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Starting Over in邪馬台国 ~卑弥呼システム~  作者: 暇人と黒猫


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第7話 魏志倭人伝

なかなか僕の転生秘話が出てこない。随分と日巫女も言いづらそうだし、「巻き込んだ」と朝には言ってた。


つまりはユカがその力とやらを発動した時に何らかのトラブルが発生したということなんだろうか?


「君が卑弥呼を受け継いだ時に何らかの事故があって僕が巻き込まれたってこと?」


日巫女は項垂れたままの首を横に振る。


確かにそれだけじゃトウリが僕で記憶を取り戻したタイミングを知っているのはおかしい。


「ユカと...そんな感じで卑弥呼の話してたんですけど、私がある日疑問に思って聞いたことがあるんです。卑弥呼って女性でしょ?ユカの前の卑弥呼だった人も女性でユカも生まれ変わるたびに絶対に女性。例えば...例えばその卑弥呼にする力を男性に使ったらどうなるの?って...」おいおい、まさか僕で試したとか言うなよ?「そしたらユカが試したことあるって」


「僕で試したとか言わないよね?」日巫女は顔を上げて手を振って否定した。


「いえいえ!あくまでユカがユカになる前の話です。あの、私達が知ってる卑弥呼と邪馬台国って、つまりユカのこととユカが作った邪馬台国なんです」


「うん。やり直すたびに未来もこの時代も変わってたならそうだろうね」


「彼女何回かやり直してるって言いましたよね?」


「うん。僕らの知る邪馬台国はユカさんの6回目のチャレンジの結果だね」


「ユカが初めて卑弥呼になった時、ユカ、邪馬台国も卑弥呼も知らなかったらしいんです」


「ん?それは、まさか自分が卑弥呼になるとは思わなかったから興味がなかった、みたいな...」


「違います。歴史にも伝説にもなかったんです」


「魏志倭人伝は?」


「三國志は知ってたし、魏志はあっても倭人伝はなかっただろうって」


「だろう?」


「はい。ユカは何もわからないまま卑弥呼になったんです。そして一度目の卑弥呼を終えて2008年に生まれ変わった。その時も邪馬台国なんて言葉は2008年になかった。自分が卑弥呼だったんだから凄く調べたらしいです。でもなかった」


「興味深い話だけど、それが僕と関係してくる話?」


「はい。二度目の卑弥呼を終えて生まれ変わった彼女はおそらく三度目もあると予測しました。だから凄く勉強して色々な知識を身につけて三度目に備えたって。三度目の卑弥呼は邪馬台国をかなり豊かで大きな国にしたそうです。でもやはり2008年には邪馬台国の歴史がなかった。ユカはこの時はまだ邪馬台国は架空の世界で現実とは関係ないって思ってたって。誰かが作ったゲームか何かに巻き込まれているんだろうって。で、正直ウンザリしてたって。ユカはその時の人生で結婚してて旦那さんがいたそうで、ある日旦那さんに卑弥呼と邪馬台国の話をしたそうなんです。そしたら旦那さんが『俺が代わりにいけないか?転生して国作りなんて面白そう』って」


「で、旦那さんで試してみた?」


「うん。旦那さんが43の時にガンが見つかって、その時の日本は戦時中だったのもあって...」


「戦時中?!」


「あ、はい。らしいです。2036年から戦争してたって」

僕が死んだ11年後?有りそうでもあるしないだろって気もするが...ユカの4度目の日本はなかなかハードモードだったみたいだな。


「ああ、ごめん。続けて」


「はい。とにかく旦那さん助からなかったんですけど、亡くなる前に当時のユカに『日巫女とかいう女王にして欲しい』って言って、ユカは旦那さんに力を使ったそうです。ユカはその時力を失った。だからもう自分は卑弥呼になることはないって思ったって。そしてその2年後、2038年にユカは戦争で死にました。そしてなぜか4度目の卑弥呼になったそうです」


「つまり、男には力が使えなかった?」


日巫女は首を横に振る。


「使えてたんです。現に力を失ったから。ただ旦那さんは卑弥呼にはならなかった。そして4度目の卑弥呼になってすぐに頭の中にその時代の旦那さんの情報が入ってきたそうです。具体的に名前と場所。ただまだ生まれたばかりの身ですぐには何もできなかったらしいですが...」


ん?


