「責任を取る。」
果物を全て食べ終わったところで、アリソン殿下が、頭の傷について触れる。
思い切りテーブルにぶつけたせいで、前髪の生え際辺りを切ってしまった私の頭には、今、真っ白なガーゼが当てられている。
「痛い?」
前髪を分け、そっ…とガーゼに触れたアリソン殿下。私は、素直に痛いと答える。
5日も経てば、徐々にだけれど傷口も塞がってきた。けれど、真新しいと言えば真新しい傷なだけに、未だズキズキと痛むのだ。特に水に触れると痛む為、湯浴みの際は、スザンヌが物凄く気を遣ってくれている。
私の傷については、奥様が一番気にしており、ガーゼを見るたびに悲しそうに顔を歪める。きっと私が女だから、傷が残ったらどうしようと気にしているのだろう。
私としては、前髪で隠れる場所だし、あまり気にしていないのだけれど、世間的に女の体に傷があるのはまずいことなのかもしれない。私にとって一番まずいことは、傷を理由に結婚が出来ないことなのだけれど。
ウィンストン家の利を考えるとそれなりの爵位の者と結婚をするのが一番だが、これが原因で結婚が出来なかったら、就職する他ない。
丁度此処に王族が居ることだし、将来について相談してみるのもありかもしれないと卑しくも思った私は、口を開こうとして「ごめん。」すぐに閉じた。
今度は、いったい何の謝罪だ。
「君に意地悪なんて言わなきゃよかったね。こんな傷を負わせることになって…、ほんとごめん。」
「アリソン殿下は関係ないと言った筈です。」
「でもやっぱり、責任は感じるよ。まさかこんなことになるなんて思わなかったし…。」
「王族がそう簡単に謝るべきではないと思いますが。それに、厭味の化身であるアリソン殿下に謝られると怖いです。何か悪いことが起こりそうで。」
「不敬罪で牢屋にぶち込んであげたいところだけど、今回は俺も悪いし、許してあげるよ。」
いつも通りのアリソン殿下に戻ったことに、安堵する私。
敢えて失礼なことを言って、彼が抱く罪悪感が少しでも減ればいいな、なんて思っていた私の心情を察したのか、アリソン殿下は、困ったように笑った。
「ごめんね。…ありがとう。」
「…いえ。」
「もし…。」
「…。」
「もし、君のその傷が残るようなら、俺が責任取るから。」
「それはつまり…。」
ぶつかり合う視線。
私は、じっ…とアリソン殿下から視線を外さない。一方のアリソン殿下も真剣な表情をして、私から視線を外さない。
「アイヴィ。」
アリソン殿下の手が、私の頬へと添えられる。
まだ少し熱が残る私の体には、ひんやりとしたその手が、気持ち良く感じたが、そんなことはさて置いておいて。初めて名前を呼ばれたことにも気づかず『責任を取る』という発言に意識が持っていかれる私。
「アリソン殿下。」
「ん?」




