の下を伸ばさないように」と作業者たちに注意を与えた。


 作業に必要な道具や備品を調えるのも藤木の仕事だった。「何か要るものはない? 」と藤木はある作業者に声をかけた。藤木が声をかける相手はリーダーと、特定の親しい作業者に限られていた。彼女はそんな相手とは冗談混じりの会話を交わすのだった。声をかけられた作業者は作業の手を止め、「ケイコちゃんの生パン」と答えた。ケイコは藤木の名前らしかった。「あ、そう」と応じた藤木は即座にパンツを脱ぎ下ろす仕草をした。


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