「日巫女って生まれながら記憶を持っているの?」


「あ、はい。凄く嫌ですよ。体は自由きかないし、お漏らししちゃうしかないし」


確かに大人の頭脳で赤ん坊はちょっと嫌だな...。


「大変だね、それも」10歳で良かった。「じゃあやっぱり特別頭の良い子だから日巫女様に祭り上げられるって仕組み」


「いえ、生まれる時に手に勾玉を握って生まれてくるんです。たぶんユカもそうだったと思います。ちなみにコレです」日巫女は首にぶら下げていた首飾りを指す。確かに真っ赤な勾玉だ。考えてみればこんな真っ赤に勾玉を染められるとは思えない。


「それが日巫女の証」プレイヤーの証。


「です。続けますね。4度目の卑弥呼はある程度成長するとすぐに頭の中にある旦那さんの情報を頼りに探そうとしました。でもすぐには無理でした。彼女の頭の中にある彼の居場所は中国大陸。彼女は長い年月をかけて国を豊かにし、そして中国、魏ですね。そこに使者を送ります。その時の使者にまた別の使命、旦那さんの下にも行くようにと託して」


「魏志倭人伝」


「はい。魏から帰ってきた使者は卑弥呼に告げます。旦那さんは漢でそれなりの官職にあり、ご活躍をされたと」魏の有名武将にでもなってたのなら胸熱だが...ん?漢?「そしてとうの昔にすでに亡くなられている」


「亡くなってたのか...」魏に使者を送ったのが僕らの知る歴史とさほど変わらない時期なら卑弥呼もだいぶ高齢だ。


「その後、今度は魏から使者が来ました。その使者の中に彼の曾孫を名乗る者がいて卑弥呼に謁見をします」


「曾孫?子どもを連れてきてたのか?」多分卑弥呼も60代くらいだ。旦那さんの生まれ変わりが同世代だと曾孫なんて流石にまだ幼いだろう。


「いえ、30から40代だと」


「それって」


「はい。5~60年前の時代に生まれ変わっていたみたいです」だから魏ではなく漢。


「その使者の一人が旦那さんの曾孫ってのは確かだったの?」


「はい。本人達は不思議に思っていたみたいなんですが、その家には代々伝えられてきたものがあったと。曾祖父がもし海の向こうの倭の国に女王がいるという話を聞いたらどうにか届けて欲しいと...なんて言うんですかね、竹に字を書いてクルクル丸めているやつ」


「竹簡?」


「それです。それを持ってきてて、それにはこの時代じゃ有り得ない未来の日本語で手紙が書いてあったって。そこには10歳くらいの時に急に全てを思い出したこと。自分は弥生時代の日本の女王ではなくなぜか中国に生まれたこと、もしかしたらやはり前世の妻が日本で女王をやっているのかもと思い日本に渡ろうと考えたが上手く行かなかったこと、そんなことが書かれてたって。で、卑弥呼は考えたの。転生はできた。でも卑弥呼ではない。ズレがあるけど一応は同時代」


「死んだ時期と場所が違ったから?」


「ユカ卑弥呼もそう考えました。だから...」


「5度目の転生で実験をした」


「はい。それともうひとつ」


「魏志倭人伝。さっきもチョロっと言ったけど」


「です。新しく生まれ変わった2008年の歴史に『邪馬台国』と『卑弥呼』が登場していました。『魏志倭人伝』の資料と共に。私達が知ってるのとはちょっと違ってるみたいですけど」


僕の話はまだ登場しないけど。


まあでもちょっとわかってきた気がする。ただ不可解なのは「僕を転生させたのがユカであったなら、そこでユカは力をなくして今目の前の日巫女はユカのはず」だ。

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