第43話 凱旋と第6師団長
「閣下。侵攻を進言します」
本陣の砦でカズマサ大佐と合流し、すぐにお互いの戦果と現状を報告し合った。
圧勝だ。いや、圧勝どころか完勝。
第二師団も戦死ゼロだ。
最早戦ですらない。一方的な殺戮。
戦国時代の戦も意外と死者が少なかったみたいな話は聞いたことがある。
いや、もちろんかなりの戦死者を出した戦もあるのだろうが。
一番の死因になるのが弓、鉄砲の飛び道具とか言っていたか書いていたか。
まずクマソ軍側から矢の一本すらも飛んでこなかった。多勢に無勢で舐めくさっていたのだろう。多数の兵を弓兵として全面に出して、圧倒的数の矢で撃ち合うつもりだったようだ。もうその時点で詰みだな。
まずは一斉射撃の強弩の矢。板も鎧もあの距離なら紙だ。あの近距離なら一矢で2、3人は貫通する。前線の弓兵は壊滅だ。そこに第二射まできた。
バリスタ。これがまた凄い。有効射程距離600~800m。巨大な鉄の矢がミサイルのように飛んでくる。密集した大軍に放ったのだ。一矢で2、30人は倒す。
投石機。比較的小さな岩を飛ばしたので射程距離は600m。クマソ軍の最後尾まで届いた。わずか2発が2回だが、空から岩が飛んでくるのだ。かなり怖い。
そして長弓。距離だけ狙えば800mは飛ぶ。それを空高く打ち上げた。高高度から降り注ぐ矢の雨。
この二度の一斉射撃でクマソ軍は大混乱。これだけで1000~1500が戦死したと推測された。
そこに連弩を構えた兵が来る。
同時に後方では奇襲の大混乱。立て直しを図ることもできずに連弩隊が前衛の残兵を駆逐、徴集兵は最早逃げ腰で戦意がない。
そこに抜刀した兵が押し寄せて来る。もう頭に迎撃なんて考えは浮かばない。
結果としてヤマタイ国軍は戦死ゼロ。
20数名の負傷者はあったが、皆軽傷だ。
対してこちらの算出ではクマソ軍の被害は推定戦死者4800~5200。生き残りもほぼ負傷兵。あるいは退却中に命を落とす者も少なくはないだろう。7000の軍は壊滅。全滅と言っても過言ではない。
たったの一戦でクマソ国は国力に大ダメージを負った。徴兵すればまだ絞り出せるだろうが、この上さらに国中の男手を集めれば田畑は荒れ、子も産まれず国は衰退していく。
カズマサ大佐は第二師団1500と、ミヤザキ方面軍の第六師団1500でのクマソ国内への侵攻を提案する。許可だ。
「閣下の騎兵伝令を第六師団へ飛ばせばどれだけの日数でたどり着けますか?」
「山岳地帯越えになるな。最速でも丸二日。三日と考えた方が良いな」
「こちらも侵攻の準備をします。では第六師団には12月28日の朝よりの侵攻作戦開始をお伝えいただきたい」
「正月は敵の領内侵攻中だな」
「武人の誉れです」カズマサ大佐は笑った。
君はその言葉が好きだな。
僕ら騎兵隊は侵攻作戦には参加しない。ミヤザキの第六師団に命令を出したらヤマト郡に帰国する。今度はトキ国に備えなければならない。忙しいな。ホント戦時下だ。
翌朝にアヤセを御殿場へ報告に走らせ、そのまま御殿場にて我々の帰りを待つように指示。カナに先行してミヤザキ郡庁舎へ走るよう指示を出し、僕とナナコ、他騎兵隊全員で阿蘇山の南側から高千穂に抜けるルートでミヤザキ郡へ向かった。伝令だけ飛ばして帰国でも良かったが、第六師団にも激励くらいはした方が良いだろう。
「年末年始休まず侵攻。じゃあ頼むわ」だけ伝令に伝えさせて帰るのもさすがにね。
トウリ君は良い上司でありたい。
それにミヤザキ郡は我が騎兵隊達の故郷でもある。墓があるかは知らないが、滅ぼされたかつての故郷辺りだ。クマソ軍を叩き潰し、雪辱を果たした彼らに凱旋させてやりたかった。もう出迎えてくれる者はない故郷だとしてもだ。
しかし予想を反して華やかな凱旋となった。
先行したカナによってもたらされた一報を受け、第六師団長はすぐにクマモトでの完全試合達成と地元ミヤザキ、旧ヒムカの孤児達で結成された騎兵隊の活躍を大々的に領内に喧伝したのだ。
なるほどこれで士気は最高潮という訳だ。特に旧ヒムカは長い間クマソにやられっぱなしだった地。そのクマソを完膚なきまでに叩きのめし、しかもそこにはクマソ被害の代名詞たるヒムカの孤児達の活躍があるなんて地元は湧くに湧き立つ。
第六師団長「ナサのショウタ」中佐と言ったか。話したことはないがやり手みたいだな。ナサ。同郷じゃないか。いいね。
ウチの師団長達はなかなか優秀な人材が揃っているようで心強い。
郡庁舎のある中市に入ると大観衆が待ち受けていた。さすがにこの時代に万歳三唱拍手喝采はないが、叫ぶもの泣くもののもう大騒ぎだ。さすがに恥ずかしい。
しかし比べてケンシン達は堂々としたものである。もうこの子達、全員中身は戦国武将だろ、絶対。
大観衆に狼狽えることなく騎乗で真っ直ぐに前を見つめたまま威風堂々と闊歩する。その姿はまさに軍神とその郎党。
相国様の影薄いな。一応国家のナンバー2なんだが。
庁舎に着くとこれまた職員一同が歓声で出迎えた。どうもショウタ中佐はこういうのが好き、いや得意な将みたいだな。こういうことをする効果を知っているのだ。
これを見た第六師団兵はそりゃ「俺達もやってやるぞ!」ってなる。
カズマサ大佐は人懐っこく部下の信望の厚いが実はキレ者。家康の風格だったが、ショウタ中佐は人心をよく知っていてそこを派手に利用する。秀吉の風格か?
家康秀吉の連合軍が攻めてくる。例えクマソが鬼島津であったとしても堪らないわな。
ちなみに第一師団長のミナのシンゲンには何度も会ったことがあるが、彼は名のとおり信玄だ。貫禄があり、部下達が畏れ敬う団長である。今度ケンシンと合わせてみよう。
こうなると他の師団長も気になるな。
第一師団と第二師団は元々近衛兵団だったから面識はあったが、他師団の団長達は新設された軍だからロクに面識がない。
任命式で遠目で見ていたくらいだ。
信長みたいなのはいたら嫌だな。イメージだけど、アレは人の下で大人しくしてそうにない。日巫女をお飾りにしていつの間にか政権作ってそうだ。僕とマナでこそこそお手紙書いてシンゲン達にアイツやっちゃって下さいって言うことになりそうだな。




